報復
モニターから様子を見ていた男たちは焦っていた。
さっきまで中継していた捕虜の対象が消えたのだ。
音もなく、光もなく、ましてそこに予兆などなかった。
瞬きをした瞬間にまるで存在しなかったように消失したのだ。
「どうなっている!?」
「わかりません!」
「敵に捕らえられたのか!?」
「判断できません! だって、消えたんですよ!?」
「少しはわかることを整理して報告しろ!」
「無理言わないでください!」
「自爆ボタンを押すべきでしょうか?」
「だが、これがあの男の能力だとしたら無駄になる!」
「しかし、追跡されることだけは避けなければ!」
そんな混沌とした場に似つかわしくない声が響いた。
「こんにちは、皆さん」
その声の主は、ゆっくりとそれでいて穏やかに殺気を放っていた。
先ほどまで、言い争っていた声が一つもなくなりただただ静寂が訪れていた。
「注目していただきありがとう。静かにしてくれたおかげで声が通りやすくなったよ」
そんな能天気なトーンと裏腹に重力を倍増されたかのような気だるさ、呼吸の粗さ、心拍音の増大を我々は感じていた。
「な、なんでここに………。」
誰かが絞り出すように声を出していた。
なぜなら、先ほど対象者に襲わせるように指示した標的が………今、目の前にいるのだ。
「ええ? いまさらじゃない?」
その男は、さも当たり前のように語った。
「ドローンを飛ばしているなら、操作するために約1キロ付近での操作、および中継器が存在しているはずだと思ったからさ。今回は後者だったけど、中継器をたどってきた先にここにたどり着いたってこと。おわかり?」
だとしても、こちらはまだ仕掛けていない。気づかれる事柄は何もないはずだ。
「何事も予防が第一だよね? 異変を感知できるのが仕事をしていくうえで大事なことだよ? まあでもこんな狭い室内に籠っていてもわからないよね?」
うんうんと、頷いた男は何の気もなしに腕を軽く振った。
それだけで対面していた仲間の頭が飛んだ。
「ひっ!」
「いや、焦ったよ。まさか、刺客に彼女を送ってくるなんて」
握りこぶしを作り、まさしく正拳突きをしたことで体に穴が開いた人がいた。
「でも、まあこういったこともあるのが人生って思ったね」
片腕を掴まれ勢いよく投げ、壁で破裂した人を見た。
「感謝しているけど、君たちのせいで多くの人が死んだんだ。覚悟してね?」
「———化け物が!」
誰かが言った。
いや、それは最後である自分の口から出たものだった。
「化け物は君たちだろ?」
そういって、ためらいなく自分へ向けてその腕が振り下ろされた。




