合縁奇縁
投げ出されたところから歩いて二時間の距離にコロニー3の地上ブロックが見えてきた。
看板には地上東ブロックと表記されていた。
『そのまま進め』
忌々しい声が耳から聞こえる。
どこから見ているのかと思ったら、後方の空にドローンが飛んでいた。
まったくいやらしい。
こそこそみられるのは嫌な感じだ。
舌打ちの一つでもしたいところだが、相手に命を掴まれている状況でやるには何の得もない。
素直に従うことが今は賢明な判断だろう。
指示に従い、地上東ブロックの中に踏み入るとそこでは大規模な建築工事を行っていた。
人の入り乱れが激しく、だれがだれだか認識できないほどだった。
長期戦になると踏んで今のうちの目の前にいる『エネルギー源』をとっておく必要があるだろう。
そこで指を鳴らした。
パンッ。
その音と共に世界が停止した。
正確には違う。
私以外の物が停止したのだ。
動かなくなった世界でドローンに向けて舌を出す。
無駄な行為だが、このくらいはしておきたかった。
そのくらいにしておいて、仕事の前の食事をしなければ………。
人間の味は、不味いが仕方ない。
そう思って、適当に目の前にいた人に齧り付こうとしたその時だ。
停止した世界で足元に何かが飛んできたのだ。
飛んできたものは鉄パイプだった。
「それはダメだよ」
声は優しく、諭すように話しかけていた。
私は困惑した。
どうして、この世界を認識できるの!?
そう思っていると、声の主である人がいつの間にか私の前に立っていた。
私と同じ赤い瞳が、私を見ていた。
あることに気が付いた。
その顔は標的の顔だった。
だが、すでに決め手である技は失われている。
時間こそが私の武器なのに………。
「どうして………」
疑問が頭の中で納まらず声に出てしまった。
その問いにまた優しく答えてくれた。
「確かに『時間の停止』、いや『時間と時間の間に君意外に認識できない新たな時間帯を作る』といったところかな? でもその中で君は動けている。なら同じ条件にしてしまえば、僕も動けるようになるのは自明の理だろ?」
まったくわからない。
「え、そんな顔しないでよ………。それにできたのならこの理論はあっているってことでしょ?」
確かに。
しかし、私はすでに打つ手がなく硬直してしまった。
私を目標は見下ろす形で立ちふさがり、何かを観察するように深々と見入っている。
目線の高さをわざわざ合わせるために、膝を折って見入ったのはこの男の礼節だろうか。
私を凝視する眼を徐々に細めて、少しだけ寂しそうな顔になったのは気のせいだろうか。
細めた目を一旦閉じて明るく切り出された。
方針を決定したのか立ちすくんでいる私を見て、
「………よし決めた」
その言葉と共に私は彼の腕に胸を貫かれていた。




