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終末世界の元暗殺者  作者: くろふゆ
第六章 貴女に捧げる鎮魂歌 requiem
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049話 天枷紫苑VS火口鉄平

 流斗がその場を去ったことで、道場の前には火口と紫苑が残された形となる。


「へぇ、そうかぁ。お前……半人半魔か?」


 紫苑の背中から生えた黒い翼と真っ赤に染まった瞳を見て、火口は呟いた。


「ええ、私は悪魔と人間のハーフ。そして、流斗様は私の契約者。よって主の命により、あなたにはここで消えてもらいます」


 火口の問いに、紫苑が冷淡な声で答える。


「まぁ、そう言わずにさぁ、ちょっとはお喋りとかしない? 天枷紫苑ちゃん、女は常に余裕を持っていなくちゃ、すぐに男に逃げられちゃうよぉ」

「気安く話しかけないでください、この人殺しが」


「何を言っているんだ? お前だって人を殺したことぐらいあるだろぉ? それにお前の主にだってあるはずだ。人殺しの経験がぁ」

「くっ……それは……」


「神崎流斗――あいつの目は、明らかに人を殺したことのある目をしている。しかも複数だ。罪は重いぞぉ。所詮、お前たちはオレたち魔術犯罪者と同類なんだよ」

「それは違います! 流斗様はこの国を良くするために――」


「――詭弁だなぁ。日本軍の管轄に入れば、暴力行為が許されるというのか?」

「なら、教えて下さい。あなたたち《暁の光》は何人の人間を犠牲にして、その犠牲の上に一体何を為そうというのですか?」

「国家転覆」

「……なっ!? それじゃあただのテロリストじゃないですか!」


 火口の迷いのない一言に、紫苑は戸惑いをあらわにする。


「まぁ、オレもお前ら如きに《暁の光》の理念を理解されようとは思っていないさぁ」


 そう言って、火口は逆立てた赤い髪を撫でつける。


「お前たちには欠片ほどの利用価値すらない。だからここで殺す。容赦なくなぁ!」

「あなたは半人半魔の契約ルールを知っていますか?」

「……は? さぁてね。オレは頭が悪いから分かんねぇわ」


「本契約を交わした半人半魔は主の命令を実行するときにのみ、通常時の数倍の力を発揮することができる。流斗様の命令はあなたの『殺害』。これ以上、流斗様に人殺しはさせません。あなたには流斗様と戦う前に、私の手によって死んでもらいます」


 紫苑の赤く染まった瞳がより一層輝きを増した。


「ははは! いいだろう。ならば、バトルスタートだぁ!」


 その言葉を皮切りに、火口は腰に下げた大剣を抜く。


「この剣の名は――バスターソード。刀身の先端から三分の一までが両刃になっていて、柄の長さが従来の剣よりも拳一つ分長い。そのため片手半剣という別名がある」

「見たところ、長さは120センチほど。重さは2,5キログラムといったところですか」


「……ほう、一瞬で敵の獲物の質を理解したか。お前も剣士だなぁ。なら分かるだろう? この柄の長さは応用が効き、片手で斬りつけることも、両手で構えて突き刺したりすることも可能だと」

「関係ありません。私はただ流斗様の命令を遂行するのみ。ここがあなたの死地です」


 そう言うと、紫苑は左右の腰から二本の小太刀を抜く。

 ――小太刀。長さは60センチ。重さは600グラム。

 それが二刀、紫苑の右手と左手に収まっている。


「ふん、命令を聞くだけのお人形さんがどこまでできるか見物だなぁ!」


 火口が紫苑の流斗への忠義を鼻で笑った瞬間、紫苑は火口の懐に飛び込んだ。


「対象を速やかに殺害します」


 左右から振り下ろされる紫苑の二本の小太刀。

 それを火口は一本のバスターソードで完全に受けきった。


 その後、両者は連続で斬り結ぶ。

 ガキンガキンと二本の小太刀とバスターソードがぶつかり合う音が響く。


 迸る大量の魔力と流れ落ちる一筋の汗。

 火花を散らす剣戟の閃きの数々。

 そのすべてが規格外だ。


 しかし、流斗の命令は火口鉄平の『殺害』。


(ならば――我が主の敵を殲滅せよ!)


「はぁあああ!」


 気合一閃。紫苑の小太刀が火口のバスターソードを押し込む。


「クソッ、やるなぁ!」

「排除します。あなたにはここで死んでもらう」


 両者共に譲らず、なかなか均衡を崩すことができない。

 火口と紫苑の戦いは、依然として拮抗したまま続いていた。


 両者共にまだまだ疲労の色は見えない。

 お互いに余力を残しているということか。


 火口は紫苑の剣を受け流し、立て続けに斬撃を放ってくる。

 刹那の間に幾度となく互いの剣がぶつかり合う。

 しかし、紫苑の二刀小太刀術は火口のバスターソードの切れ味を上回る速さだった。


 二人とも肉体強化の魔術を使用してはいるが、半人半魔である紫苑のほうが僅かに膂力で勝る。


「……おいおい、マジかよ!」


 優劣のないと思われた剣戟はやがて紫苑が上回り、火口を押していく。

 紫苑の激しい二刀小太刀の嵐が火口の体を少しずつ後退させる。


 そこで焦った火口の放った大振りの一撃を、紫苑は前回り受け身を取りながら一回転して躱した。だが――


「焼き尽くせ――《炎剣えんけん》!」


 火口の振るうバスターソードの刀身から炎が噴出する。

 その大火を纏った火口の横薙ぎを、紫苑は宙に飛ぶことで回避し、そのまま半回転して全体重を乗せ、二本の小太刀で火口の首を狙う。


 しかし、火口も機敏な反応を見せ、それを炎の灯るバスターソードで振り払った。

 そのまま火口は一度、紫苑から距離を取る。

 そして、右手にバスターソードを握り、空いた左手のひらを紫苑に向ける。


「《炎弾》!」


 火口の左手のひらから凝縮した炎の塊が連続で射出された。


「その攻撃は……無意味です」


 紫苑は火の弾を二本の小太刀で淡々と斬り裂く。

 そのまま火口の懐へと潜り込み、左右からその身を刻もうとする。


「チッ、吹っ飛べ! 《炎熱波》」


 しかし、火口の手のひらから今度は熱風が生まれ、紫苑の体を吹き飛ばす。


「さらに、喰らえ! 《火柱》」


 吹き飛ばされた紫苑の足元から、炎の渦が巻き上がる。

 それを紫苑は悪魔的直観により、紙一重のところで回避した。


「なるほど、あらかじめ設置しておいたポイントに火の渦を発生させる魔術ですか」


 そう言いつつ、紫苑は二本の小太刀を重ね合わせ、魔力を注ぎ込む。


「では、そろそろ私も本気でいきます」


 紫苑の二本の小太刀は、長さは三倍の180センチ、重さは七倍ほどの4キログラムの大剣――クレイモアに変化した。


 クレイモア――ゲール語で『巨大な剣』を意味する両手剣。


 柄も他の剣に比べて非常に長く作られており、振り回しやすいようになっている。

 鍔の先端には四葉を模した輪飾りが付いていた。

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