豊穣祭の終わり①(フェリクス目線)
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「最近、王都のジュエリーショップへおいでになりましたか?」
フェリクスは、それを他でもないアメリアに聞かれたことが衝撃だった。
あまりに驚いて、エスコートのために差し出した手が震えてしまう。
サプライズのために、平民に身をやつしてまで王都街のブティックへ繰り出したのに、確信を持ったように質問されて動揺した。
だから失言をしてしまった。
「なぜ、それを知っている……?」
せっかくサプライズで渡すために、アメリアに内緒でオーダーメイドの耳飾りをあつらえていたのに、どこからかアメリアの耳に入ってしまったらしい。
フェリクスは、周りに頼りながらも数ヶ月かけて準備したサプライズの失敗を知り、少し口惜しい気持ちを抱いた。
しかし、こうなっては認める他ない。
サプライズを本人に見破られたのは恥ずかしいが、あがいても仕方がないだろうと腹を決める。
フェリクスはいたずらを見破られたような気持ちで、苦笑しながらアメリアに向き合った。
「……敵わないな、白状しよう。実は、今までずっと内緒にしていたんだが————」
「っ構いません…!!」
あまりに切実な叫びが星空に消える。
アメリアが真っ白な顔をして、一挙手一投足におびえるように、しかしどこか挑むようにフェリクスを見つめていた。
決して大きいわけではないのに強く響いたその声は、なにがあっても絶対にその先は言わせないという、強い意志を感じさせた。
その気迫に押されたフェリクスは「…何が構わないのか聞いても?」とアメリアに尋ねる。
自分でも思ったより恐々した質問になっているのはフェリクスも自覚したが、アメリアがここまでムキになるような、怒ったような態度を見せることはなかったので、突然のことに若干おそれをなしていた。
「殿下は私のためを思い、ご本心を内緒にしていてくれたのですよね?」
「?…あ、ああ」
ユーリから、「特に若い女性はサプライズというものを喜ぶのだ」と熱弁され、フェリクスは半信半疑だったが「少しでもアメリアが喜んでくれるなら」と、その考えに乗ったのだ。
「……では、そのままの事実を受け入れます。大丈夫です。これからも、約束された役割と責任を果たすことを誓います」
フェリクスは訳がわからなかった。
自分の不甲斐なさで耳飾りのサプライズはバレてしまったが、アメリアは寛大にも、プレゼントを受け取ってくれるということだろうか?
あの耳飾りをあつらえながら、店主のマダム・ルディに呆れられるほどアメリアを想った。
先ほどやんわりと断られかけたが、やはり受け取ってくれるということならフェリクスにとっても喜ばしい。
絶対に彼女に似合うはずなのだ。
しかし。
婚約者としての義務や責任として受け取ると言うなら、話は別だ。
フェリクスの中では、自分の片思いでしかなかったアメリアとの関係が、最近は少なからず変わって来ているのではないかと感じていた。
そのペースは穏やかでも、たしかに縮まる2人の距離にかけがえのない喜びを感じていたフェリクスは、今のアメリアのよそよそしい態度に、思い上がりを責められたような気持ちになる。
そんな風に彼女に遠ざけられるなら、今まで築いてきたアメリアとの関係性が崩れるくらいなら、どれだけ心を込めたジュエリーでもフェリクスは渡せないと思った。
「ああ、もしそうなら嬉しいが……そのせいで、これまで築いた大切な関係が変わってしまうなら、私はもう−−」
あのジュエリーを貴女に渡すのは諦めようと思う。
そう言いたかったフェリクスの口は、最後まで言葉を告げることができなかった。
ぽろりと、アメリアが涙を流したのだ。
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