束の間の平和
週が明けて、いつも通り保健室で休んでいる私。
全く……いつになっても慣れやしねえ。
なんて、ふざけているけど気が気ではなかった。こんな寝込みをあのなんだっけ……名前を呼んではいけない先輩に襲われたらひとたまりもない。
「せんせーい」
「どぉしたのぉ?」
先生がいてくれるからトラブルは起きないと思うけど、なにをしでかすか分からない。あと、先輩も大丈夫か心配。
「呼んだだけです」
「なっちゃん大丈夫ぅ?」
生徒のちょっとした変化にも気がつく先生。流石だ……。
でも申し訳ないことに本当になにもない。様子を見に来てくれた先生にイェイとピースサインを返して戻ってもらう。
考えすぎると来るらしいから考えないようにするけど、この血のことを話したのはまずかったかな、なんて思う。でも、あそこで血の話を出し渋ったら、この血のことを隠している思われて脅しに使われそうだった。隠しているのが事実だから本当に言いたくないんだけど。
でも……そういえば、私の吸血鬼の血のことって教師は知ってるんだっけ?
「せんせーい」
「はぁい」
先生も、ふわふわしているけど一応教師だし知っているんだよね。
「今度はどぉしたのぉ?」
「先生って、私の血のこと知ってるじゃないですか」
「うん」
「初めて知った時どんな気持ちでした?」
「えぇ……難しいなぁ……」
私の質問に、先生は腕を組んで考え込む。
「う~ん」
ちなみに他の先生方の反応も知っておきたい。
「驚きと同時にぃ、納得しちゃったかなぁ……」
「あまりにも美人すぎて?」
「そうなんだよねぇ」
やぱりそうか。
「やっぱり、美人って得ですよね」
「同じ人間だったら心が折れそうっていうのもあるかもぉ」
「現実逃避ですか……」
まあこの白い髪の毛は吸血鬼由来だけど。
そっと目を逸らす先生に、私がなにを言っても逆効果だろう。先生結構可愛いけど。
「他の先生はどうだったんですかね?」
「永海さんとかいたからぁ、今年もかぁ……みたいな感じだったよぉ」
そりゃそうかと、その感じだと別に言いふらすなんてしなそうな感じだ。
「なるほど……先生達は慣れてそうですね。じゃあ、生徒はどうなんですかね」
それに対して生徒はどうなんだろうか。先輩も多分周りには言ってないだろうし、私も言っていない。
「どうなんだろぉ。なっちゃんはどぉ思ってるのぉ?」
「意外にも大丈夫な気がしてきましたね」
先生も言った通り、私が特殊な血を引いているから超絶美人って思われるだけな気がしてきた。
「私の顔の良さに誰もが納得いくだけで、特になんともなさそうです。写真にも写らないですし。あっでも目立って陽にやられますね」
「えっ、なっちゃんって写真に写らないのぉ⁉」
「あれ、言ってませんでした?」
説明してなかったっけ? 話したとしてももう二ヶ月も前だし、血の話だけだっけか。まあ別にすぐ証明できることだし。
とりあえずスマホのカメラを開いて先生を呼ぶ。
インカメラにして、先生とのツーショットをパシャリ。
撮る前、画面には私と先生が並んでいる。でも撮れた写真を見ると――。
「なっちゃんが写ってない……⁉」
「そうなんですよ」
「でも生徒手帳とか……」
「頑張れば写ります」
今度は写れ写れと、頑張って写真を撮る。
「ほらっ……写りましたよ……!」
「疲れてるならむりしないでねぇ。でも、本当だぁ……不思議だねぇ」
先生は一枚目と二枚目の写真を見比べながら感嘆の息を漏らしていた。
これのおかげで盗撮はされない。でもこれのおかげでバレる可能性がある。悩ましい。
そんなこんなでチャイムが鳴った。授業終了のチャイムが。
先生からスマホを返してもらって、念のために写真を消しておく。
「なっちゃーん! だいじょーぶー?」
佳に見られでもしたら大変だからだ。
佳になら、私の血のことがバレても大丈夫。本来なら。
でも今は佳にだけはバレてはいけないようになってしまった。
超が付く程良い人の佳にこの血のことがバレてしまうと、どうせ芋づる式にこの陽に弱い体質のこともバレてしまい、佳を傷つけてしまう恐れがあるからだ。
この体質じゃなければ、佳にだけは話せるとかだったのに、佳にだけは話せないようになってしまった。
とかまあ、この体質のことを佳に――っていうのをうだうだ二ヶ月間考えているけど一向に進展しない。なんかもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉどうすればいいのか分からない! アイツのこともあるし! 平和な高校生活か脅かされる気がする!
「大丈夫じゃないかも」
「えぇー⁉ 海幻ちゃん! なっちゃんがだいじょーぶじゃないみたい‼」
「保健室では静かにねぇ」
平和が続いているうちに、この平和を享受しよう……。




