私はこの美しさを使って、全力で佳を照れさせる。
目覚めた私が和室へ戻ると、そこにはなんでそうなったのか分かっちゃうんだよなぁぁぁぁぁぁ‼
満足そうな先輩に、ペタンとへたり込んでいる、どこか乱れた様子の佳。乱れたといっても、衣服の乱れは無くて少し荒い呼吸とか、上気した顔、櫛を通したくなる髪の毛。
とりあえずお約束として——。
「私もう一回寝てこようか?」
「えぇ……」
「今度は鳴月の番?」
「えー! そんなのうち死んじゃう」
「さっきもう一回寝てきてほしいって顔してたよね?」
そりゃあ私と同じ超絶美人の先輩だったらそう思うか。照れっ照れの佳からは陽はあまり感じない。なるほど、常に照れさせられれば、私は無事なのか。この気づきは忘れてもいいな。
「ちょっと佳黙らないで」
それはさておき、どう佳をからかってやろうかと一歩踏み出すと、佳もずりずりと一歩下がる。
「そっち壁、出入り口は私の後ろ。つまり私を躱さないと出られない」
「うぅ~……」
逃げ道を失った佳の前にしゃがみ込んで目線を合わす。そして逸らされている佳の顔を掴む。こう両手でガッチリと。
「これが超絶美人の顔‼」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」
あまりの美しさに佳の視界はもう凄く眩しいはず。私が佳の陽にやられているみたいに、佳も私の美しさでやられる。これを繰り返していけば、別に私の体質のことを佳に話しても佳は傷つかないのではないだろうか。
それだ‼ これは天才的な発想。まあ私は天才だから当然の発想なんだけど。そうと決まれば、私はこの美しさを使って、全力で佳を照れさせる。
「佳見てよ。ほら、こんな超絶美人が目の前に、すぐそこにいるんだよ」
「ぅう~眩しいー。自信が無くなるー」
顔を手で覆う佳に、更に私は顔を近づける。見えなくても、私の顔がすぐそこにあるということが分かる距離。
「佳も可愛いよ? だからさ、ほら見て」
「ん。佳は可愛い」
先輩も佳の耳元に顔を寄せて囁いている。
こんな超絶美人二人に囲まれるなんて、なんて幸せなのだろうか。
やがて佳はキャパオーバーらしく、目を回して倒れた。「きゅう」という可愛い言葉を残して。
「先輩、私いいこと思いついたんです」
「おあいこ作戦?」
「そうです」
佳を運びながら、私は思いついた作戦を先輩に話す。ちなみに先生はちょっと佳を羨ましそうに見ていた。
私の作戦を聞いた先輩は頷いて、人差し指を立てた。
「でも一つ、難しい点がある」
「先輩がいないとできないってことですね」
「ん。私が佳を弱らせないと、鳴月は佳に近づくことができない。でもそれを把握しているのなら大丈夫」
満足そうに頷いて、私と先輩は自然と握手を交わす。
佳が超絶美人に慣れてしまったらアレだけど、慣れないことを祈るしかない。
この作戦をいつまで続ければいいのか分からないけど、まあ気長にやっていくしかない。私の陽に弱い体質のことを佳に話せる可能性が出てきたことで、私の心が少し軽くなった。考えなくちゃならないことは他にもあるけどね。
「失礼しまーす」
ここで保健室に人がやって来た。あれは……二年生だ。私を見に来た二年生の中にいたから憶えてる。
「どぉしたのぉ?」
「ちょっと気分が——」
ちらっと私を見る二年生。なんか違和感、でもすぐに超絶美人を見る目に変わる。
「良くなりました」
「あ、そぉ? ならいいんだけどぉ」
「失礼しました~」
その二年生は軽い足取りで保健室を出て行った。
「超絶美人って万病に効くんじゃ?」
「鳴月を観察するような目が一瞬にして変わったね」
「もしかしなくても、情報収集しようとしてます?」
「しているね、あの子らしい」
「マジかぁ」
「うぅん、それは保健室的には困るねぇ」
「ですね」「ん」
ということで、私と先輩は和室に引っ込む。
ここは下手な会話さえしなければ視線も遮られて安全。入部したいと来られたら困るけど、それを考えてしまうと今すぐ部活を解体しなければならない。こたつがまだ手に入っていないのに、そんなことはできない‼
「先輩。佳が起きるまで、めんこ勝負でもしましょうか」
「ん。負けた方がジュース一本おごりね」
「それは負けられませんね」
人知れず、超絶美人同士の真剣勝負が始まるのだった。勝てるかな……。




