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『目指すは最強! ~魔法オタクの異世界無双~』  作者: 穂乃果
第5幕 青銀の魔女、世界を巡る!
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第45話「魔族国って、こんなに面白いんですか!?」

ついにヴァルゼリア魔導国へやってきたセリスたち!


初めて見る魔族の街には、不思議な魔道具、美味しそうな料理、そして未知の魔術がいっぱい!


研究者セリスにとって、ここはまさに夢のような場所。


さて、今日はどんな発見が待っているのでしょうか?

 ……浮いてる。


 目の前で、荷物を載せた木箱が浮いている。それも、ただふわふわ漂っているんじゃない。人の腰くらいの高さを保ったまま、店先をすいーっと横切っているのだ。


「……ルシャナさん」


「なあに、セリスちゃん?」


「あれ、見ました?」


「ええ。荷物を運んでいるわね」


「そうじゃなくて!」


 私は思わず木箱を指さした。


「魔道具です! あの木箱の下についてるの、魔道具ですよね!?」


「そうみたいね」


「見てきてもいいですか!?」


「ふふ。ええ、行きましょうか」


 やった!


 私はエルとレイを連れて、さっそく店先へ駆け寄った。


 ここは、ヴァルゼリア魔導国の国境交易都市、ベルガント。ついさっき国境を越えたばかりの私たちは、宿を探す前に、すっかり街の賑わいに足を止められていた。


 だって、仕方ないじゃないですか。見たことのないものが、あっちにもこっちにもあるんですから!


「おっ、嬢ちゃん。何か探してるのかい?」


 店先で荷物を整理していた、がっしりした体格のおじさんが声をかけてくれた。額からは短い角が二本伸びている。


 ……おお。角だ。ちゃんと生えてる。

……触ってみたい。


 いやいや、初対面の人にそんなこと聞いちゃダメですよね。


「こんにちは! あの、浮いてる荷物って、魔道具で動かしてるんですか?」


「おう。浮遊運搬台だよ」


「浮遊運搬台!」


 いい名前!


「ちょっと見せてもらってもいいですか!?」


「構わねえよ。触るなら、そっちの持ち手にな」


「ありがとうございますっ!」


 私は運搬台に近づいた。


 木製の台の四隅には小さな金属板が取り付けられ、中央には魔石が埋め込まれている。その周囲を、細い魔力の流れが巡っていた。


 ……ん?


 私は首を傾げた。魔力が揺れている。でも、不安定というわけじゃない。流れの形そのものが、ゆっくりと変わっているのだ。


「おじさん、これって……高さを変えられるんですか?」


「もちろんだ。ほれ」


 おじさんが持ち手の輪をひねると、運搬台がすうっと上昇した。今度は輪を戻すと、ゆっくり元の高さへ下がっていく。


「わああっ! 高さが変わった!」


「荷物が重いときは低く、軽いときは高くできる。坂道じゃ傾きも調整できるぜ」


「傾きまで!?」


「やってみるかい?」


「いいんですかっ!?」


 おじさんが操作方法を教えてくれたので、私は持ち手を握った。


 そっと輪をひねる。


 すうっ。


「おおおおっ!」


 逆に回す。


 すとん。


「わあああっ!」


 ……楽しい! これ、すっごく楽しい!


 もう一度、今度は少しだけ操作を変えてみた。すると台が斜めになりかけ、載せてあった木箱がずるりと動く。


「あっ!」


 ところが、木箱が滑り落ちる前に台がぴたりと止まり、ゆっくり水平へ戻っていった。


「おっと。そっから先は安全装置が働くんだ」


「安全装置!?」


「荷物が落ちちゃ商売にならねえからな」


 ……なるほど!


 私は台の下を覗き込んだ。


 魔力の流れが一瞬だけ変わり、傾きを戻す方向へ干渉波が形成されている。つまり、操作する人が間違えても、危険な状態に入りにくいようにしてあるんだ。


 ……すごい。


 ただ浮かせるだけじゃない。使う人のことまで考えて作られている。


「ルシャナさん! これ、すっごいですよ!」


「あら。王国にも浮遊する魔道具はあるでしょう?」


「あります! でも、作り方が違うんです!」


 私は思わず振り返った。


「王国式の魔道具って、基本的には決められた働きを安定して繰り返すように作るんです。例えば、荷物を一定の高さに浮かせるとか!」


「ええ」


「でも、これは違います! 魔力の流れを変えることで、浮く高さも、傾きも、動き方も変えられるんですよ!」


「……なるほど。決まった動きをするんじゃなくて、使う人に合わせて動きを変えるのね?」


「そうですっ!」


 さすがルシャナさん! 理解が早い!


「魔術って、魔力で干渉波を作って、起こしたい現象へ可能性を集めるでしょう?」


「ええ。セリスちゃんが教えてくれたお話ね」


「王国式は、その集め方を決まった形にして、何度でも同じ結果が出るようにするのが得意なんです!」


 私は運搬台を指さした。


「でも、こっちは集め方そのものを、動かしながら調整してるんです! 同じ浮遊魔術なのに、こんな使い方ができるなんて!」


「ふふ。楽器の調律みたいね」


「……あっ!」


 私は手を打った。


「そうです! まさにそれです!」


 ルシャナさんは竪琴を抱え直した。


「決まった音を鳴らす仕組みと、弦の張り方を変えて音色を調整する仕組み、という感じかしら?」


「はいっ! 王国式は誰が使っても同じ働きをさせやすいし、魔族国式はいろんな働きに合わせやすいんです!」


「どちらにも、いいところがあるのね」


「そうなんですよぉ! ただ、可変式は調整が難しそうですね。王国式の方が、同じ性能を安定して出すのは得意なのかも!」


 私はもう一度、運搬台の魔力の流れを眺めた。


 同じ魔術なのに、発想が違う。しかも、こんなに身近な道具にまで使われているなんて!


 ……ああ、楽しい!


「嬢ちゃん、ずいぶん詳しいなあ」


 おじさんが感心したように言った。


「魔道具が好きなのかい?」


「大好きですっ!」


「はっはっは! そりゃいい!」


 おじさんは嬉しそうに笑った。


「ただな、こいつは便利だが、調整が難しくてな。昔の型は、慣れねえ奴が使うと荷物をひっくり返すこともあったんだ」


「そうなんですか!?」


「今じゃ工房の連中が改良してくれて、ずいぶん扱いやすくなったけどな」


 私はもう一度、運搬台を見た。


 魔力の流れを自在に変える。それだけなら、理屈は分かる。でも、それを誰でも使える道具にするには、また別の工夫が必要なんだ。


 ……うん。


「作った職人さん、すごいですね!」


「おうよ。ベルガントの職人は腕がいいぜ!」


 おじさんが胸を張った。自分が作ったわけでもないのに、なんだか嬉しそうだ。


 ……いいなあ、こういう街。


 私は運搬台をおじさんに返して、何度もお礼を言った。するとおじさんは、笑いながら市場の方を指さした。


「魔道具が好きなら、向こうの通りも見ていきな。面白いもんが山ほどあるぞ」


「本当ですか!?」


「おう。あと、腹が減ったら市場の串焼きも食ってけ。うまいぜ!」


 ……串焼き。


 私はぴたりと動きを止めた。


「……ルシャナさん」


「なあに?」


「行きましょう」


「魔道具を見に?」


「……串焼きを食べにです!」


「ふふ。そうね。そろそろお昼にしましょうか」


 やったあ!


 魔道具も見られて、串焼きも食べられる!


 魔族国、最高です!!


     ◇


 ベルガントの市場は、とにかく賑やかだった。


 石畳の広い通りには色とりどりの屋台が並び、焼いた肉や香辛料の匂いが風に乗って流れてくる。大きな角のある人、ふさふさした尻尾を揺らす人、背中に翼を持つ人。見た目も体格も違う人たちが、当たり前のように行き交っていた。


 しかも、建物まで面白い。


「あっ! ルシャナさん、あのお店、二階にも入口があります!」


「翼のある人たちが使うのね」


「なるほど!」


 地上の入口とは別に、二階の外壁から張り出した小さな足場がある。ちょうど翼のあるお客さんが、そこへふわりと降り立った。


 ……便利!


 ほかにも、尻尾を通せるよう背もたれに隙間のある椅子や、背の低い人でも使いやすい高さの違うカウンターがあった。


 誰か一種類の体格に合わせるんじゃなくて、いろんな人が使えるようにしてあるんだ。


 ……へええ。面白いなあ。


「ぷいっ!」


 エルが、私の肩の上で弾んだ。


「ん? どうしたの、エル?」


「ぷいっ! ぷいぷいっ!」


 エルが示している先には――


 じゅううううっ!


 大きな鉄板の上で、分厚い肉の串焼きが焼かれていた。脂が落ちるたびに炎が跳ね、香ばしい煙が立ち上る。


 ……。


 …………。


「……エル」


「ぷいっ!」


「よく見つけたね!」


 えらい! さすが私のエル!


「おっ、嬢ちゃんたち! 炎角串、一本どうだい!」


 店主さんが、焼き台の向こうから声をかけてきた。赤い香辛料をまぶした肉が、鉄板の上でこんがり焼けている。


「くださいっ!」


「一本、銅貨四枚だよ!」


 ……四枚。


 私は少しだけ考えた。王国の串焼きは一本銅貨三枚だから、こっちは一枚高い。


 ……でも。


 大きい。すっごく大きい。お肉の厚みが全然違う。


「……買います!」


「まいど!」


 焼きたての串を受け取る。


 熱い。いい匂い。……早く食べたい。


 ふう、ふう。


 ぱくっ。


「…………っ!」


 表面はかりっと香ばしく、その直後に熱い肉汁がじゅわっと広がった。噛むほどにお肉の旨味が濃くなり、鼻へ抜ける香辛料の香りを追いかけるように、じんわりとした辛味がやってくる。


 ……おいしい。


 これ、すっごくおいしい!


「ルシャナさんっ!」


「ええ。美味しいわね」


「銅貨四枚の価値、ありますっ!!」


「あら。厳しい審査だったのね」


「串焼きの価格は重要ですから!」


 ルシャナさんがくすくす笑った。


 ……だって、そうでしょう?


 金貨百枚が串焼き何本分になるか考えたときだって、私はちゃんと計算したんですよ!


 それが、この国では一本銅貨四枚。


 つまり――


 ……。


 …………。


 金貨百枚で、二十五万本。


 ……減った!


 王国より八万本以上も減った!!


「……物価の違いって、すごいですね」


「セリスちゃん?」


「いえ! 何でもありません!」


 私はもう一口、肉を頬張った。


 ……んんっ!


 でも、この大きさなら納得! むしろお得かもしれない!


 そう思いながら、ふと焼き台を見る。


 ……あれ?


 鉄板の右側だけ赤みが強く、左側は少し温度が低いようだ。しかも店主さんがつまみを回すたびに、熱の分布が滑らかに変わっている。


「……店主さん!」


「ん?」


「この焼き台、場所ごとに温度を変えられるんですか!?」


「おうよ。脂の多い肉と赤身じゃ、焼き方が違うからな」


「やっぱり!」


 私は思わず身を乗り出した。


「ルシャナさん! これも可変式です!」


「まあ。こんなところにも?」


「はいっ! 熱を出す場所も、強さも、連続的に調整できるんです!」


 ……すごい!


 浮遊運搬台だけじゃない。調理器具まで、こんなふうに作ってあるんだ!


「お嬢ちゃん、よく分かるなあ」


 店主さんがにやりと笑った。


「でもな、道具がよくても、焼き加減を見誤っちゃ台無しだぜ?」


「……あっ!」


 確かに。


 私は手元の串焼きを見た。こんがり焼けた表面に、中に閉じ込められた肉汁。香辛料の量もちょうどいい。


 ……そうか。


「店主さんの腕も、すっごいんですね!」


「おう! そっちは銅貨じゃ買えねえぞ!」


「えへへ! ごちそうさまです!」


 ……。


 …………。


「ところで店主さん」


「ん?」


「もう一本ください!」


「結局そっちかい!」


 ルシャナさんが、とうとう声を上げて笑った。


     ◇


 串焼きを二本食べたあとも、私たちは市場を歩き回った。


 ……楽しい。本当に、どこを見ても面白い。


 魔力で色を変えられる街灯、荷物の重さに合わせて高さが変わる棚、体格の違うお客さんでも座りやすいように座面を調整できる椅子。


 しかも、どれも魔術を使う人だけの道具じゃない。魔石に蓄えた魔力で動くものや、簡単な操作だけで使えるものが多かった。


 ……いいなあ。


 魔術を使える人が、使えない人のためにも道具を作る。魔術を知らない人でも、その便利さを享受できる。


 私が王国で魔力の可視化を研究していたのも、そういうことがしたかったからだ。


 ……うん。やっぱり、魔道具って素敵だ。


「あっ!」


 今度は、丸い鉄板の上で焼かれている薄い生地が目に入った。店主さんが生地を折り畳み、両面をこんがり焼いている。


 ……何だろう?


「ルシャナさん、あれ、美味しそうじゃないですか!?」


「月包みね。中にお肉や野菜、チーズを入れて焼くのよ」


「チーズ!」


 ……食べたい。


 でも、串焼きを二本食べたばかりだ。


「……明日、絶対食べます」


「ふふ。楽しみが増えたわね」


「はいっ!」


 そのとき、屋台の店主さんが焼き上がった月包みを半分に切った。


 ぱりっ。


 中から、白いチーズがとろーりと伸びる。


 ……。


 …………。


「……やっぱり、一個だけ」


「セリスちゃん?」


「は、半分こしませんか!?」


「ええ、いいわよ」


 やったあ!


 受け取った月包みは、表面がぱりっとしていて、中の生地はもっちり。細かく刻まれた肉と野菜の旨味に、濃厚なチーズが絡みつく。


 ……おいしい。串焼きとは、また違う美味しさだ。


「ぷいっ!」


「ぷるん」


 エルとレイも興味津々だったので、食べられる部分を少し分けてあげた。二匹とも、嬉しそうにぷるぷるしている。


 ……ふふ。よかったね。


 ルアールも、ルシャナさんの肩の近くで楽しそうに私たちを眺めていた。


     ◇


 宿を決めたころには、すっかり夕方になっていた。


 ベルガントの通りに橙色の灯りがともり始める。魔道具の街灯は、空が暗くなるにつれて少しずつ明るさを増していった。


 ……ああ。これも可変式なんだ。


 今日は、いくつ見つけたかな。


 数えようとして――やめた。


 だって、まだまだ見つかりそうなんだもん!


「セリスちゃん。夕食はどうしましょうか?」


「……食べます!」


「ふふ。元気ね」


 当然です!


 串焼きと月包みは、あくまで食べ歩きですから! 夕食は別です!


 ……というわけで。


 宿の食堂で注文したのは、ベルガント名物の黒煮込み。


 運ばれてきた鍋を見て、私は思わず目を丸くした。


「……黒い!」


 名前の通り、煮汁は黒に近い濃い焦げ茶色。大きな肉の塊と柔らかそうな根菜がごろごろ入っていて、湯気と一緒に香草と煮込んだ肉の匂いが立ち上ってくる。


 ……これは、絶対に美味しいやつ!


 スプーンを入れる。


 ほろっ。


「……えっ?」


 お肉が、ほとんど力を入れていないのにほぐれた。


 私はそのまま、ひと口食べた。


「…………!」


 濃厚な旨味が口いっぱいに広がった。長く煮込んだお肉は驚くほど柔らかく、野菜の甘みと香草の香りに、ほんの少しの酸味が重なっている。


 ……ああ。これ、パンに合う。


 絶対に合う!


 私は添えられたパンをちぎって、煮汁につけた。


 ぱくっ。


「……んんんっ!」


 美味しい! パンが濃厚な煮汁を吸って、噛むたびに旨味が広がる!


「ルシャナさん!」


「ええ。パンにもよく合うわね」


「もう一個、頼んでもいいですか!?」


「ふふ。どうぞ」


 ……幸せ。


 魔族国のご飯、美味しすぎませんか!?


 そのあと、私は琥珀色の蜜をかけた焼き菓子まで食べた。さくさくの薄い生地に、とろりとした温かいクリーム。焦がし蜜の香ばしさがたまらない。


 ……これは危険だ。


 食後なのに、もう一個食べられそう。


 ……いや。さすがに今日は、やめておこう。


 私はお腹をさすりながら、満足のため息をついた。


「……魔族国、すごいですねえ」


「気に入った?」


「はいっ! 魔道具も面白いし、ご飯も美味しいし!」


 私は今日見たものを思い返した。


 浮遊運搬台、焼き台、街灯、椅子。どれも王国ではあまり見かけない作り方だった。


「……それに、魔術の使い方が、本当に面白いんです」


「そうね。セリスちゃん、ずっと楽しそうだったわ」


「だって、同じ魔術なのに、こんなに違うんですよ!? 王国の魔術も大好きです! でも、魔族国の魔術も、もっともっと見てみたいです!」


「ええ」


「……あっ!」


 私は、ぱっと顔を上げた。


「そうだ!」


「どうしたの?」


「この国の、すっごい魔術師さんに会ってみたいです!」


「魔術師に?」


「はいっ! こんな魔道具を作れる国なんですよ!? 魔術を極めた人が、どんなことをするのか見てみたいんです!」


 すると、近くのテーブルを片付けていた食堂のおじさんが、こちらを振り向いた。


「お嬢ちゃん、魔術師に会いたいのかい?」


「はいっ!」


「そりゃあ、魔族国の魔術師の代表格といやあ、シルキー様だろうな」


「……シルキーさん?」


「おう。ヴァルゼリア魔導国の魔術師団長さ。首都ヴァルディアにいらっしゃる」


「魔術師団長!!」


 ……すごい!


 魔術師団長! 王国のネスラさんと同じように、魔術師たちをまとめている人なんだ!


「どんな魔術を使うんですか!?」


「そりゃあもう、俺なんかには説明できねえよ。とにかく、とんでもねえ魔術師だって話だ」


 ……っ!


 とんでもない魔術師。


 ……会いたい。すっごく会いたい!


「ルシャナさん! 私、そのシルキーさんに――」


「ええ。知っているわよ」


「……へ?」


 私は口を開けたまま固まった。


「……知ってる?」


「シルキーちゃんでしょう? 昔、一緒に冒険したことがあるの」


「えええええっ!?」


 ……えっ!? 何で!?


 いや、ルシャナさんは六英雄なんだから、すごい人を知っていてもおかしくないけど!


「ルシャナさん! シルキーさんって、どんな人なんですか!?」


「そうねえ。魔術の腕は確かよ。私も何度か助けてもらったわ」


「ルシャナさんが!?」


「ええ」


 ……すごい。


 あのルシャナさんが、助けてもらったって言うんだ。


「どんな冒険をしたんですか!?」


「ふふ。昔、ちょっとだけ悪い龍を懲らしめに行ったのよ?」


「……龍?」


 ……ちょっとだけ?


 龍を?


「ええ。なかなか手強い子だったわ」


「なかなか!?」


 私は思わず立ち上がりかけた。


「どんなドラゴンですか!? 大きかったですか!? 強かったですか!? シルキーさんはどんな魔術を使ったんですか!?」


 ルシャナさんは懐かしそうに目を細めた。


「……あの子も、相変わらず魔術が好きなのかしらね」


「えっ!? シルキーさんも魔術が大好きなんですか!?」


「ふふ。会えば分かるわ」


「ええええっ!? 気になりますぅぅぅ!!」


 ……ずるい!


 そんな話を聞かされたら、余計に会いたくなるじゃないですか!


「ルシャナさん!」


「なあに?」


「首都ヴァルディア、行きましょう!!」


「ええ。もともと旅の途中で寄るつもりだったし、いいわよ」


「やったあ!!」


「ただし、シルキーちゃんも忙しいでしょうから、会えるかどうかは確認してからね?」


「はいっ!!」


 ……よーし!


 次は、ヴァルディア! 魔族国の首都!


 そして、魔術師団長シルキーさん!


 いったい、どんな魔術を使うんだろう?


 ……ああ、もう! 考えるだけで、わくわくしてきた!


「セリスちゃん」


「はいっ!」


「明日の朝も、ベルガントの市場を見ていく?」


「……!」


 ……市場。


 串焼き。月包み。魔道具。


 ……。


 …………。


「もちろんですっ!!」


 ルシャナさんが楽しそうに笑った。


 ……えへへ。


 首都へ向かうのも楽しみだけど、ベルガントだってまだまだ見足りない。美味しいものも、面白いものも、きっと山ほどあるんだから!


 ……よーし!


 明日もいっぱい楽しむぞーっ!!

魔族国編、いよいよスタートです!


王国式は、決められた働きを安定して再現する魔術。


一方、魔族国式は、状況に合わせて働きを変化させる魔術。


同じ魔術でも、国が違えば発想も違う。そんな技術や文化の違いを楽しんでいただけたら嬉しいです!


……もっとも、セリスにとっては串焼きの物価も重大な研究対象のようですが(笑)


そして、新たに名前が登場した魔術師団長シルキー。


六英雄ルシャナと、かつて龍を相手に共闘したという彼女は、いったいどんな人物なのでしょうか?


次回も、セリスたちの魔族国での冒険をお楽しみに!

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