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吸血鬼が憩える保健室  作者: 坂持


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今日をもう少し続けたい

 私の勝ちで終わったものの、なんとも言えない雰囲気が漂う。


 それもそう。だって誰一人としてゴールしてないから。


 私が勝ったのだって、佳と先輩が『負け』たからだ。


「ん。もう一回するには時間が無いよね」

「ですねー。なんかごめんなさい……」

「とりあえず新しいの作ればいいよ。これはこれで面白いし」


 すごろくとしては終わりだけど、こうみんなで作って、遊んで、楽しめたんだからこれはこれで成功だろう。それに、部活動だから平日は毎日あるから、また新しい物を作っても問題無い。


 なんだかんだで私も無事に部活を終えることができたし、今日の部活は大満足ということで、まだ少し早いけど解散だ。


 解散――のはずだったけど、まだ少し時間があるということで、私達は食堂へやって来た。


 食堂といってもそんな大層な物ではなく、結構大きめコンテナハウスのような壁を叩けば高い音が鳴るような建物。特徴と言えば食堂にある二台の自動販売機とちょっとした売店。


 私と、多分先輩もだろうけど、こう人が集まる場所はあまり行かないと思う。何回か遠目から見たことがあるけど、そりゃもうすんごい混雑。私みたいな超絶美人がいればそりゃもうすんごい騒ぎになるはず。


 そんな人が集まる食堂に私達は向かう。


 放課後だから、人の数は昼休みには遠く及ばない。何組かの生徒のグループが屯しているだけ。


 そしてやっぱり私と先輩に釘付けになってしまう。


 うっ……陽が……。


「鳴月、大丈夫?」


 そんな先輩に私は爽やかな笑顔を向ける。


「ヤバいです」


 とりあえず、陽が当たらなそうな席を確保してもらい、私は机に溶けるように突っ伏す。


「なっちゃんだいじょーぶ⁉」

「大丈夫大丈夫……」


 たぶん大丈夫。


 それで、なぜ私達がこんな最終下校時刻も近い時間に食堂へやって来たのか。まあ軽い打ち上げのようなものをしようとのこと。自動販売機でジュースを買って飲んで帰るって感じの。


「鳴月、なに飲む?」

「甘いコーヒーで……」

「ん、分かった。佳、買いに行こう」


 先輩が佳を連れて飲み物を買いに行ってくれたのを見送って、少しの間だけだけど休憩する。


 ちらほら陽が襲ってくるけど、佳の陽程強くないから休憩できる。これは佳の陽に私は鍛えられたということだろうか。


 ちょっと自分の成長の可能性に笑いそうになっていると、飲み物を買いに行ってくれた二人が戻って来た。


「これでよかった?」

「はい、ありがとうございます」


 財布からお金を渡そうとしたけど先輩に止められてしまった。


「今日は私の奢り。異論は認めない」

「受け取って貰えなかったよぉ~」


 佳の様子を見るに、どうしても受け取ってくれないらしい。仕方なく財布を引っ込めて先輩からのコーヒーをありがたく頂戴する。


 佳はミルクティーで、先輩は私と同じコーヒーだけど無糖。特になんにも、ツッコミどころの無い飲み物だ。


 他愛もない話と、明日はなにをしようか、正月遊戯と言えばとか、落ち着いた時間を過ごすことができた。


 そして時間になると今度こそ解散となって私達は帰宅することにした。


                 △


 長いような、短いような、なんとも言えないけど、充実した生活を送っていると言えるだろうと、最近の毎日を一人振り返っての結論を適当に出す。


 適当に本棚を漁って、適当な本を取り出してパラパラと。


 疲れているんだし早く寝ればいいのに、まだ夜の九時だ。早く寝ると早く目が覚めてしまうなんてことは無いけど、 なんか勿体ないんだよね。


 早く寝れば、早く明日になって佳と先輩に会うことができるんだけど、楽しみな明日よりも楽しかった今日にいたいみたいだ。


 前までの自分だったら考えられないよ、本当に。こんな体質じゃなかったらもっと楽しめたと思うんだけど、この体質にならなかったら今の学校に通っていない訳で、これがジレンマか……。


 この体質の改善、陽への耐性さえついけば、全てが解決なんだけど。そう甘くはないよね。


 吸血鬼の血を引いているから吸血鬼について調べようにも、記録に残っている吸血鬼の情報には『陽に弱い』なんて残っていないし。いやもうほんと吸血鬼ってなんなの?


 あーもう! こんなこと考えても仕方ない! やっぱり寝よう!


 本を片付けて、寝る準備をしているとスマホが通知を鳴らした。見てみると正月遊戯部のグループトークだ。そして送り主は佳だった。


 佳がなにか画像を送信したらしく、トークルームを開いてみる。送られた画像は羽子板の写真だった。


『家にあった!』


 そんなメッセージと一緒に送られた羽子板の写真。三人でするには板でいいのか、ラケットが一つ足りないけどそれは今どうだっていい。


『佳の家、なんでもあるね』


 先輩がメッセージを返した。私も『やったぜ』的なスタンプを送ってみる。


 実はまだ佳の家へお礼に行けてないんだけど、どうしよう……佳の家が和風の屋敷みたいな家だったら。


『明日持っていきます!』


 と佳からの返信。


 それにスタンプで返して、なんか味気ないなと思って、次に送るメッセージを考える。この話題がここで終わったら、楽しい今日がもう終わったみたいで少し寂しく感じてしまう。


 羽子板の話を広げるか、佳の家の話を広げるか。どっちの選択肢をとればいいのやら。我ながらコミュニケーション能力が低いなと苦笑しながら考える。


 今日をもう少し続けたいから。

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