私って、まともに生きていけない……?
「緊急会議を始めます。議題は炬燵が買えないということについて。私からの案は佳が生徒会長に掛け合って部費を増やしてもらうということです」
陽がなんだ。こんなの全力で耐えて全てが終わってから倒れればいい。
大至急この部費の少なさをどうにかしないとならない。
「急に動き出したと思えば、鳴月、冷静に」
「うちがかいちょーに言っても無理だよー」
「こればっかりは仕方がないよぉ」
「炬燵ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ‼」
もうだめだ……おしまいだぁ……。
「堅実に考えて、部費を貯金して買えばいいと思う。まだ夏だし、冬までには貯まると思うから」
先輩が私の背中をさすってくれる。それしかないよね。
今七月だし、十月まで我慢すれば八千円。絶対に炬燵が欲しい十一月で一万円。それだけあるなら多分買える。
でも、先生の私を見る表情がなんかもう上手くいかないことを物語っている。
「先生、聞きたくないですけど聞きますね」
「ごめんねぇ、貯金はできないのぉ。人気の部活動ならまだしもぉ、小さな部活はその月に使い切らないと駄目なんだぁ」
「そうなんですか? 鳴月、無理みたい」
先輩が追撃を仕掛けてくる。私の心がこんなに削られるなんて……。超絶美人だけじゃ解決できない問題が、ここにもあるなんて……。
力が一気に抜ける。もう頑張るのは無理かもしれない。
緊急会議の開始と同じ速さで終わった。そして私の意識は深い哀しみの中、心の中の炬燵へ潜ることとなった。
△
目が覚めたのは、今日は遅めの十八時。最終下校時刻だった。
「なっちゃん大丈夫ぅ?」
「大丈夫です。心以外は」
「ごめんねぇ」
先生と少し話して和室で待っていてくれた佳と先輩の下に戻る。
二人はめんこをしたり、すごろくをしたりして時間を潰していたらしい。時間を潰していたというか、ちゃんと部活動をしているんだけど。
「お待たせしました」
「おはよう」
「なっちゃんいつもだいじょーぶ?」
「うん。今日はちょっと長めだったけど、大丈夫だよ」
もう帰らないといけない時間だし、帰りながら話をしよう。
保健室から出た私達はバタバタと慌ただしい廊下を呑気に歩いている。
この時間は丁度部活動終わりの生徒が多い。つまり私と先輩がいると目立ちすぎてしまう。
しばらく保健室で待った方がいいのかといえばそうではなくて、それをしてしまうと今度は運動部と鉢合わせる。人数多いしうるさいし、それなら多少目立ってでも文化部の帰る時間の方が良い。
陽に焼かれながらも、私は努めて平静に歩く。
「先輩と話したんだけどねー。夏休みにバイトすればいいんじゃないかなーって」
「一日だけでもアルバイトすれば、炬燵を買うのは簡単。問題は私達が働くのならそれなりに場所を選ばないと駄目っていうこと」
「確かに、それが早いですよね」
一番の問題は私が働けるかどうか。あれ? この体質じゃあ、まともに就職はできない……?
「なっちゃん?」
「私って、まともに生きていけない……?」
「先輩、なっちゃんまだだいじょーぶじゃないみたいです!」
「大丈夫、鳴月はまだ混乱しているだけ」
「それってだいじょーぶじゃないんじゃ……」
好き勝手言われているけど、先輩はただ誤魔化してくれているだけ。
話を戻さないと。
「大丈夫、超絶美人故の悩みだから。働くとしたら、なにかいいとこありますかね?」
「うちは友達に誘われてるけど」
「そうなの?」
「はい。ホテルで客室せいそー的なことをやるみたいです」
流石佳と言うべきか。でもそれで働いたお金で買ってもらうのは違う気がする。というか炬燵が欲しいのは私なんだから、私が働かないと駄目じゃん。
「いやでも、そのお金は佳が使わないと。炬燵は私が欲しいんだし」
私の言葉に佳も先輩も一応納得してくれたみたいだけど、なにか他にも言いたげだった。
「でも鳴月を一人で働かせることはできない」
「そーなんだよ。なっちゃん身体弱いし」
一気に将来に対する不安が出てきた。佳だけだと佳の陽にやられるから無理だし、かといって佳を抜いて先輩だけって訳にもいかない。でも佳は友達と働いているから、私と先輩の二人でも大丈夫のはずなんだけど。
「うちも友達に誘われてるけど断ろっかなって思ってるし」
「なんで」
別に気にしなくてもいいのに。
「だって男の人とかも一緒みたいだし」
「じゃあ断ろう」
「ん。断ろう」
「食い気味で⁉ まー断るつもりだけど……」
うん。心配だし断った方が良い。心配だし。
その可能性があるのをすっかり忘れていた。私も働くにあたって、男がいないというのは大切な条件だ。
そうなれば、働ける場所はかなり限られるんじゃないだろうか。誰かの家がお店をしていて、そのお手伝いを——とかだったら安心なんだけど、都合よくいるかどうか。
そのことを佳と先輩に伝えて、三人で考える。でも——。
「「佳」」
私と先輩の交友関係を足しても、佳の交友関係には遠く及ばない。だって私の交友関係なんて無いに等しいから。
「うーん……あっ、かいちょーは?」
佳の提案に私は先輩と顔を見合わせる。




