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『目指すは最強! ~魔法オタクの異世界無双~』  作者: 穂乃果
第5幕 青銀の魔女、世界を巡る!
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第46話「魔術師団長は、魔術が大好きでした!?」

ついに魔族国の王都ヴァルディアへ!


今回登場するのは、魔族国第一魔術師団長、シルキー・リーン!


魔族国随一の魔術師にして、魔術が大好きな天才少女です。


そんな彼女と、魔術研究に目がないセリスが出会ったら……?


果たして、どんな化学反応が起こるのでしょうか?


魔術オタク二人の初対面、お楽しみください!


挿絵(By みてみん)

 魔族国に来て、三日目。


 ……もう、最高ですっ!!


 昨日は魔道具を見て、街の仕組みを調べて、美味しいものをいっぱい食べた。


 そして今日は、いよいよ魔族国の王都ヴァルディアへ向かう。


 しかも、そこには魔族国随一の魔術師がいるらしい。


 ……ふふふ。


 楽しみすぎて、昨日はなかなか眠れなかった。


「セリス、顔がにやけてるわよ」


「えっ!? そんなことないですよ!」


「そう? さっきからずっと笑ってるけど」


 ルシャナさんが呆れたように笑う。


 私の肩では、エルとレイがぷるぷる揺れていた。


 ……二人とも、楽しみなのかな?


 だったら嬉しいな!


 ベルガントで朝食の月包みを買い、私たちは王都へ向かう馬車に乗り込んだ。


 道中にも、面白いものがいっぱいあった。


 街道沿いに並ぶ魔道灯は、一本ずつ独立しているわけではなく、地中の魔力回路でつながっているらしい。


 しかも、一つが故障しても周囲の魔道灯が魔力の流れを調整して、明かりを維持する仕組みになっていた。


 ……すごい。


 王国の魔道具は、決められた働きを安定して再現することに優れている。


 一方、魔族国の魔道具は、状況に応じて魔力の流れを変化させることに長けている。


 どちらも素晴らしい技術だ。


 でも、魔族国の魔術は、私の研究にとって特に興味深かった。


 だって、魔力の流れを変えるってことは、現象の成立条件そのものを調整している可能性があるんだもの!


「……セリス?」


「はいっ!」


「また何か考えてたでしょう?」


「はいっ! 魔道灯の魔力回路についてです!」


「……やっぱりね」


 ルシャナさんは苦笑して、窓の外へ目を向けた。


「ほら。そろそろ見えてくるわよ」


「えっ!?」


 私は身を乗り出した。


 そして。


「……わあああああっ!!」


 見えた。


 巨大な城壁に囲まれた、魔族国の王都。


 ヴァルディア。


 空中には幾重もの魔法陣が浮かび、建物と建物の間には魔力で支えられた橋が架かっている。


 街の中心には巨大な塔がそびえ、そこから何本もの光の筋が街全体へ伸びていた。


 ……魔力供給網?


 いや、それだけじゃない。


 光の流れが、時間とともに変化している。


 各区画の魔力需要を見ながら、供給量を調整しているのかもしれない。


 ……うわあ。


 これ、全部調べたい!


「ルシャナさん! あの塔って何ですか!?」


「王都の魔力供給を管理する施設だったと思うわ」


「じゃあ、あの空中の魔法陣は!?」


「交通制御用じゃなかったかしら」


「その下の橋は!?」


「……セリス」


「はいっ!」


「まずは街に入りましょうね?」


「……はいっ!」


 ……しまった。


 まだ入城手続きも済んでなかった。


     ◇


 王都の門では、冒険者ギルドの登録証を提示して入城手続きを行った。


 ルシャナさんの登録証を見た門番さんが、ぎょっと目を見開く。


「ろ、六英雄のルシャナ様!?」


「あら。そんなに驚かなくてもいいのに」


「し、失礼しました! どうぞお通りください!」


 ……六英雄って、やっぱりすごいんだなあ。


 私も登録証を見せ、問題なく入城できた。


 王都の中は、ベルガント以上に賑やかだった。


 空を飛ぶ魔族の人たち。


 魔力で荷物を運ぶ商人さん。


 自動で動く清掃用の魔道具。


 建物の壁には複雑な魔法陣が刻まれ、その一部が絶えず形を変えている。


 ……あああ。


 見たい。


 触りたい。


 分解して調べたい!


「分解は駄目よ?」


「……まだ何も言ってません!」


「顔に書いてあるわ」


 ……そんなに分かりやすいのかな、私。


 ルシャナさんに連れられて向かったのは、王都の中心部にある大きな建物だった。


 魔族国第一魔術師団、本部。


 入口には立派な紋章が掲げられ、建物全体を覆うように何層もの魔法陣が展開されている。


 ……すごい。


 防御結界だ。


 でも、魔法障壁と物理障壁が別々に組まれている。


 魔術の顕現を阻害する層と、実体の侵入を防ぐ層。


 それぞれの働きを独立させているから、片方に負荷がかかっても、もう片方を維持できるんだ。


 ……合理的!


「……セリス?」


「はいっ!」


「今度は何を見てるの?」


「結界です! あの魔法陣、すっごく綺麗に組まれてます!」


「……そう」


 ルシャナさんが、なぜか少し嬉しそうに笑った。


「きっと、あの子とも気が合うわね」


     ◇


「ルシャナさまあああああっ!!」


 魔術師団の訓練場へ案内された瞬間、元気いっぱいの声が響いた。


 ぱたぱたと駆け寄ってきたのは、小柄な女の子だった。


 金色の髪。


 頭には小さな漆黒の角が二本。


 白と赤を基調とした華やかな衣装をまとい、宝石のついた杖を握っている。


 その足元には、艶やかな黒猫が一匹。


「お久しぶりなのですっ!!」


「あら、シルキー。元気そうね」


「もちろん元気なのです! ルシャナ様こそ、お変わりなくて何よりなのです!」


 女の子は胸を張った。


「ふふーん♪ わたくし、今日も絶好調なのです!」


 ……可愛い。


 見た目は十四歳くらいかな?


 でも、この人が……?


「紹介するわね。魔族国第一魔術師団長、シルキー・リーン。私の古い友人よ」


「えっ!?」


 私は思わず声を上げた。


「この人が、魔術師団長さん!?」


「えっへん! そうなのです!」


 シルキーさんは得意げに杖を掲げた。


「魔族国第一魔術師団長、シルキー・リーンなのです! よろしくお願いするのです!」


「あっ! セリスです! よろしくお願いします!」


「セリスさんですね! ルシャナ様からお話は聞いているのです!」


「えっ!? どんなお話ですか!?」


「魔術が大好きで、とっても面白い方だと!」


 ……あっ。


 それなら嬉しい!


 足元の黒猫が、にゃあと鳴いた。


「あ、この子はノルなのです! わたくしの大切な使い魔なのですよ!」


「ノルちゃん! 可愛いですね!」


「にゃあ」


 ノルちゃんは私をじっと見つめ、それからシルキーさんの足元へ戻った。


 ……賢そうな子だなあ。


「さて!」


 シルキーさんが杖をくるりと回した。


「せっかく来ていただいたのです! わたくしの魔術をお見せするのです!」


「本当ですかっ!?」


「ふふーん♪ もちろんです!」


 ……やったあああ!!


     ◇


 訓練場の奥には、無数の標的が並んでいた。


 シルキーさんが杖を掲げる。


 すると、空中に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「《雷帝の顕現》!」


 ――ゴロロロロロ……!!


 頭上に黒雲が生まれた。


 紫金色の雷光が雲の中を走り、次の瞬間、無数の稲妻が標的へ降り注ぐ。


 ――ズガガガガガガン!!


「わあああああっ!!」


 すごい!


 雷の出力もすごいけど、それ以上に制御が綺麗だ!


 標的の位置に合わせて放電経路を調整している。


 しかも、周囲の魔力場への影響が最小限になるよう、位相まで揃えている。


 ……なんて精密なんだろう!


「まだまだいくのです!」


 シルキーさんが杖を振る。


「《連鎖の雷華》!」


 一本の雷光が標的を貫いた。


 そこから枝分かれした雷が、別の標的へ。


 さらに次の標的へ。


 ――バヂヂヂヂッ!!


 雷光が花のように広がり、訓練場を駆け巡る。


 ……あれ?


 今、雷の流れ方が変わった。


 標的ごとに電位差を調整している?


 いや、魔力で放電経路そのものを指定しているのかな?


 ……どっちだろう。


 気になる!


 最後にシルキーさんが杖を軽く掲げると、残っていた雷光が透明な結界へ吸い込まれるように消えた。


「《雷光の結界》なのです!」


 ……すごい。


 攻撃と防御の切り替えまで、ほとんど隙がない。


「ふふーん♪ いかがでしたか?」


「すっっっごいです!!」


 私は思わず駆け寄った。


「さっきの《連鎖の雷華》! 標的ごとに放電経路を変えてましたよね!? あれって、魔力位相の調整ですか!? それとも電位差そのものを操作してるんですか!?」


「……!」


 シルキーさんの瞳が輝いた。


「そこに気づくとは、お目が高いのです!」


「教えてくださいっ!」


「もちろんです! まず、魔力位相を標的ごとに調整して、放電の方向を制御しているのです! ただし、電位差の形成も補助的に利用しているのですよ!」


「やっぱり!!」


 ……面白い!


 魔力による現象制御と、物理的な放電条件の操作。


 その両方を使っているんだ!


「シルキーさん!」


「はいっ!」


「私も、一つ試してみていいですか!?」


「もちろんです! どんな魔術なのです?」


「えっと……雷を、別の方法で作れないかなって!」


「……別の方法?」


 シルキーさんが首を傾げた。


 私は頷いた。


「はいっ! 雷そのものを顕現させるんじゃなくて、雷が生まれる条件を作るんです!」


     ◇


 雷は、電荷が移動することで生じる現象だ。


 電位差があれば、電荷は移動しようとする。


 そして、磁場が時間とともに変化すると、電場が生まれる。


 ……つまり。


 磁場を操作すれば、電気の流れを作ることもできる。


 もちろん、それだけで大きな放電が起こるわけじゃない。


 十分な電位差と、放電が成立する条件が必要だ。


 でも、それなら。


 その条件を、魔術で整えればいい!


「……磁場?」


 シルキーさんが首を傾げた。


「それは何なのです?」


「磁石の周りにある、目には見えない力の場です!」


「ああ、磁石なのですね!」


「はいっ! それを変化させると、電気に影響を与えられるんです!」


「……なるほど?」


 私は両手を広げた。


 まず、空間に磁場を形成する。


 その磁場を変化させ、電場を誘導する。


 さらに電荷の分布を調整し、放電が起こる条件を整える。


 ……よし。


 これなら。


「《マグネティック・フィールド》!」


 ――キィィィィン……!


 私の両手の間に、青白い光が瞬いた。


 次の瞬間。


 ――バヂィッ!!


 小さな稲妻が走った。


「……っ!?」


 シルキーさんが目を見開いた。


「……雷魔術?」


「はいっ! でも、雷そのものを顕現させたわけじゃないんです!」


「……どういうことなのです?」


「磁場を変化させて、電気が流れる条件を作りました!」


「…………!」


 シルキーさんは、青白い稲妻をじっと見つめた。


 そして。


「……魔術で、雷を作るのではなく」


「はいっ!」


「雷が生まれる仕組みを、魔術で再現したのですか!?」


「そうですっ!!」


「……!」


 シルキーさんの表情が変わった。


「……面白い」


「えっ?」


「面白いのですっ!!」


 彼女が勢いよく私の手を握った。


「では、その磁場というものを、わたくしの雷魔術でさらに変化させたらどうなるのです!?」


「……あっ!」


 私は思わず声を上げた。


「それ、すっごく面白そうです!!」


「ふふーん♪ でしょう!?」


 ……すごい。


 シルキーさん、もう次の応用を考えてる!


 だったら。


 だったら、もっと面白いことができるかもしれない!


「……あっ!」


 私は訓練場の隅に置かれた金属製の試験片を見つめた。


 電流。


 磁場。


 そして、力。


 ……そうだ。


 電流が流れる導体には、磁場によって力が働く。


 だったら。


 それを使って、物を加速したら?


「シルキーさん!」


「はいっ!」


「今度は、雷で物を飛ばしてみませんか!?」


「……はい?」


     ◇


「雷で、物を飛ばす……?」


 シルキーさんが首を傾げる。


「雷撃で吹き飛ばすのですか?」


「いえ! 雷を直接ぶつけるんじゃないんです!」


 私は金属製の試験片を手に取った。


「電流と磁場を利用して、物体そのものを加速するんです!」


「……物体を?」


「はいっ!」


 ……ふふふ。


 これ、できたら面白いぞ!


 ただし、普通に金属を飛ばすだけなら、魔術で押し出すのと変わらない。


 大切なのは、電磁力によって加速する仕組みを再現すること。


 私は魔力で二本の導体を形成し、その間に試験片を配置した。試験片を通して二本の導体の間に電流が流れるよう、魔力で接触状態を維持する。


 実際の金属レールではない。


 導電性を持つ状態を、魔術で維持している。


 そして、その仕組みに電流を流す。


「……なるほど!」


 シルキーさんが声を上げた。


「その二本の間に電流を流し、磁場との相互作用で物体を押し出すのですね!?」


「そうですっ!」


「ですが、そのままでは電流が不安定になるのです!」


「……あっ!」


 確かに。


 試験片の接触状態が変化すれば、電流も乱れる。


 魔力で形成した導体も、発射時の負荷に耐えなければならない。


「でしたら、わたくしが電流を制御するのです!」


「お願いしますっ!」


「えっへん! お任せなのです!」


 シルキーさんが杖を掲げた。


 紫金色の雷光が、私の術式へ流れ込む。


 ……うわあ。


 すごい精度!


 電流の変化に合わせて、魔力位相を瞬時に調整している。


 私が形成した磁場と、シルキーさんの雷魔術。


 二つの術式が、綺麗につながった。


「……いけます!」


「はいなのです!」


 私は訓練場の奥を見た。


 標的までの距離を確認する。


 射線上に人はいない。


 周囲には防御結界も展開されている。


 ……でも。


 念のため、威力は小さくしておこう。


「シルキーさん! まずは低出力で試します!」


「了解なのです!」


 私は術式を起動した。


「《電磁加速砲》!」


 ――バシュッ!!


 金属片が飛び出した。


 そして。


 ――ドンッ!!


 標的の中央に、小さな穴が開いた。


「…………」


「…………」


 ……あ。


 できた。


「……飛びましたね?」


「……飛んだのです」


「……やりましたね?」


「……やったのです」


 私たちは顔を見合わせた。


「「やったああああああっ!!」」


 ……すごい!


 本当に飛んだ!


 魔術で物体を押し出したんじゃない。


 電流と磁場によって、物理的に加速したんだ!


「セリスさん! これは素晴らしいのです!」


「シルキーさんの雷制御のおかげです!」


「いえいえ! そもそも電流を物体の加速に使うという発想が素晴らしいのです!」


 ……ああ。


 楽しい!


 魔術って、本当に面白い!


「……ところで、セリスさん」


「はいっ!」


 シルキーさんが、穴の開いた標的を見つめた。


「今の攻撃、最後まで魔術だったのですか?」


「えっ?」


「金属片が飛び出した後、魔力の反応が急に消えたのです」


「……ああ!」


 私は頷いた。


「発射した後は、普通の金属片ですよ!」


「……普通の?」


「はいっ! 魔術で加速しただけなので!」


 シルキーさんが黙り込んだ。


 そして、ゆっくりと訓練場の結界へ目を向ける。


「……ということは」


「はい?」


「魔法障壁で顕現を阻害しても、発射後の金属片は消えないのですか?」


「……あっ!」


 そうだ。


 魔法障壁は、魔術による現象の顕現を阻害する。


 でも、すでに存在している金属片が飛んでくるなら、話は別だ。


 それは魔術ではなく、物理的な運動。


 防ぐなら、物理障壁が必要になる。


「……そうですね!」


「…………!」


 シルキーさんの瞳が、再び大きく見開かれた。


「……セリスさん」


「はいっ!」


「これは、魔術師にとって非常に厄介な攻撃なのです」


「……そうなんですか?」


「そうなのです! 魔力反応を見て魔法障壁を張った相手に、物理攻撃が飛んでくるのですから!」


「……ああ!」


 なるほど。


 確かに、防御の種類を間違えたら危ない。


「だったら、物理障壁も一緒に張ればいいですね!」


「……それが簡単にできれば苦労しないのです!」


 ……あれ?


 シルキーさん、なんだか嬉しそうだ。


「ふふふ……!」


「……シルキーさん?」


「ふふーん♪ 面白いのです!」


 彼女は杖を掲げた。


「では、次はわたくしが、この攻撃を防ぐ術式を考えるのです!」


「えっ!? いいんですか!?」


「もちろんです! 新しい魔術が生まれたなら、新しい防御も研究するべきなのです!」


「……!!」


 ……すごい。


 この人、本当に魔術が大好きなんだ!


     ◇


「……ところで、セリスさん」


 しばらく術式について話し合ったあと、シルキーさんが不思議そうに首を傾げた。


「先ほどから気になっていたのですが……」


「はいっ!」


「セリスさんの魔術は、どうしてそんなに自由なのです?」


「……自由?」


「はい。普通、魔術には術式の構造と適性があるのです。雷魔術なら雷を、氷魔術なら氷を顕現させるのです」


「はい!」


「ですが、セリスさんは磁場を作り、電場を生み、さらに物体の加速まで再現してしまったのです」


 シルキーさんが私の術式を指さした。


「いったい、どんな理論を使っているのです?」


 ……ああ!


 なるほど!


「万物方程式です!」


「……ばんぶつ、ほうていしき?」


「はいっ!」


 私は嬉しくなって頷いた。


「世界のいろんな現象を、一つの仕組みで説明できないかなって考えたんです!」


「……世界の、いろんな現象?」


「はい! 物が動くことも、雷が走ることも、魔術が発動することも!」


「…………」


「それぞれ別々に見えても、もっと根っこのところでは、つながっているんじゃないかなって!」


 シルキーさんは黙って聞いている。


 ……あれ?


 説明、難しかったかな?


「えっと、たとえば《インパクト》ってありますよね?」


「もちろんあるのです。初級の衝撃魔法なのです!」


「はいっ! でも、どうして衝撃が生まれるんでしょう?」


「……え?」


「物がぶつかったとき、何が起こっているのか。力って何なのか。どうして動いていた物が止まると、衝撃が生まれるのか」


 私は手のひらを見つめた。


「そういうことを一つずつ考えていくと、魔術で何を再現しているのか、もっと詳しく分かるんです!」


「……なるほど」


「そして、現象の仕組みが分かれば、その現象が成立する条件を魔術で再現できるんです!」


「…………!」


 シルキーさんの表情が変わった。


「……それは」


「はい?」


「魔術の術式を研究しているのではなく……」


 彼女が、ゆっくりと言葉を続けた。


「魔術が現象を生み出す、その前の仕組みを研究しているのですか?」


「……!」


 私は思わず笑顔になった。


「そうですっ!!」


 ……すごい!


 伝わった!


 こんなにすぐ理解してもらえるなんて!


「万物方程式の中には、魔術の顕現を説明する式もあるんです。私は《共鳴顕現方程式》って呼んでます!」


「……共鳴、顕現……」


「はいっ! 世界には、いろんな現象が起こり得る可能性があるんです。その中から、望む現象が成立する条件を見つけて、共鳴させるんですよ!」


「…………」


 シルキーさんは、じっと私を見つめた。


 ……あれ?


 今度こそ、難しかったかな?


「……セリスさん」


「はいっ!」


「その理論は、どなたに教わったのです?」


「え? 自分で考えましたよ?」


「…………はい?」


「ずっと前から、こういうことを考えるのが好きだったんです!」


「……ずっと、前から?」


「はいっ!」


 私は笑った。


「だって、世界の仕組みって、面白いじゃないですか!」


 シルキーさんはしばらく黙っていた。


 それから、ふっと笑った。


「……ふふ」


「……?」


「ふふーん♪」


 そして。


「わたくし、その方程式をもっと知りたいのです!!」


「……!!」


 ……やったああああ!!


「もちろんですっ!!」


「では、まず先ほどの電磁加速の術式から、詳しく教えてほしいのです!」


「はいっ! その前に、電磁気学の基本から説明しますね!」


「でんじきがく……!」


 シルキーさんの瞳が、きらきらと輝いている。


「面白そうなのですっ!!」


 ……ああ。


 本当に、最高だ。


 この世界には、まだ知らない魔術がいっぱいある。


 試してみたい現象も、調べたい仕組みも、数えきれないほどある。


 そして今、こうして一緒に考えてくれる人までいる。


 ……来てよかったなあ。


「……二人とも?」


 背後から、ルシャナさんの声が聞こえた。


「はいっ!」


「はいなのですっ!」


「……そろそろ休憩しない?」


 私はシルキーさんを見た。


 シルキーさんも、私を見た。


「……あと少しだけ!」


「あと少しなのです!」


「……その『あと少し』、信用できないのよねえ」


 ルシャナさんが深いため息をついた。


 足元ではノルちゃんが尻尾を揺らし、私の肩ではエルとレイがぷるぷる震えている。


 ……あっ。


 そうだ。


 次は、もっと強い磁場を作ってみようかな。


 それから、氷魔術で温度を下げたら、電流の流れ方も変わるかもしれない。


 材料によっては、超伝導だって再現できるかも……!


「……シルキーさん!」


「はいっ!」


「次は、氷魔術も組み合わせてみませんか!?」


「……氷魔術を、雷魔術に?」


「はいっ!」


「…………!」


 シルキーさんの口元が、ゆっくりと上がった。


「……ふふーん♪」


 ……あ。


 この顔。


 きっと、同じこと考えてる。


「「面白そうですっ!!」」


「……もう駄目ね、この二人」


 ルシャナさんの呟きが聞こえたけれど。


 ごめんなさい。


 今は、それどころじゃないんです!


 だって。


 魔術って、こんなに面白いんですから!!

魔術オタク、二人になりました!(笑)


雷魔術を極めたシルキーと、世界の仕組みから魔術を考えるセリス。


同じ現象を見ても、二人の着眼点は少し違います。


そして今回、二人の共同研究から誕生したのが《電磁加速砲》!


魔術で物体を加速し、最後は純粋な物理攻撃として命中させる。


魔法障壁と物理障壁が存在するこの世界では、実はかなり厄介な発想だったりします。


さらに、セリスの口から初めて語られた《万物方程式》。


彼女はいったい、世界の何を理解しているのでしょうか?


そして次回は、雷魔術に氷魔術まで組み合わせる……!?


ルシャナの苦労がますます増えそうですが(笑)、二人の魔術研究はまだまだ止まりません!


次回もお楽しみに!

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