フェリクスの決意②
ユーリが示した見解は
「フェリクスの浮気を疑ったアメリアがショックを受け、避けているのではないか」
という、フェリクスにとって最悪のシナリオだった。
しかしフェリクスは、その仮説を認めた。
アメリアが大事だからこそ、自分の非を受け止めることよりも、それを空論だと断定することでアメリアをまた傷付けるほうが、よっぽど恐ろしかったのだ。
蓋を開けてみたらなんの誤解もなく、ただアメリアに愛想を尽かされただけという方が、まだ救われる。
そう考えるほど、あの夜から自責の念をフェリクスは抱え続けていた。
仮説を認めたというのは、浮気を認めたということではない。
フェリクスが女性と逢瀬をしたり、街でデートをした事実は一切ないのだ。
だからこそ、アメリア一筋で他の女性のことなど考えもしないフェリクスには、今回のことはまさに青天の霹靂だった。
そして、それはユーリも重々承知だ。
その上でユーリは、「ジュエリーブティックにいたかどうか」をフェリクスに質問したアメリアの流れと反応から、アメリアには何かしらのネガティブな証拠、つまり”浮気の証拠”をもっていたのではないかと言うのだ。
そんなことを夢にも思わず、フェリクスは「ブティックで準備していたサプライズに気づかれたのだ」と思い、ネタバラシのためにブティックにいたことを認めてしまった。
もし、ユーリのイメージした”浮気の証拠”が実在するなら、その”浮気の証拠”は断じて間違いであり、フェリクスはそれを完全に否定するべきだった。
肯定してしまえば、アメリアにとってそれが”真実”となってしまう。
今となっては詳しくアメリアの話を聞かなかったことを、フェリクスは心底悔やんでいる。
もしユーリに言われたことが正しいとしたら、耐えきれない。
———アメリアの心を、どれだけ傷つけてしまっただろうか。
フェリクスが辛いのは、自身の名誉が傷つくことや、浮気の汚名についてではない。
幼い頃からの婚約者であるフェリクスの裏切りを、アメリアに心から信じさせてしまったとしたら。
健気にもその裏切りを受け入れるとまで告げたアメリアに対して、フェリクスが告げた「嬉しい」という言葉は、彼女の誠実さに対する、どれだけの冒涜だったろうか。
現にこの2週間ほど手紙の返信はなく、デートは断られ、完全に拒絶されている。
自分のあまりの愚かさと、傷つけてしまったであろうアメリアの気持ちを思うと、フェリクスは絶望で体が震えてくる。
しかし、だからこそ、フェリクスにはやるべきことがあった。




