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Re:CALL 2  作者: 明上 廻
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模擬戦

 全員で、練習場行くと毎回、軍部防衛局員がそろって見に来ている。

 中には、防衛中の待機組に中継を回すために、【ゼロシフトスクリーン】を展開する始末だ。

 仕事しなさいよ。

 それに、総当たり戦じゃないからみんなが見るのはごく一部にしか過ぎないよ。

 毎回のことだけど、組み合わせは絞られる。

 知里さんや石永君、蒔苗さんは健吾君と紅葉ちゃんとは組ませられない。

 でも、最後は僕との対戦が待っているからどちらにせよ、覚悟してもらうことになる。




 結果は、見えていたけど知里さん、石永君、蒔苗さん組からは知里さんが。

 健吾君と紅葉ちゃんからは紅葉ちゃんが勝ち上がった。

 さすがに健吾君でも時を止められたら対応が難しい。

 ハンデとして、時を止める時間は5秒に限定したけれど、その間に紅葉ちゃんが健吾君の体勢を崩しにかかり、その対応に四苦八苦している間に、痛烈な一撃をあたえられ、健吾君がダウンとなった。

 この回は、見ている観客組からは超次元過ぎて、『何が起きているのかわからない』どよめきが起きていた。

 そのため、知里さんたちの試合の方がよりわかりやすかったのか喝采が巻き起こった。

 知里さんは元々のポテンシャルが高く、エリア改造によって自分が有利になるように、対応する順応性があった。

 予想通りだ。

 さて、こんどは自分の番だ。

 まずは、知里さんとだ。

 まあ、わかりきった結果だったけど。





 僕がステージに立つと、知里さんが敵意むき出しで見てきた。

 「いい加減、その余裕そうなツラに一撃入れてやる!」

 「ハイハイ、期待しているよ~」

 そういって、さっき買ってきたラムネソーダの瓶を開けて飲んで見せた。

 その態度にイライラが限界に達したのか、一瞬で世界が暗転する。

 まだ開始の合図がないけれど………まあいいか。

 でも、彼女も最初に比べれば成長したと思える。

 フィールドの展開にかける時間が初期よりも格段に上がっていた。

 知里さんの魔法である【ゲーム空間】は、自分の作り出した空間に相手を入れて一定の条件をクリアしなければならない。そしてその間、特定の魔法しか使えない、もしくは、全く使えない場合もある。

 彼女が成長した要因の一つがこの展開の速さだ。

 フィールドの展開は、空間の上にさらに別な空間を作り出す行為だ。

 そのうえ、その空間のルールを設定しなければならない。

 配属当初は、展開までに30秒かかっていた。

 それでも大したものだと思っていた。

 でも実践では30秒というのは、あまりにも隙が大きすぎる。

 だから、そこを指摘する意味合いを込めて最初は10秒で終わらせた。

 フィールドを展開中に、ラムネソーダの瓶に入っていたビー玉を指ではじいてノックダウンさせた。

 寝ている間に、油性ペンで顔に落書きをしておいた。

 本当は水性ペンで書くつもりだったけど………許して?

 でも容赦なく『ゴリラ』とデカデカとオデコに書いておいた。

 起きた後の憤慨ぶりに、笑ってしまった。

 健吾君にも八つ当たりして、面白かったな。

 そのことが悔しかったのか、彼女もまた成長していた。

 今では展開は3秒だ。

 十分の一にまで縮めることができたのには理由がある。

 空間干渉系魔法は、フィールドの展開とフィールドのルールを同時に設定しなければしけない。

 だから、時間もかかるし無防備になる。

 今は違う。

 フィールドの展開に9割注いでいる。

 残りの一割で一つだけルールを作るだけだ。

 『相手を外に出さない』

 それだけだ。

 順序を明確化させた素晴らしいものだ。

 実際の細かいルールは、フィールドの設定を終えた後で決めればいい。

 まあ、3秒でもノックダウンさせることができたのだが、今回は知里さんの誘いに乗るとしよう。

 まだまだ改善しないといけない部分があるし。

 そう思っていると、フィールドのどこからか声が聞こえてきた。

 『絶対に今回は勝つ!』

 すごい意気込みだな。

 前回、間違えて油性ペンで書いたのを根に持っていたのかな?

 『誰が、ゴリラだ!』

 ああ、書いた内容に怒っていたのね。

 納得。

 景色が黒一色から戦場に変わっていく。

 その中でちらほらと、厳つい戦闘兵が旧式である銃をもって登場してきた。

 『今回は、あんたの苦手なFPSよ。瞬間的射撃能力が問われるこの空間で生き延びることなんて不可能なんだから!』

 まあ、ね。

 この前、健吾君たちの家に行ったときに、昔のシューティングゲームをやったけど僕の照準がガバガバで当てることすらできなかった。

 戦場では、相手が嫌がる行動こそ積極的に行うべし。

 僕の苦手とするところをつくのはいいけど、誤算があるよ?


 これは、()()()じゃない。


 『一斉掃射!』

 NPCたちが僕めがけて銃弾を発報した。

 この場所では、どうやら防御魔法は使えないらしい。

 体に纏わせているホログラムがほどけそうになるほど、強力な縛りを付けられている。

 このホログラム上に魔力を通して魔法の被膜を作るのは難しい。

 強くなったことを喜ぶべきか、からかう材料がなくて悲しむべきか。


 どちらにせよ、僕の勝ちは揺らがない。


 銃撃が一瞬だけ止んだのを確認してから、身を乗り出した。

 戦場をおどるように僕はステップしていく。

 いや、スキップと言った方がいいかもしれない。

 最初のターゲットに向けて移動し始めた。

 そんな中で、発砲音が重なった。

 おそらく、空間を眺めている知里さんは勝利を確信していることだろう。

 甘いな。


 放たれた銃弾は、僕を素通りしていった。


 『は?』

 そんな言葉と共に僕は、NPCたちから銃を奪い、至近距離で当てていく。

 例え、狙いをつけるのが下手でも超至近距離なら外さない。

 引き金を引く。

 相手が倒れる。

 移動する。

 引き金を引く。

 相手が倒れる。

 移動する。

 この作業の繰り返しだ。

 相変わらず、狙いは正確なのに相手のNPCたちの銃弾は僕をすり抜けていく。

 そして、最後の一人を倒した瞬間フィールドが解かれた。

 「くっ、もう一度———」

 「はい、おわり」

 目の前にいた知里さんにさっきまで飲んだラムネサイダーのビー玉を弾いて気絶させた。

 「ぎゃっ!」

 どうやら、僕は銃よりも自分の指でモノを弾く方が精度高いようだ。

 それに銃なんて野暮だよ。

 金属の弾で命一つとれるなんて、旧時代の人類は気が触れていたのか?

 命を取るなら、軽い気持ちでできる得物は使わないのが礼儀だと思うけど。

 そうでなくても、人間の命なんて燭光と同じくらい、かぼそいのだし。

 さてと、今日は間違えないように水性ペンであることを確認してから………。


 【イノシシ】


 「ふう。いっちょ上がり」

 ラーメン屋の店長のような声が出てしまった。

 なお僕は、ラーメンに関して、あまりこだわりはない。

 しいて言うなら、ちぢれ麵がおいしいかなくらいだ。

 みんなは、まるで呪文のように注文している風景を見て戦慄した。

 なんだよ、ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニクって。

 こんなこと言わないとラーメンが出てこないのか、とか思ったね。

 あとあの量は異常だよ。

 石永君が余裕で食べていた時には驚愕だった。




 さて、ここで少しだけ種明かしをしよう。

 なぜ、知里さんの銃弾は僕をすり抜けたのか。

 答えは至ってシンプルだ。

 フィールドにとらわれた後で、知里さんはルール追加をする。

 つまりだ。

 その間は、()()()使()()()

 だから、空間に同調してルールを一文加えた。

 【()()()()()()()()()()()()()()()()】と。

 つまり、ハッキングしていたということだ。

 本当なら、すぐにでも空間から出られたし、知里さんのところまでジャンプして終わらせることだってできた。

 そうしなかったのは、知里さんに合わせたからだ。

 今回の問題点は速度を重視するあまり、精度に問題を残していた。

 そこを意識してほしいからこうして乗ってあげた。

 あとは、健吾君が指摘するでしょ。

 こうして、試合が終わると観客席からどよめきや拍手、そして喝采が巻き起こる。

 できれば、観戦している君たちもこのくらいのレベルになってほしいのだけど。

 時々、人手が足りないから、と言ってうちの部署に防衛線警護を依頼されるくらいだ。

 せめて、一人で防衛線管理ができるくらいの技量は持ち合わせてほしい。

 だから、マキナさんと石永君をペアで貸してあげることがしばしばある。

 敗れはしているけど、決してマキナさんも石永君も弱いわけではない。

 マキナさんは、多方面の魔法が扱えるし、石永君も肉体面や策略面は一般の防衛局員を抜きん出ている。

 ただ、知里さんとの相性が悪いだけだ。




 さて、本番だ。

 我が娘ながら、油断できないほど強い。

 時間を止めるなんて基本無敵だし。

 同調しながらだから観客には何が起きているのかわからないだろう。

 「それで、紅葉は勝ったらどうしたい?」

 「………お父さんにハグしたい」

 グラついた。

 かわいい。

 我が娘ながら、恐ろしい子だ。

 勝負の前から、攻撃してくるなんて。

 お父さん、負けていいかも、とか思っちゃったよ。

 実際に、健吾君との試合を見ていたけどかなり余力がありそうだ。

 というか、一方的だった。

 時間を止めて、健吾君の脚を崩して地面に倒す。

 これを繰り返すだけだ。

 でも、健吾君もさすがだった。

 時間停止が解除された後、地面から即起き上がって紅葉ちゃんを背面からホールドして抑え込もうとした。

 でもね、もう一度時間を止められたら、ホールドされている腕はほどかれる。

 それに、紅葉ちゃんの時間停止中に壁に吹き飛ばされたら気絶くらいする。

 身内だからといって、健吾君は手加減しない。

 むしろ、身内だからこそ戦場で死なないように本気で打ち合ってくれる。

 それでもこの惨状なのだ。

 いかに紅葉ちゃんが強いかわかる。

 それに、紅葉は人間の括りではないから、健吾君の魔力にも当てられない。

 最初こそ、健吾君は僕以外で本気で打ち合えると思っていたらしいけど、次元が違う魔法のせいで対応できていない。

 むしろ、毎回気絶させられていることにショックを覚えているらしい。

 「俺、弱い。ちょっと泣く」

 違うよ、紅葉ちゃんが強すぎるの。

 あと可愛すぎるのも問題なの!

 今度から、紅葉ちゃんの時間停止時間を3秒にしよう。

 さすがに、お互いが成長できないのは問題だ。


 お互いスタート位置についた。

 開始の合図と同時に、紅葉ちゃんが仕掛けてきた。


 ———時間を止めずに。


 組手をするようにお互いの手を弾きながら懐にもぐりこまんと狙っている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この小さな体には出せないスピードだ。

 「時間は止めないの?」

 「お父さんに時間止めは意味がないから、肉体の内側に時間停止を連続で行使しているだけだよ」

 難しいことをしていた。

 幼い体に、時間止めを連続でかけることで、短期決戦時に爆発的な肉体強化を施しているということだ。

 だから、僕の動きについていけている。

 でもね、無理はダメだよ?

 その負担は、ブレーキとアクセルを同時に押しているようなものだ。

 だからすぐに———。

 「っ!」

 鼻から血がほとばしり、体の無理が出始めた。

 おそらく、貧血も引き起こしていることだろう。

 もっておよそ一分。

 体に負担がかかるのは目に見えるし、そこに勝算を見つけないと作戦にすらならない。

 それにね、相手に自分は無理していますって教えたら、相手だって時間稼ぎをして倒れるのを待つ方針に舵をきるだろう。

 だから、その判断は間違いだよ。

 でも、幼いなりに考えた結果なのだろう。

 僕は、紅葉ちゃんの体の軸心である右脚を払いあげてそのまま空中に飛ばす。

 浮き上がった紅葉を抱き留めてあげて、

 「はい、終わり」

 と言ってあげた。

 「むぅ~」

 紅葉ちゃんが膨れっ面になって可愛さが倍増したが仕方ないことだ。

 紅葉ちゃんはかわいい。

 これはわかりきったことだ。

 鼻から出ていた血をぬぐってあげる。

 今の戦闘で体にかけた負担を緩和させるために血のめぐりを魔法で少しだけ加速させる。

 同時に、肺の血中酸素量を上げて貧血を緩和させてあげる。

 すると、すぐに顔色がいつも通りに戻った。

 だから、思いっきり抱きしめてあげる。

 「えへへへ」

 と、さっきまでの膨れっ面はどこかにいき、満面の笑みをこぼしてくれた。

 これで、ご飯は3杯いける。

 実際には、また腕の一本くらい持っていかれるかな、と予想していたけれどよかったよ。

 でも将来はこっち側じゃなくメイドになってほしいなあ。

 四乃宮家のメイドなら命の危険もないし。

 それに、この子が生きていてくれれば、僕はそれでいい。

 それ以上は望まない。

 あ、でも友達は作ってほしいかな。

 この前、東雲さんって子が来ていたけれど、あまり干渉し過ぎるのはよくないと思って、その後どうなったのかは聞いていない。

 でも、紅葉ちゃんは、結構器用な方だからうまくやるだろうと勝手に思っている。

 それくらいかな。

 あ、………それとできれば、反抗期の時に嫌いにならないでくれれば。



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