めんこ大会 3
「「「スリー! ツー! ワン! ゴーめん‼」」」
どのように攻めるか決まった。最後の掛け声と共に、私は横投げで、抉るようにめんこを投げた。狙いは先輩のめんこ。上手く、先輩のめんこをひっくり返す。ひっくり返すというか弾き飛ばすだけど、まずは一枚。でもこれで終わりじゃない、狙うは二枚目、勢いを削がれていても、私のめんこは先輩のもう一枚に向かう。
ズルいかもしれないけど、私が狙うのはフィールドからはじき出すこと。それならほぼ確実に二枚を出すことができる。私の狙い通り、先輩の二枚目のめんこを外に出すことができた。これであとは——。
「そうくると思ってたよ」
自分のめんこの動きを追うことに夢中で忘れていた。先輩のめんこは私のめんこを一つひっくり返して、そして私と同じように二枚目を狙って、私のもう一枚のめんこに激突。でもそれはフィールドから出すことを狙っていなくて、目的は動かすこと——だと思う、だって私のめんこを動いていたし。
その動かした先が問題。佳は当然一番残っている枚数が多い先輩のめんこを狙った。その狙った先に、先輩は私のめんこを動かした。
なんっちゅう芸当‼
「マジか……」
これで残っているめんこは、先輩が三枚、私と佳が二枚。
先輩の勝利で終わった。
「うー……最後までひっくり返せなかったー」
「いやあ、佳が返せてたら私最下位になるからよかったよ」
「なんか最後いみふめーだったよー……」
結局佳はこの勝負中、一枚もひっくり返すことができていない。
「やった、私の勝ち。これが先輩の力」
ふふんと笑う先輩が凄く楽しそうで、私も嬉しくなる。私は嬉しいけど佳はかなり悔しそう。これは私が倒れている間に佳が先輩に特訓してもらうことになる流れ。なんかこの前も似たようなことがあったな。
私としてはその方がありがたいから、ここはその流れの手助けをしよう。
「よし佳、ここは先輩に特訓してもらおう」
「うん! リベンジする‼」
「ん、いいよ。じゃあ鳴月は」
「休みます」
「えーなっちゃんだいじょーぶ⁉」
「大丈夫大丈夫、ちょっとはしゃぎすぎただけだから」
軽い調子で佳に返して、私は和室から出る。出たらもう気が抜けて、脚に力ははいらないわ頭は働かないわ視界はぐにゃるわでもう……
「なっちゃん、ベッドに運ぶねぇ」
先生の声が聞えて、私は意識とりあえず意識を手放した。
△
鳴月が休んでいる間、これももう何度目かになる。鳴月はこうしてみんなで集まり、正月遊戯を行うと必ずこうして休む時間が生まれる。
その間に佳は陽伽に教えを乞い、正月遊戯の腕を上げるのがいつもの流れだ。今回もめんこの腕を上げるため陽伽に教えを乞う。
「先輩、教えてください!」
両手をパンっと合わせた佳に、陽伽は快諾。鳴月が回復するのを待つためというのもあるが、こうして後輩に頼られるのがかなり嬉しいし、佳も腕を上げた方が正月遊戯がもっと楽しくなる。
「当然。じゃあめんこのひっくり返し方を教えるね。まずは見てて」
そう言って、陽伽はちゃぶ台の上にめんこを一枚置く。そしてめんこを一枚持ち投げる。
陽伽は普通に投げたつもりだが、佳の目には——。
「さんこーにならない……」
なにがどうなっているのか分からなかった。
ちなみに投げためんこは置いてあるめんこをひっくり返している。
なにがどうなっているのか分からないのだが、別に目にも止まらぬ速さで投げたという訳ではない。佳から見てもただ普通にめんこを投げているだけ。しかし、その雰囲気というか、投げた時の空気の流れが違った。
「そう?」
「なんか先輩とかなっちゃんは、当たったら絶対にひっくり返るじゃないですか? うちの場合絶対ひっくり返らないんですよねー」
「なるほど。じゃあ見て覚えるのは難しいね」
そうして、陽伽は佳の背後に回る。
「緊張すると思うけど我慢してね」
「へっ?」
「腕の角度はこう」
陽伽は背後から佳の腕を取り、めんこを投げる用意をする。陽伽に動かされることになった佳の完成である。そして陽伽が言った通り、超絶美人に密着されているということで佳の耳が赤く染まる。穏やかに揺れる波の音のように、綺麗で落ち着いた声音が佳のすぐそばから聞こえるため更に緊張してしまう。
「ちょ——先輩⁉」
「ふふっ、緊張するね」
「きんちょーするし良い匂いがする……」
「可愛い」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼」
緊張している佳を見て楽しくなってきた陽伽であった。




