掘り返された記憶
放課後、和室に揃った私達は、早速めんこの準備をしていた。
「可愛い絵。佳が描いたの?」
「そーです……。今見ると恥ずかしーなぁ……」
めんこといっても牛乳キャップ。そして牛乳キャップだから裏? でいいのかな? が真っ白だからそこに絵が描いている。佳はそこに可愛らしい女の子の絵とか花の絵、猫とか犬とか描いていた。
「当時の佳がこういうの描いてるのを想像したらなんか微笑ましいね」
「ん。微笑ましい」
「あーもー! 恥ずかしー‼」
目を閉じて耳を塞いだ佳。顔が赤くなってきている。
「あっ、これは強そう」
先輩は禍々しい絵の描かれためんこを持っていた。なんだこれ?
「あー⁉ あーあーあーあーあーあー‼」
なにか思い出した様子の佳は、なにも聞くまいとばかりに叫びだす。
「佳ちゃん静かにねぇ」
不知火先生が注意しにやって来るけど、目を閉じて耳を塞いでいる佳には聞こえないと態度で示す。聞こえてるじゃん……。
「うちなにも知らなーい!」
「えぇ……」
困った先生に助けを求められるけど、私達だって助けてほしい。
とりあえず三人で悶える佳を観察しながら、この禍々しいめんこの正体を考察する。
「これって、佳が描いたやつですかね?」
「違うと思う。ほら、線が違う」
「なるほど」
先輩の言う通り、さっきまでのとは違う。なんというか、佳の描いたのは女の子っていうか、丸みのある絵なのに対して、禍々しい方は角張っている? トゲトゲしてる? 感じだ。こりゃ男か。
「男の子が描いた絵じゃないかなぁ?」
そう言ったのは先生。やっぱり先生もその結論か。
「やっぱりそうですね」
「ん。私もそう思った」
佳の様子を窺うと、薄目でこっちを見ていた。私と目が合って、慌てて目を閉じた。ただ、耳の塞ぎ方が手で押さえてるだけだから、多分会話は聞こえているはず。さっきも聞こえていたし。
「佳が当時好きだった人から貰ったとかですかね?」
「佳が貰った側だから、佳のことが好きな人からだったのかも」
「でもぉ、その年の子ってぇ、好きな子に意地悪するものじゃないかなぁ?」
「確かに」「ん。先生の言う通り」
「となれば……どうなの?」
「個性的な絵を描く女の子の友達とか」
「「あー」」
確かに女の子の線もあるのか……。
「——ということは、考えられるのは二つ。」
ということで私は指を二本立てて整理する。
「一つ目は、佳が好きな男から貰った。二つ目は、個性的な絵を描く女の子の友達から貰った」
とりあえず思いついたのはこの二つだ。私達は佳にどうだと目線を向ける。すると慌てて目を閉じた佳は首を左右に振っていた。どうやら違うらしい。聞こえているんだったら手を離せばいいのに……疲れない? 腕。
「違うみたいです」
「じゃあ佳のこと好きだった人から?」
佳を見ると、反応は無し。
「正解なのかもぉ」
「ほう、これはこれは」
「珍しいね」
「やめてぇ~」
いよいよ観念した佳が、頭を抱えて机に突っ伏す。
「あーもー‼ 色々とはずかしー‼」
そして叫んでいた。
「別に恥ずかしいことじゃないのにぃ」
「いやだってなっちゃんと先輩がいるんだよ‼ うーわーはずかしー! 海幻ちゃんもそーぞーしてみてよ」
「えぇ……どんな……?」
佳は私と先輩の顔を指さした。それで伝わるの私達だけでしょ。
そろそろ私も横になりたくなってきたんだけど、休む隙があるのかどうか。先輩に目で助けを求めると、頷いた先輩は立ちあがる。
「私達寝ているから、佳は色々と先生に受け止めてもらって。鳴月、行こう。私はこう見えて寝不足、今にも倒れそう」
「あっ、はい」
ということで、私と先輩はその場から退散することにした。




