開花
「わ、わたしの目標ですか?」
まずは、目標を明確にしなければ。
健吾さんの指摘通り相手に目標を聞くことにした。
自分本位な道の照らし方は相手への不要な嫌がらせだと気づかされたからだ。
「………本当は、私、防衛局でやっていける自信なくて。戦闘なんてからっきしだし」
そうだね。
もう、嫌というほど理解したわ。
地面に転がっている姿も何回も見たし。
「それなら、他に目標はあるの?」
「あ、あの。そ、の………」
なんだろう。
とても言いにくそうにしている。
「わ、私、よくわからなくて」
わからないのかよ。
「で、でもやりたいと思えることなら」
まあ、聞くだけ聞くか。
「私、補助具とかみんなが身に纏っている軍服のような特殊な生体機器をいじりたくて」
「なんでまた」
「………あんまり他の人がやってなさそうだから」
………分母数が低いとトップを狙いやすいから、とかいうやつ?
でも、問題がある。
「補助具の研究機関は進学校じゃないと入れないでしょ?」
コロニーの悪癖だ。
進学校には、残存するコロニー内部出身者でしか入れない。
つまり、地上地区出身者にはその権利がない。
さらに、進学校じゃないと入れない企業も存在する。
これは、コロニー内部の教育機関におけるカリキュラムを均一化したため、企業側の判断を容易にしやすくする方法らしい。
お母さんが言っていた。
「え、えっと。そこまで知らなくて。で、でも、補助具に関わることができれば、と思っていたから。だから、軍学校のカリキュラムに自分が扱うだろう補助具のことが全然学べなくて疑問に思っちゃって。補助具一つで戦略が変わるはずなのに………」
私的には、特段変わった印象はなかったけど。
でも、さっきまでとは違って饒舌だ。
うーん。
補助具の研究機関ねえ。
難しいなあ。
でも、その前にこの子がいじくった補助具をもとに戻さないと。
え?
戻せないの?
お母さんは、今日、どこかで会合があるらしいから出かけて不在だ。
………円さんに相談してみるか。
「へえ、面白い子がいるのね」
四乃宮邸に帰ったあと、すぐに改造された補助具を円さんに渡して理由を話した。
興味深そうに、補助具を見ていく。
「補助具に興味を持つ子が………ねぇ」
ただの機械好きだとおもうけど?
「補助具は、ただの機械じゃないの。補助具や軍服は生体機械。常に所有者の最適な状態を自ら模索していく自立型学習装置よ。さらに親和性を組み込むために自分の生体情報である血、骨、皮などの情報を収集して対象者の自己再生能力を高めたのが、みんな使用している補助具や軍服よ。まあ、モミジちゃんは使用していないからわからないかもしれないけど」
へえ。
そもそも私の補助具は現状作れないらしい。
そんなものなくても、お父さん以上の実力者と敵対しない限り特段問題にならない。
………模擬戦でお父さんを倒せるなら今後は考えようかな。
「それに、進学校の中でも補助具について語られることは少ない。例え大学機関の工学部でも、原理原則まで。作ることはないよ」
「じゃあ、なんのための学校なの?」
「ラベルかな」
言っていることの意味がわからなかった。
「彼らは、自分がどんな学校を出てきたのか、どんなカリキュラムを組まれて卒業したのかを単純に企業側にわかってもらえるようにするための出身学校のラベルを見せるの。その過程や、努力は加味されないよ」
なんだか理不尽に聞こえる。
それじゃあ、人を見るんじゃなくて肩書を見て判断しているということだろう。
特に、才能がなくても入れるし才能があっても学校の肩書で企業側から落とされることもあるということだ。
「そのために面接があるけど、それだけじゃ、わからないのも事実だけどね」
なら、出身校で判断しなければいいのでは?
「それができればいいんだけどね。工学部の生徒ならまだ設計論についていけるけど経済部出身の人に設計論を唱えても呑み込みの差ができてしまうから難しいのよ」
円さんも苦労しているみたいだ。
「でも、興味が出てきたわ」
「なんの?」
円さんが改造補助具を見つめながら、立ち上がった。
「その東雲って子と連絡は取れる?」




