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すれ違う2人①





豊穣祭の夜が明けた。





パーティが終わるまで王国を照らしていた星たちは、すでに朝の眩しさにかき消されている。

アメリアにとって、煌めく王城でフェリクスといた昨日がまるで夢だったかと思えるような、そんな目覚めだった。



それでも、まだ続くアメリアの胸の痛みが昨日のことを現実だと告げている。

もう事実は変えられないのに、未練がましく疼く心をアメリアはため息にして吐き出した。





「はあ……」





昨晩アメリアは、もしフェリクスの胸元にあのコサージュがなくても、会えたことの喜びを噛み締めようと決めていた。

実際、そのとおりに出来たと思う。

さすがに、気がついた時にはアメリアもショックを受けたが、フェリクスの口から「ブルーローズ」と出るまでは、再会の喜びで青い薔薇のコサージュのことは忘れていたのだ。



けれど。



それほどまでに嬉しかったアメリアの気持ちが間違いでないように。

フェリクスがコサージュを飾らなかったのも、豊穣祭でおそろいを一緒につける夢が叶わなかったのも揺るぎない事実だった。



だからと言って、フェリクスを責めるつもりはない。



家臣に止められたのかもしれない。

22歳のフェリクスが子供のような”おまじない”に付き合いきれずとも、無理はない。

そもそも誰かに言われた訳ではなく、フェリクス自身が決めたのかもしれない。



たとえどんな理由でも、アメリアのフェリクスへの気持ちが変わる事はないし、アメリアが婚約者として、配偶者としての責務を全うすることも変わらない。

それでもその意思とは関係なく、無意識に募らせていた夢は、現実となってアメリアの心を軋ませた。



パーティから帰ったそんなアメリアを見て、侍女のマーサは何かを察したようだ。

絶対に何か理由があるはずだと、フェリクスにきちんと聞くべきだと、アメリアを励ますように強く言い聞かせた。

けれど。





「聞くなんてできないわ……だって」





アメリアは、今後コサージュについてフェリクスに聞く気は一切ない。

なぜなら、フェリクスの方がコサージュの話題について触れないようにしていたから。



そして、実はコサージュの件よりも、さらにショックなことが起きていたのだ。








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