陽と無縁の学校生活
陽にやられていなくても、身体は保健室を求めるものだとちょっと思い始めた。やはり私の憩いの場となってしまった保健室、その和室内。
昼食を摂るためと噂がどうなっているのか、それを確認するために私と佳と先輩は揃っていた。
「話してくれてありがとう、私のブロッコリーあげる」
「え〜、うちそのアスパラベーコンがよかったな」
くっ、強欲なヤツめ……!
「そんな嫌そうな顔しなくても」
「佳、私のグラタンの上にあるエビあげる」
「じゃーこのミートボールと交換で」
仲睦まじく、お弁当を食べる。おお……なんて平和なんだ。
朝に比べて佳の陽が強くなってきている気がするけど、これが陽と無縁の学校生活……!
ちょっと泣きそうになりながら、誤魔化すように私はお弁当をかき込む。
「なっちゃん、喉詰めるよー」
「大丈夫……超絶美人だから……!」
「すっごい便利な言葉ー」
呆れた目を向けてくる佳にウインクを返してあげる。
「ん。佳が照れてる」
「うっ……だってなっちゃんが見つめてきますし……」
その言葉を聞いて、先輩が私に疑問符を浮かべながら目を向けた。
今日の佳は陽が殆ど無くて見れるんですよ。という気持ちを込めて頷いてみる。伝わったか分からないけど、先輩は頷き返してくれた。
さて、遊びもそこそこに、佳に話を聞こうじゃないか。
「それで、どんな感じだった? やっぱりみんな納得してた?」
私の質問に、佳は特に悩む素振りを見せずに答えた。
「うん。そりゃあ美人だよねーって。でも——」
そこで一瞬言い淀んで、でも言葉を続けてくれた。
「怖がってる子もいたかなー……」
「あ〜、そりゃまあ……そうか。吸血鬼だもんね」
「うん……ごめんね」
「別に佳が謝ることないじゃん。むしろありがとう、話してくれて」
これで一番嫌なのは、私を怖がった人が、私と友達の佳も嫌がるというものだ。
こういうことを言って佳を不安にさせるだけだろうから言えないけど。
「ん。あとはその話が浸透するのを待つだけ。多分今頃みんなその話をしてると思う」
「三年生もそんな感じですか?」
「聞こえた話だと、そんな感じ。でも、私だから嫌だと思う人も多いと思う。超絶美人の悩み」
先輩の言葉になにか反応を返そうかと思ったけど、最後の言葉を聞いて言葉を飲み込んだ。
先輩がそういう言い方をするのなら、今ここでなにか言うべきでも無い。後で先輩と話でもしてみよう。
「心が強すぎるよ〜」
佳の想像通りだったらいいけど、経験者としては圧倒的なスペックの差があるから耐えるというか、流せたというか。でも先輩はどんな気持ちなのかは分からない。
「まあ、そんな感じだね。よしよし、明日にはどうなってるかなー」
その場に倒れて、天井を眺める。和室なのに蛍光灯。別におかしくないけど輪っかじゃなくて棒状の蛍光灯だ。うん、少し違和感。
「うーん……なんか変な感じー」
「実感湧かない?」
「そうなんですよね。噂が出てー、先輩もなっちゃんもそうだって言って。でも本当なのかなって」
私は寝転びながら佳の疑問に答える。
「そりゃ吸血鬼だって証拠無いしね、髪は白いけどあんまり吸血鬼と結びづかない感じでしょ?」
血を吸わないと駄目、日光に弱い、ニンニクが駄目、みたいな特徴があればそうなんだって素直に信じられるって言いたいんだと思う。
この流れで陽に弱いっていうのを言ったらいいんじゃないかって思ったけど……どうなんだろうか。陽が殆ど無い今の佳に言ってしまうと凄く傷つけてしまうのではないのか。でもいつも通り陽が凄い佳に伝えたとしたら、持ち上げて叩き落とすみたいなことになったらどうだろうか。
だなんて、かなり弱気に、ネガティブに、答えを出せないことに悩んでしまう。
「こればかりは信じてもらうしかないんだよね」
「別に信じてないってことじゃないんだけど……なんか夢みたいな? そんな感じするってだけー」
「ん。夢かもしれない」
先輩も先輩で、自分が人魚の血を引いている確たる証拠は見せない。そりゃあいくら佳でも見せる必要は無いだろうし。
佳は自分のほっぺたをつねっていた。そして唇を噛んだ。
「夢じゃなーい」




