コスモスの失意②
「…今日は天気もいいし、散歩をしたらきっと気持ちがいいはずだわ」
やわな思考を振り切ってカラフルな景色を想像すれば、花が好きなアメリアは浮き足立ってくる。
久しぶりのフラワーガーデンを素直によろこびながら、さっそく中庭に足を踏み入れた。
そして、入り口であるトピアリーのアーチをくぐると、アメリアはピンクの霧に包まれたかのように錯覚した。
「うわあ…!なんて素敵なの…」
以前はたくさんの種類の花たちをゾーニングしていたスペースを、今は全てピンク色のコスモスが占めている。
よく見ると所々に、赤っぽいものや、シックで暗い色もあった。
「乙女の真心」という花言葉のように、可憐でかわいらしい佇まいだ。
深いボルドーに目を惹かれて体をかがめると、ほんのり甘い香りがする。
「やっぱり!チョコレートコスモスだわ!香りまで愛らしい…」
近くに寄ると、本来コスモスが持っている爽やかさで独特な甘さと、チョコレートのぽってりとしたフレーバーが合わさったような香りがするのだ。
その特徴があらわす通り”チョコレート”の名を冠したコスモスに、花好きのアメリアは魅せられてしまった。
しゃがみ込み、さらに花たちを観察し始める。
遠くから見るとまるでピンクのスプレーをかけたようだったが、近くから見るとひとつひとつに表情があって、いくら見ていても飽きない。
その時、ちょうどアメリアが入ってきたのとは別の入り口から、他の観覧客が来た。
しかし、コスモスに夢中のアメリアは全く気にしていなかった。
フラワーガーデンの奥にあるガゼボから、若い男性の声が聞こえる。
「そういえばフェリクス、あれはどうだった?」
花に集中するアメリアの耳を貫いたのは、聞き慣れた人の名前だった。
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