フェリクスの決意③
それは、今回の誤解をすべて解き、アメリアに「好きだ」と言葉で伝えること。
フェリクスは一度も、その気持ちをはっきりと言葉で伝えたことがない。
正しくは、デートの度に伝えようと画策しているが、伝えられたことがない。
冗談でもふざけているわけでもなく、いざアメリアと会うと、フェリクスの時は止まってしまう。
スイーツの話をするアメリアが可愛く、孤児院の子供達を慈しむアメリアが清らかで、領民の未来を慮るアメリアが美しい。
そして、侍従たちを大切に慕うアメリアは眩しかった。
彼女はコーンウェル公爵家に仕える者たちを思いやり、メイドだけでなく騎士たちにまで、手ずからお守りなどをあげている。
大人気なく彼らに嫉妬して手作りをねだってしまったほど、あまりに羨ましかった。
そんなふうに表情や仕草ひとつひとつに目を奪われ、すべて覚えるほどアメリアの言葉に集中し、ひいては声にさえ聞き惚れて、いつの間にかデートが終わっているのだ。
フェリクスは想いを伝える余裕がない自分に嫌気がさし、もちろんユーリにも相談した。
するとなぜか「スイーツが苦手な僕の手には負えないよ」と、意味不明な理由で断られたのだ。
今回のトラブルは、フェリクスが話を勘違いしたまま返事をして起きた誤解かもしれない。
しかし、それ以前にアメリアを不安にさせた原因として、フェリクスの言葉足らずもあったのではないか。
アメリアがどんな証拠を手に入れて、なんの誤解をしているのかまだわからない。
だが、フェリクスが「好きだ」と伝えなかったせいで、よりアメリアの苦しさや悩みを悪化させたかもしれない。
だとしたら、今までアメリアに甘え、臆病さから目をそらしてきたフェリクスへの報いが、今の状況だ。
もしもチャンスをくれるなら、今度は全力で、惜しみなくアメリアへの愛を届けようとフェリクスは決めている。
アメリアの誤解を解く上でも、アメリアを愛するフェリクスが今もいることを、伝える責任があると思う。
たとえ許しを請えなくても、その心に嘘はないことだけは伝えなければ。
だから何度デートの誘いを断られても、手紙の返事がなくても、公爵家のエントランスで怒った侍女に締め出されても、めげることはないし、それは当然の報いだ。
想像したくないが、アメリアに「嫌いになったから会いたくない」と言われない限り、フェリクスは諦めたくはない。
アメリアを裏切るようなことはしていないと、あなたが好きだと、きちんと伝えたい。
そう思いながらフェリクスは今も、読まれるかわからないアメリアへの手紙を書いていた。
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