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終末世界の元暗殺者  作者: くろふゆ
第二章 御園学園 中学編
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013話 やっぱり姉は有名人

 流斗は授業の合間の休み時間に、転校生らしく質問攻めにあっていた。

 好きな食べ物、得意な科目、彼女はいるか、選択科目で武術を選んだ理由等々。

 その中で一番多い質問は、意外なことに遥に関することだった。


 ――『神崎』。この名字はこの辺では意外と珍しいらしく、昨年この中学を卒業した遥と関係があるのか興味を持ったようだ。名字が同じぐらいで、普通は二人の関係性に興味を持つことなどないだろう。ならば、なぜクラスメイトたちは反応を示したのか。


 それは、遥がこの中学ではちょっとした有名人だからだ。


 成績優秀、容姿端麗、魔術の才能に溢れ、武術の達人でもある。その上、昨年までここの生徒会長をしていたのだ。遥はまさしく、この学園のアイドル的な存在だったのだろう。


 遥は誰にも愛されたことがないと言っていたが、それは彼女が高嶺の花であり、気軽に接しづらいということも関係しているのかもしれない。


 流斗は遥との関係を遠い親戚と答えておいた。


 遥は堂々と弟だと名乗ればいいと言っていたが、書類上、流斗は義弟ですらないし、急に弟が現れるのは変だということで、士道に親戚と名乗ることを薦められていたからだ。


「なんで急にこっちに来ることになったの?」と聞かれれば、表情を少し曇らせながら「家庭の事情で」と言えば深く追求されることはなかった。そこは計算通りだ。


 クラスメイトが多くの質問をしてくる中、椿姫がこちらを睨んでいることには、流斗は気づかないふりをした。


 午前の授業が終わると、みんなそれぞれに移動を始める。


 この学園には給食というものがなく、各自食堂に行くか、弁当を持参してくるかのどちらかである。半分くらいの生徒が食堂に向かう中、流斗は香織に作ってもらった弁当を取り出す。


 数名の弁当派のクラスメイトが、流斗に一緒に食べないかと誘ってくれた。

 しかし、そこで今まで我慢してきた憤りをぶつけるように、椿姫が絡んでくる。


「神崎流斗。あなたに少し話したいことがあるからついてきなさい」


 そう言って、椿姫が流斗の手を引く。


「なんの用だ? もしかして愛の告白か?」


 流斗が茶化すことで椿姫は顔を真っ赤にし、周りのクラスメイトが囃し立てる。


「そ、そんなわけないでしょう! あなたには、朝の件でまだまだ言い足りないことがありますの!」


 椿姫が声を荒げることで周りは静かになる。変わり身の早いやつらだ。保身に長けている。


「わざとじゃないって言っているだろ。しつこいやつだな」


 流斗はそう言うと弁当を持って、クラスメイトを壁にしながら教室を逃げ出した。


「みんな、お昼、誘ってくれてありがとう。悪いけど、また今度な」


 その際にクラスメイトへのフォローも忘れない。


「ちょ、ちょっとお待ちなさいな!」


 背後から椿姫の声が聞こえてくるが気にしない。ああいうタイプに関わってしまうと、後でろくなことにならない気がするからだ。面倒なことに巻き込まれるのは嫌だからな。


 結局、椿姫があの後もしつこく追いかけてきたせいで、弁当を持ちながら走り回るはめになった。その後、なんとか椿姫を撒いた流斗は、屋上にて一人で昼食を取る。


 屋上は手の込んだガーデニングで彩られていて、ベンチには少なくはない生徒が座っていた。落下防止のために備え付けられた柵の向こうでは、この学園全体を見渡すことができ、遥の通う御園高校も小さく見える。


 流斗は屋上の隅に座って弁当を食べた。弁当は香織が作ったものなので美味しい。

 走り回ったせいで中身が多少散乱してはいたが。


 昼食を取り終えて少し風に当たっていたところで、屋上のスピーカーから放送が流れる。


『えー、二年四組の神崎流斗君。昼食が済んでいたら職員室まで来てください。繰り返します。二年四組の神崎流斗君は昼食が済み次第、職員室まで来てください』


「この声、茜先生か」


 一体なんの用だろう。流斗は弁当の包みを持ったまま職員室へと向かった。


 ◇ ◇ ◇


「神崎、選択科目はもう決めたか?」


 職員室に着くと、茜に開口一番そう聞かれた。椅子に片足を乗せて腕をもたれさせながら。完全に気が抜けている。初めて出会ったときとは、態度も言葉遣いも全然違った。


 どうやら、流斗の前で猫を被ることは早々に諦めたようだ。


「はい。自己紹介でも言った通り、《武術》を履修しようと思っています」

「そうか。すでに決まっているなら、午後の選択授業に今日から参加しろ」

「今日からですか?」


 流斗は戸惑いを露わにする。


「なんだ? まだ準備ができていないのか?」

「いえ、一応……道着は持ってきていますけど」

「なら問題ないだろ。今から案内してやるからついてこい」

「はぁ……」

「情けない声を出すな」


 流斗の脳裏に頭を握り潰されそうになったことがよぎる。


「は、はい!」


 流斗は勢いよく返事をした。


(それにしてもいきなりだな。姉さんが、たぶん明日からだと思うけど一応、って道着を持たせてくれて助かったよ)


 職員室を茜と一緒に出て、武術の授業が行われている場所へと向かう。


「ところで、なんでお前は弁当箱を持っているんだ?」


 茜が流斗の右手にある弁当箱を見て言った。


「まぁ、いろいろありまして」


 まさか、また椿姫と一悶着起こしていたとは口が裂けても言えない。言えばどうなるかは目に見えている。


「どうせ教室に行って道着を取ってこなくてはならんのだろう? さっさと行くぞ」


 流斗は茜とともに一度自分の教室に戻った。


「ところで先生、武術の授業はどこで行われるのですか?」

「地下格闘場だ」

「地下? この学園の地下にそんなものがあるんですか?」

「入学案内書くらいちゃんと読んでおけ」


 すっかり言葉遣いが変わってしまった茜と一緒に、流斗は地下格闘場に向かった。

日刊ローファンタジー68位ありがとうございます(*´ω`*)

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