コスモスの失意①
王立学園に、今日の授業が終わったことを知らせるベルが響く。
アメリアはここに入学して以来はじめて、放課後が来たことに安心した。
今日の王立学園では、ほとんどの生徒がおとといの豊穣祭について話しているのだ。
もちろんその中には、想い人とおそろいを身につけられた成功者たちもいるので、アメリアは否が応でもあの豊穣祭を思い出すしかない。
その度にフェリクスとのことが頭から離れなくなり、落ち込んでしまうのだ。
ただ、自分がメランコリーな気分になるだけなら別に良かったが、そんな自分のオーラで親友のサラやジュリアンヌ、レイラに心配をかけてしまうことが一番心苦しかった。
そんなアメリアは喧騒から離れようと、優しい友人たちに断って王立図書館に来た。
ここなら静かそうだと思って立ち寄ったが、アメリアには、もしここで調べられたらラッキーだなと思っている分野があった。
それは、新しい布のレシピについてである。
いつもアメリアが教会のバザーに寄付するハンドメイドは、ハンカチやワッペンなど、平民が買えるようなリーズナブルなものが多い。
しかし、学園との両立のなかで作るため量を増やすのが難しく、思うように売り上げが伸びないのが悩みでもあった。
教会のバザーで売り上げが増えるということは、寄付できるお金が増えるということ。
もちろんコーンウェル公爵家として一定の寄付金はおさめているが、自分自身で孤児院のケアに貢献したかったアメリアは、裁縫ができるようになった9歳のときから、欠かさずハンドメイドをバザーに出してきた。
アメリアが布の製法を調べているのは、目新しいレシピの布を開発して、新しい物好きな富裕層に向けたものを作るためであり、それは量を作れない自分がもっと寄付金を稼ぐためである。
「あ!これだわ……よし、今日はこのくらいで良いかしら」
本をいくつか見繕い、ベラトーニがいる窓口に持っていく。
ベラトーニは、ガーデニングが好きな妙齢の女性で、図書館の管理人だ。
どこかの伯爵家の未亡人らしく、気品のある優しいマダムである彼女を、アメリアは「ベラさん」と呼び慕っている。
ベラさんと話し込むうち、中庭のフラワーガーデンでコスモスが見頃だと教えてもらったアメリアは。本を借りたその足で中庭へ向かう。
園芸が得意なベラさんは、図書館の中庭にフラワーガーデンを作って花を育てているのだ。
アメリアはベラのフラワーガーデンが大好きなのだが、近頃すっかりご無沙汰していた。
それは、普段のタスクに加えフェリクスのコサージュを作っていたから。
アメリアはそこまで考えて、ラベンダー色のチーフを思い出しそうになるのをごまかした。
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