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『目指すは最強! ~魔法オタクの異世界無双~』  作者: 穂乃果
第5幕 青銀の魔女、世界を巡る!
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第43話「必殺!超ぉ!インパクトぉぉおお!」

英雄にも、始まりがある。


ルシャナが語ったアルディスの物語を胸に、セリスたちは魔族国へ向かいます。


ところが、近道に選んだ渓谷で待ち受けていたのは、なんとアースドラゴン25体!


六英雄の歌と、規格外研究者の魔術。


二人の初共闘で、いったい何が起こるのでしょうか?


 ――英雄にも、始まりがある。

 昨夜、ルシャナさんが歌ってくれたアルディスさんの物語は、今も私の胸に残っていた。


 レベル1の少年が、レベル15のホブゴブリンに挑む。


 勝てると信じていたのは、たった二人。

 99倍。


 そんなとんでもない倍率をつけられた少年が、相手の動きを読み、剣を振り、最後には魔法まで使って勝ってしまった。


 ……すごい。

 すごいなあ、アルディスさん。

 今のあの人が強いのは知っていたけれど、最初から強かったわけじゃなかったんだ。

 怖い相手にも挑んで、考えて、工夫して。

 それでも、まだ追いかけている人がいる。


「……会ってみたいなあ」


「誰にかしら?」


 隣を歩いていたルシャナさんが、こちらを向いた。


「《剣鬼》さんです!」


「まあ」


「アルディスさんがずっと憧れてる人なんですよね? どんな剣を使うんでしょう! やっぱり、すっごく速いんですか!?」


「それは、会えたときのお楽しみね」


「えええっ! ルシャナさん、知ってるんですか!?」


「どうかしら?」


「ずるいです!」


 ルシャナさんは楽しそうに笑った。


 ……むう。

 絶対、何か知ってる顔だ。

 でも、教えてくれないなら仕方ない。

 いつか本人に会って、直接聞いてみよう!


 それにしても、旅っていいなあ。

 知らない土地に行けば、知らない人がいて、知らない魔法があって。

 知らない物語まである。

 ……楽しみが多すぎる!


     ◇


 それから、数日が過ぎた。


 驚くほど、何事もなかった。


 本当に、何事も。

 朝起きて、ご飯を食べて、街道を歩いて。

 途中の町で美味しい焼き菓子を見つけたり、ルシャナさんに珍しい草花の名前を教えてもらったり。


 夜には宿を取って、時々、ルシャナさんの歌を聴いた。

 エルとレイは相変わらず元気いっぱいで、ルアールちゃんともすっかり仲良しだ。


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


 今日も二人は、私の肩と鞄を行ったり来たりしている。


 ルアールちゃんが水の輪を作ると、エルが勢いよく飛び込んだ。

 ぽちゃん。


「ぷいっ!」


「ふふ。上手ね」


 ……かわいい。

 すっごくかわいい。

 こんな平和な旅も、悪くないなあ。

 そう思っていたら。


「セリスちゃん。そろそろ街道を離れるわよ」


「はい?」


 ルシャナさんが指さした先には、山々の間へ続く細い道があった。

 その向こうには、巨大な岩壁が見える。


「魔族国との国境へ向かうなら、あの渓谷を抜けるのが近道なの」


「おおっ! 渓谷!」


「ただし、あまり人は通らないわ」


「どうしてですか?」


「魔物が棲んでいるからよ」


「……なるほど!」


 私は遠くの岩壁を見上げた。

 切り立った崖。

 ごつごつした岩山。

 その間を縫うように、細い道が続いている。

 ……いい。

 すっごく冒険っぽい!


「行きましょう、ルシャナさん!」


「ふふ。元気ねえ」


「だって、こんな場所、初めてです!」


「そうね。でも、油断はしないでちょうだい」


「はいっ!」


 私は大きく頷いた。

 ……よし。

 どんな魔物がいるんだろう?


     ◇


 渓谷に入って、しばらく。

 景色は、すっかり変わっていた。

 左右には、空を切り取るような高い岩壁。

 足元には、大小さまざまな石が転がっている。

 風が吹くたび、岩の隙間から低い音が響いた。


「……わあ」


 私は思わず立ち止まった。


「すっごい景色……!」


 見上げても、崖の上が遠い。

 岩肌には、何層もの縞模様が走っていた。

 赤茶色の層。

 灰色の層。

 ところどころに、きらきら光る鉱石まで見える。


「ルシャナさん! あの岩、見てください!」


「ええ。綺麗ね」


「あれ、地層ですよね!? この世界でも、こういうふうに積み重なるんだ……!」


 私は岩壁に駆け寄りかけた。


「セリスちゃん」


「はい?」


「足元」


「……あっ」


 目の前に、大きな足跡があった。


 人間のものじゃない。

 丸くて、深い。

 しかも、爪の跡が四つ。

 ……大きい。

 私の身体が、すっぽり入りそうなくらい。


「……これ、何の足跡ですか?」


 ルシャナさんは、しゃがんで地面を確かめた。


「まだ新しいわね」


「へええっ!」


「セリスちゃん。少し下がって」


 その声は、さっきまでと違っていた。

 穏やかだけれど、はっきりしている。


 私は素直に一歩下がった。

 そのとき。

 ――ゴゴゴ……。

 地面が、揺れた。


「……ん?」


 もう一度。

 ――ゴゴゴゴ……!

 小石が跳ねた。


 岩壁の上から、砂がぱらぱらと落ちてくる。

 ルシャナさんが顔を上げた。


「……来るわね」


「何がですか?」


 答えが返ってくるより早く。

 ――グルルルルル……!!

 谷の奥から、低い唸り声が響いた。


 私は目を見開いた。

 岩陰から、巨大な頭が現れる。

 ごつごつした、岩石のような鱗。

 太い首。

 地面を踏みしめる、四本の脚。

 長い尾が岩を擦り、ばきばきと音を立てた。


 ……。

 …………。


「……ドラゴン?」


「アースドラゴンね」


「…………」


 私は、その姿をじっと見つめた。

 大きい。

 すっごく大きい。

 角もある。

 牙もある。

 背中の鱗なんて、ほとんど岩だ。

 ……。


「ドラゴンだああああああっ!!」


「セリスちゃん!?」


「ルシャナさん! ドラゴンです!! 本物のドラゴンです!!」


「ええ。そうね」


「うわあああっ! すごい! かっこいい!!」


 私は思わず飛び跳ねた。

 アースドラゴンが、こちらを見た。

 黄色い目。

 大きな口。

 その隙間から、粘り気のある唾液が垂れている。


 ……ん?

 なんか、ものすごくこっちを見てる。


「……ルシャナさん?」


「なあに?」


「あのドラゴン、何だかお腹が空いてそうですね?」


「ええ。そうみたいね」


 ルシャナさんが、少し困ったように微笑んだ。


「この谷には、あまり獲物が来ないのよ」


「へえ……」


「だから、久しぶりに見つけた私たちを、逃がすつもりはなさそうね」


 ……。

 …………。


「……私たち、食べられちゃうんですか?」


「そういうつもりみたいよ」


「なるほど!」


 私はもう一度、ドラゴンを見た。

 ……確かに。

 すっごくお腹が空いてそうだ。

 でも。


「……あれ?」


 岩陰から、もう一つ頭が現れた。


 その後ろにも。

 さらに、その後ろにも。

 ――グルルルル!!

 ――ガアアアアッ!!

 ――ゴオオオオッ!!


 谷底が、揺れ始めた。

 一体。

 二体。

 三体。

 ……十体?


 えっ。

 まだいるの!?


 左右の岩棚からも、次々と巨体が姿を現した。

 大きな爪が岩を砕き、尾が地面を叩く。

 あっという間に、前の渓谷はドラゴンだらけになってしまった。


「……ルシャナさん」


「ええ」


「……いっぱいいますね?」


「そうね」


「何体くらいですか?」


 ルシャナさんが、ゆっくりと周囲を見回した。


「……ざっと、二十五体ね」


「にじゅうご!?」


 私は思わず叫んだ。


「ドラゴンが二十五体!?」


「ええ。これだけの群れは、私も久しぶりに見るわ」


「……すっごいですね!」


「ええ。普通の冒険者なら、まず逃げる相手ね」


 私は、周囲を見回した。

 前も、横も。

 岩棚の上にも、巨大なドラゴン。


 ……確かに。

 普通だったら、逃げる。


 絶対、逃げる。

 というか、逃げられるのかな?

 こんなに囲まれたら。


 ……。

 …………。

 私は、ルシャナさんを見た。


「……ルシャナさん!」


「はい?」


「歌、お願いしてもいいですか!?」


 ルシャナさんが、一瞬だけ目を丸くした。

 それから。

 嬉しそうに笑った。


「もちろんよ」


     ◇


 ルシャナさんが竪琴を構えた。

 ルアールちゃんが、その肩からふわりと舞い上がる。

 青い水の粒が、空中に浮かんだ。


「セリスちゃん」


「はい!」


「歌を重ねるから、少しだけ待っていてね」


「はいっ!」


 ルシャナさんの指が、弦に触れた。

 ――ぽろん。

 澄んだ音が、渓谷に響いた。

 次の瞬間。


 旋律が、変わった。

 力強い。

 宿で聴いていた、優しい旅人の歌とは違う。


 胸の奥から、何かが湧き上がってくるような音。

 ――《勇壮の戦歌》。


「……わあっ!」


 身体が、軽い。

 足元の石を踏みしめただけなのに、いつもよりずっと力が入る。


 腕を動かすと、風を切る音がした。

 ……すごい!


 これが、六英雄の強化魔法!


 しかも。

 ルシャナさんの歌は、まだ続いていた。

 旋律の下に、もう一つの音が重なる。

 ルアールちゃんが舞い、青い光が私の周囲を巡った。

 ――《精霊の輪唱》。


「……あれ?」


 魔力が。

 ……いつもと、違う?

 私は自分の手を見た。


 普段から、魔力の流れは感じ取れる。

 でも今は、その流れが音楽に合わせて揺れている。

 細かい。

 すっごく細かい。


 まるで、魔力の一つひとつが、歌に耳を澄ませているみたいだ。


「……すごい!」


 私は思わず笑った。


「ルシャナさん! これ、すっごく面白いです!!」


「ふふ。よかった」


「魔力が、歌に合わせて動いてます!」


「ええ。私とルアールが、流れを整えているの」


「なるほど……!」


 私は、そっと魔力を動かしてみた。

 ……おおっ。

 いつもより、ずっと細かく動かせる!

 いや、違う。

 私が細かく動かそうとしたとき、歌がその動きを支えてくれている。


 ……これ。

 すっごい!


 ――グオオオオオッ!!


 アースドラゴンが吠えた。

 ……あ。

 そうだった。

 ドラゴンがいたんだった。


「セリスちゃん」


「はい!」


「そろそろ、来るわよ」


 ルシャナさんの声に、私は顔を上げた。

 前方のドラゴンたちが、一斉に身を低くする。

 太い脚が地面を蹴った。

 ――ドドドドドドドッ!!


 巨体が、走り始めた。

 地響き。

 砂煙。

 岩壁から小石が落ちる。


 ……おおおおっ!

 迫力、すっごい!!


 でも、感動している場合じゃない。


 二十五体。

 前からも、後ろからも。

 このままじゃ、挟み撃ちだ。


「ルシャナさん!」


「ええ。大丈夫よ」


 彼女は歌いながら、私の横へ並んだ。

 ルアールちゃんが両手を広げる。

 水の壁が、私たちの周囲に浮かび上がった。

 ――《英雄たちの交響曲》。


 その瞬間。

 重なっていた旋律が、一つになった。


「……っ!」


 私は息を呑んだ。

 すごい。

 さっきまで別々に感じていた歌が、今は一つの大きな流れになっている。


 身体を動かす力。

 魔力を整える力。

 それが、互いに邪魔をせず、ぴったり重なっている。


 ……これなら。

 私は両手を前に突き出した。


「ルシャナさん!」


「なあに?」


「ちょっと、思いついちゃいました!」


「どんなことかしら?」


「《インパクト》です!」


「……ええ?」


「いつもの《インパクト》を、ちょっとだけ変えてみます!」


 私は魔力を集めた。

 《インパクト》。

 初歩的な無属性魔法。

 衝撃を生み出し、相手を吹き飛ばす。

 それだけの魔法。


 でも。

 ……もし、その衝撃を。

 一点に集中させるんじゃなくて。


 広げて。

 重ねて。

 歌に合わせて、何度も何度も響かせたら?


 ……。

 …………。

 おおおおっ!

 できるかも!!

 私は魔力を集めながら、衝撃の形を思い描いた。


 一つ目の波。

 二つ目の波。

 三つ目の波。

 それぞれを、ほんの少しずつずらして重ねる。


 ……あ。

 違う。

 ただ重ねるだけじゃ、衝撃が散っちゃう。


 だったら、波の山を揃えたら?

 同じ場所に、同じタイミングで。

 ……共鳴!


 私は思わず笑った。

 これだ!

 波と波を、共鳴させる!


 衝撃を何度も響かせれば、一度の《インパクト》とは比べものにならない力になるはず!


「……っ!」


 その瞬間、両腕がびりっと震えた。


「……あれ?」


 まだ発動していないのに、魔力の圧力が身体へ伝わってくる。

 足元の小石が、かたかたと跳ねた。


 ……あ。

 これ。

 放った瞬間、私まで吹き飛ばされない?


「セリスちゃん」


 ルシャナさんの声が、歌の合間に届いた。


「はいっ!」


「今、ずいぶん大きな力を集めているわね」


「はい! ちょっと面白いことを思いついちゃって!」


「そう」


 ルシャナさんは、私の両腕を見た。


「でも、そのままだと身体に負担がかかるわ」


「……ですよね?」


「ええ。だから――」


 ルシャナさんの指が、竪琴の弦を強く弾いた。

 ――《勇壮の戦歌》。

 旋律が、一段と力強く響く。

 身体の奥から、ぐっと力が湧いてきた。


 足が地面を掴む。

 腕の震えが、少しずつ収まっていく。


 ……すごい。

 これなら。


「反動は、私の歌で支えるわ」


「……!」


「セリスちゃんは、魔力の制御に集中して」


 私は、思わず笑った。


「はいっ!!」


 ……すごい。

 一人だったら、魔力を抑えていたかもしれない。

 でも、今は違う。

 ルシャナさんが支えてくれている。


 だったら――!


 私は魔力を、さらに細かく分けた。

 一つ。

 二つ。

 三つ。

 ……もっと。

 もっと、重ねられる。


 歌に合わせて、魔力の波が揃っていく。

 ルアールちゃんの青い光が、私の周囲を巡った。


 ……よし。

 いける!


 目の前には、二十五体のアースドラゴン。

 岩のような鱗。

 巨大な牙。

 地面を揺らす、圧倒的な巨体。

 その全部が、私たちへ向かって突進してくる。


 ……すごい。

 すごいなあ。

 こんなに大きなドラゴンが、こんなにたくさん!


 しかも、今。

 私の魔法が、どこまで届くのか、試せる!


「……ルシャナさん!」


「ええ!」


「いっきますよおおおお!!」


 私は、思いっきり息を吸った。

 そして。


「必殺っ!!」


 両手を突き出す。


「超ぉぉぉぉ!!」


 魔力が、歌に応えた。


「インパクトぉぉぉぉおおおおっ!!!」


 ――ドッッッッゴォォォォォォォン!!!!


 衝撃が、爆発した。

 いや。

 爆発じゃない。


 見えない巨大な手が、谷底を一気に薙ぎ払った。


 最前列のアースドラゴンが、宙へ浮く。


 二体目。


 三体目。


 四体目。


 その後ろにいたドラゴンたちまで、次々と吹き飛んだ。


 ――グオオオオオッ!?

 ――ガアアアアアッ!!


 巨体が空を舞う。

 岩のような鱗が砕け散り、太い脚が宙を掻く。


 衝撃は、そこで終わらなかった。


 歌に合わせて、次の波が走る。


 さらに、その次。


 まるで、見えない大きな波が、谷底を何度も駆け抜けているみたいだった。


 前方の群れが、まとめて吹き飛ぶ。


 後方から迫っていたドラゴンたちも、反対方向へ弾き飛ばされた。


 左右の岩棚にいた個体は、足元をすくわれるように宙へ舞う。


 ……。

 …………。

 うわああああああっ!!

 すっごおおおおおい!!

 ドラゴンが!

 ドラゴンが飛んでる!!


 ……いや、飛ばしてるの私だけど!!


 最後の衝撃が、谷底を駆け抜けた。


 ――ドゴオオオオオオオン!!


 土煙が、空高く舞い上がった。

 そして。

 静寂。


 ……。

 …………。

 私は、ゆっくりと両手を下ろした。


「…………」


 ルシャナさんも、竪琴を抱えたまま、谷を見つめている。


 ……。

 …………。


「……ルシャナさん」


「……なあに?」


「……すっごかったですね?」


「……ええ」


 ルシャナさんが、ゆっくりと頷いた。


「……私も、驚いたわ」


 私は谷底を見回した。

 さっきまで、あんなにたくさんいたアースドラゴン。

 今は、一体も動いていない。


 岩壁は、ちゃんと残っている。

 谷の出口も、塞がっていない。


 ……よし!

 大成功!


「やったあああああっ!!」


 私は思わず飛び跳ねた。


「ルシャナさん! できました!!」


「ええ。すごかったわね」


「すっごく楽しかったです!!」


「ふふ。そうね」


 ルシャナさんは、少しだけ困ったように笑った。


「でも……」


「はい?」


「次は、もう少し小さくてもいいかもしれないわね?」


「えええっ!?」


 私は目を丸くした。


「だって、まだまだできそうだったのに!」


「……まだ?」


「はい!」


 私は大きく頷いた。


「今の、全力じゃないです!」


 ……。

 …………。

 ルシャナさんが、静かに私を見つめた。


「…………そうなの?」


「はいっ!」


 しばらくして。


「……ふふっ」


 ルシャナさんが笑った。


「本当に、アルディスが心配するわけね」


「えっ!? 何でですか!?」


「さあ。どうしてかしら?」


「ええええっ!?」


 ……むう。

 また、教えてくれない!


     ◇


 そのときだった。

 ――ピコン。


「……ん?」


 目の前に、見慣れた表示が浮かんだ。


《アースドラゴンを討伐しました》

《大量の経験値を獲得しました》

《レベルが上昇しました》


「……えっ」


 私は、目を瞬いた。

 ……大量?

 大量って、どのくらい!?


「……ルシャナさん!!」


「なあに?」


「経験値が! 経験値がすっごいです!!」


「まあ」


 私は慌ててステータスを開いた。

 ――ピコン。


《セリス・アルフィーネ》

《レベル:395》


「…………」


 ……。

 …………。


「……さんびゃく、きゅうじゅうご?」


 私は、もう一度見た。

 ……間違いない。

 395。

 ……。


「やったああああああああっ!!」


 私は思いっきり飛び跳ねた。


「ルシャナさん!! 十一もレベルが上がりました!!」


「まあ! それはすごいわね」


「はいっ!!」


 私は嬉しくて、くるくる回った。


 十一!

 一気に十一レベル!

 しかも、ドラゴン二十五体!


 ……すっごい!

 これぞ冒険!

 これぞ異世界!!


「ルシャナさんは!?」


「私?」


「はい! ルシャナさんも一緒に戦いましたよね!?」


「ええ。そうね」


 ルシャナさんが、自分のステータスを確認した。


 ……。

 …………。


「……まあ」


「どうしました!?」


「……六つ、上がっているわ」


「……えっ」


 私は目を丸くした。


「六つ!?」


「ええ。レベル696になっているわね」


「おおおおおおっ!!」


 私は、思わずルシャナさんの手を取った。


「おめでとうございます!!」


「ふふ。ありがとう、セリスちゃん」


「やりましたね!!」


「ええ。二人でね」


 ……。

 …………。

 私は、ルシャナさんを見た。

 ルシャナさんも、私を見ていた。

 そして。


「「やったあ!!」」


 二人で、笑った。

 エルとレイも、嬉しそうに跳ねる。


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


 ルアールちゃんが、私たちの周りに小さな水の花を咲かせた。


 ……ああ。

 楽しいなあ。

 本当に、楽しい。


 魔法を使って。

 新しいことを試して。

 ルシャナさんと一緒に戦って。

 しかも、二人で強くなれた。

 ……最高だ!


     ◇


「それにしても……」


 私は、もう一度ステータスを眺めた。


「ルシャナさんの歌、すっごいですね!」


「ありがとう。でも、あれはセリスちゃんの魔法よ」


「ええっ!? ルシャナさんが歌ってくれたからですよ!」


「ふふ。そうね。じゃあ、二人の魔法ね」


「……!」


 私は、思わず笑った。


「はいっ!」


 二人の魔法。

 ……いいなあ。

 その言葉。


 私は、もう一度、さっきの感覚を思い出した。

 歌が響いて。

 魔力が動いて。

 衝撃が、何度も重なって。


 ……あれ。

 もしかして。

 あの仕組み、もっと細かく調べたら……?


「……ルシャナさん」


「なあに?」


「あとで、歌の魔力の流れ、調べてもいいですか!?」


「もちろんよ」


「やったあ!」


「でも、まずはここを出ましょうね」


「……あっ」


 私は周囲を見回した。

 巨大なアースドラゴンが、あちこちに転がっている。


 ……。

 …………。


「……そうですね」


「ええ。ここに長居するのは、あまりよくないわ」


「でも、ドラゴンの素材って、すっごく貴重ですよね?」


「そうね」


「……持って帰りたいです!」


 ルシャナさんが、少し考えた。


「全部は難しいけれど、使えそうなものを選びましょうか」


「はいっ!」


 ……よし!

 ドラゴンの鱗!

 牙!

 爪!

 もしかしたら、魔石も!


 ……うわああっ!

 楽しみが、また増えちゃった!!

 私は、思わず笑った。


 ……旅って、本当に最高だなあ!

 ルシャナさんも、そんな私を見て微笑んでいた。


「ねえ、セリスちゃん」


「はい?」


「私ね、今までたくさんの英雄と一緒に戦ってきたわ」


「はい!」


「でも……」


 ルシャナさんは、少しだけ悪戯っぽく笑った。


「歌っている私まで、こんなにわくわくしたのは久しぶりよ」



「……!」

「次は、どんな魔法を見せてくれるのかしら?」


 私は、にっこり笑った。


「いっぱいありますよ!!」


「ふふ。楽しみにしているわ」


 ……。

 …………。

 よし!

 次は、もっと面白い魔法を考えよう!


 ルシャナさんの歌と、私の魔法。

 まだまだ、できることがありそうだ。


 ……ふふ。

 どんなことができるかな?


 私は、目の前に広がる渓谷を見上げた。

 その向こうには、魔族国がある。

 まだ見たことのない魔法。

 まだ出会っていない人たち。

 そして、まだ知らない世界。


 ……待っててね!

 今、行くから!


 私は、ルシャナさんと一緒に歩き出した。

 背後には、二十五体のアースドラゴンが転がっていた。


 ……。

 …………。

 あ。

 そうだ。


「ルシャナさん!」


「なあに?」


「さっきの魔法、名前をつけてもいいですか!?」


「もちろんよ」


「じゃあ……!」


 私は、思いっきり胸を張った。


「《超・インパクト》です!!」


 ルシャナさんが、くすっと笑った。


「ふふ。分かりやすくて、いい名前ね」


「ですよね!!」


 ……よし!

 新しい魔法、完成!

 しかも、ルシャナさんとの合体技!


 ……ああ。

 早く、誰かに見せたいなあ!


 ……。

 …………。

 アルディスさん、見てくれるかな?


 ……きっと、また嫌な顔するんだろうなあ。

 私は思わず、くすくす笑った。

《超・インパクト》、誕生です!


初級魔法《インパクト》も、セリスの手にかかればドラゴン25体をまとめて吹き飛ばす大技に(笑)


でも、今回の主役はセリス一人ではありません。


ルシャナの歌が魔力を整え、反動を支え、二人だからこそ実現できた魔法。


「じゃあ、二人の魔法ね」


この一言が、今回いちばん大切にしたかったところです。


それにしても、レベル395のセリスに、696のルシャナ。


アルディスがこの話を聞いたら、いったいどんな顔をするのでしょうね(笑)


次回は、ドラゴン25体分の戦利品を抱えて、いよいよ魔族国へ!


お楽しみに!

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