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『目指すは最強! ~魔法オタクの異世界無双~』  作者: 穂乃果
第3幕 王都は魔法の宝箱!?
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第28話「ポーションに石を入れちゃダメなんですか!?」

「……セリス」


「はい……」


「……ここ、抜けてる」


「うう……」


「……魔石研磨装置の異常停止条件」


「ちゃんと作りましたよ!?」


「……作った。でも、書いてない」


 私は机に突っ伏した。

 目の前には、昨日の実験記録が山積みになっている。


 自動調光ランプ。

 半自動魔石研磨装置。

 複合付与術式の設計原理。


 ……うん。

 昨日は、最高に楽しかった。

 親方さんたちと一緒に試行錯誤して、新しい魔道具まで作れたんだ。

 なのに。


「……研究って、どうして楽しいところだけじゃ終わらないんでしょう……」


「……研究者だから」


「ネスラさんのいじわるぅぅ!!」


「……書いて」


「はあい……」


 私は渋々ペンを握った。

 王立魔法研究院の一室。

 窓の外には、澄んだ青空が広がっている。

 ああ、いい天気。

 こんな日は、外に出て新しい魔法を探したいなあ。


「……セリス」


「はいっ!」


「……窓じゃなくて、報告書」


「……見てました?」


「……ずっと」


 ……うう。

 ネスラさん、目ざとい。


 私は仕方なく、実験記録に向き直った。

 制御情報の伝達条件。

 供給路の分離。

 魔力干渉が発生した場合の遮断機構。


 ……あ。

 そういえば、昨日の親方さんが作ってくれた回路、あそこがすごく綺麗だったな。

 最初の試作品では、光量感知器が照明自身の光を拾ってしまった。

 でも、感知位置を変えて、出力の変化に許容幅を設けたら、ちゃんと安定した。


 ……ふふっ。

 やっぱり面白い。

 私は夢中でペンを走らせた。


「……できました!」


「……うん」


 ネスラさんが報告書を受け取り、静かに目を通す。


「……ここも、もう少し詳しく」


「えええっ!?」


「……再現できないと、意味がない」


「……それは、そうですけどぉ」


 私は肩を落とした。

 すると、ネスラさんがぽつりと言った。


「……終わったら、薬学研究室に案内する」


「終わりました!!」


「……まだ直してない」


「気持ちは終わりました!!」


「……書いて」


「はああい……」


 ……よし。

 薬学研究室。

 薬草。

 ポーション。

 魔力と薬効の関係。


 ……ふふふ。

 絶対に面白いに決まってる!


 私は、さっきまでの倍の速さでペンを動かし始めた。


     ◇


「……わあああ!」


 薬学研究室に入った瞬間、私は思わず声を上げた。

 壁一面に並ぶ薬草の標本。

 色とりどりの薬液が入ったガラス瓶。

 乾燥させた根や葉を保存する棚。

 そして、部屋の中央には、大きな調合台がいくつも並んでいた。


 ……すごい!

 薬草の香りがする。

 甘い匂いもあれば、少し苦そうな匂いもある。

 奥では、白衣を着た人たちが、何かを煮詰めたり、液体を混ぜたりしていた。


「……ネスラ様」


 一人の女性が、こちらに気づいて歩いてきた。

 年齢は三十代くらいだろうか。

 栗色の髪を後ろでまとめ、丸い眼鏡をかけている。


「本日は、見学と伺っておりますが……」


「……うん。セリスを連れてきた」


「はじめまして! セリス・アルフィーネです!」


 私はぺこりと頭を下げた。


「今日はよろしくお願いします!」


「こちらこそ。私はこの研究室で薬学を担当している、ミレーヌと申します」


 ミレーヌさんは、柔らかく微笑んだ。


「ネスラ様から、少しお話は伺っていますよ」


「……えっ?」


「昨日、魔道具工房で大変な発見をなさったとか」


「えへへ……親方さんたちと、ちょっと実験しただけです!」


「……ちょっと?」


 ネスラさんが、小さく呟いた。

 ……何ですか、その目は!


     ◇


「こちらが、一般的な回復ポーションです」


 ミレーヌさんが、淡い緑色の液体が入った小瓶を取り出した。


「傷の回復を助ける薬で、冒険者や兵士の方々にも広く使われています」


「わあ……!」


 私は瓶を手に取り、光にかざした。

 液体の中には、微かな魔力が流れている。

 ただの薬草の抽出液ではない。

 薬効成分と魔力が、互いに影響し合っている。


 ……へえ。

 面白いなあ。


「どうやって作るんですか?」


「まず、回復作用のある薬草を乾燥させ、一定の温度で煮出します。その後、ほかの素材と調合し、魔力を加えて安定させるんです」


「なるほど……!」


 私は調合台に並んだ器具を見た。

 温度を一定に保つ魔道具。

 液体を濾過する装置。

 魔力を少しずつ流し込むための調整器。


 ……あ。

 これ、昨日の工房で見た技術と似てる。

 でも、こちらでは薬液の性質が変わるから、もっと繊細な調整が必要なんだ。


「同じ薬草でも、出来上がるポーションの効き目は変わるんですか?」


「ええ。薬草の育った環境や採取時期、それから調合の条件によっても変わります」


「……へえ!」


「だからこそ、私たち薬師は、長年の経験をもとに薬草の状態を見極めているんですよ」


 ミレーヌさんは、少し誇らしそうに笑った。

 ……うん。

 すごい。

 魔道具職人さんたちと同じだ。

 何度も試して、失敗して、少しずつ技術を積み重ねてきたんだ。


「……素敵ですね!」


「え?」


「薬草って、一つ一つ状態が違うんですよね? それを見極めて、ちゃんと薬にするなんて……すごいです!」


 ミレーヌさんが、少し驚いた顔をした。

 そして、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます」


 ……ふふっ。

 やっぱり、知らない技術を教えてもらうのって楽しいなあ!


     ◇


 しばらく見学していると、私は一つ気になるものを見つけた。

 調合台の隅に置かれた、煮出し終わった薬草。

 すでに役目を終えたものらしく、まとめて捨てられるところだった。


「……あれ?」


 私は、そっと近づいた。

 ……ん?

 まだ、何か残ってる。

 微かだけど、薬草の内部に魔力の反応がある。


「ミレーヌさん!」


「はい?」


「この薬草、もう使わないんですか?」


「ええ。十分に煮出しましたから」


「……でも、まだ薬効成分が残ってません?」


 ミレーヌさんが、目を瞬かせた。


「……分かるんですか?」


「はい! 少しですけど!」


「確かに、すべてを抽出できているわけではありません。ただ、これ以上煮出すと、不要な成分まで溶け出してしまうんです」


「……ああ!」


 なるほど。

 温度を上げたり、時間を延ばしたりすればいいわけじゃないんだ。

 必要な成分だけを取り出したい。

 でも、ほかの成分まで一緒に出てきてしまう。


 ……じゃあ。


「煮出すんじゃなくて、反応を助けてあげたらどうでしょう?」


「……反応を?」


「はい!」


 私は、にっこり笑った。


「触媒です!♡」


「……しょくばい?」


 ミレーヌさんが首を傾げた。

 ……あ。

 この言葉、通じないのかな?


「えっとですね。自分自身はほとんど消費されずに、特定の反応を進みやすくする物質のことです!」


「……反応を進みやすく?」


「はい! 薬草の中にある成分を取り出すとき、うまく働く触媒があれば、必要な反応だけを助けられるかもしれません!」


 ミレーヌさんが、考え込んだ。


「……そんなことが、できるのでしょうか」


「分かりません!」


「……えっ?」


「だから、調べてみたいんです!」


 私は目を輝かせた。

 ……ふふっ。

 もしできたら、すっごく面白いぞ!


     ◇


「……セリス」


「はい!」


「……また実験?」


「はいっ!」


 ネスラさんが、静かにため息をついた。


「……昨日も、そうだった」


「でも、今日は薬学ですよ!?」


「……知ってる」


「全然違います!」


「……うん。そこが心配」


 ……もう!

 私はミレーヌさんと一緒に、実験の準備を始めた。

 まず、同じ種類の薬草を、同じ量だけ用意する。

 水の量も、温度も、抽出時間も揃える。

 違うのは、触媒の候補を使うかどうか。


「……この鉱石、使ってもいいですか?」


 私は、研究室の標本棚から小さな石を取り出した。


「それは、魔道具の加工に使う鉱石ですね」


「はい! 表面の構造が、ちょっと面白いんです!」


 細かな孔が、たくさん空いている。

 しかも、内部に含まれる金属成分が、薬草の魔力反応に影響しそうだった。


 ……うん。

 まずは、これで試してみよう。

 もちろん、鉱石をそのまま薬液に混ぜたりはしない。

 反応用の容器に固定して、必要な成分だけを通す。

 薬液に鉱石の成分が溶け出していないかも、後で確認する。


「……安全性の確認が必要ですね」


 ミレーヌさんが頷いた。


「はい! 薬として使うものですから!」


「……うん」


 ネスラさんが、魔力測定器を準備した。


「……じゃあ、始めよう」


     ◇


 最初の実験結果は、予想以上だった。


「……あれ?」


 私は測定器を覗き込んだ。

 通常の方法で抽出した薬液。

 触媒候補を使って抽出した薬液。

 どちらも、同じ薬草から作っている。

 なのに。


「……薬効成分の量が、違いますね」


 ミレーヌさんが、驚いた声を上げた。


「はい!」


 私は測定結果を並べた。

 通常の抽出を基準の百とすると、触媒候補を使ったものは百三十八。


「……三割以上も増えてる」


 ミレーヌさんが呟いた。


「しかも、不要な成分はほとんど増えていません」


「……すごい!」


 私は思わず声を上げた。

 ……やっぱり!

 触媒が、特定の反応を助けてるんだ!


「……ただし」


 ミレーヌさんが、真剣な表情になった。


「成分が多いからといって、そのまま薬効が高いとは限りません。安全性も確認しなければ」


「はい! もちろんです!」


 私は大きく頷いた。

 ……うん。

 薬って、難しい。

 でも、だからこそ面白いんだ。


「ほかの鉱石でも試してみませんか!?」


「……ほかの?」


「はい! 表面構造が違えば、反応の進み方も変わるかもしれません!」


 ミレーヌさんが、少し考えた。

 そして。


「……分かりました。私も興味があります」


「やったあ!♡」


 ……ふふふ。

 研究仲間が増えた!


     ◇


 それから、私たちはいくつもの鉱石を調べた。

 反応をほとんど助けないもの。

 逆に、不要な成分まで増やしてしまうもの。

 魔力の流れを乱してしまうもの。


 ……うん。

 やっぱり、何でもいいわけじゃないんだ。

 でも。


「……あれ?」


 私は、一つの鉱石を手に取った。

 灰色で、表面がざらざらしている。

 見た目は、あまり綺麗じゃない。

 けれど。

 内部に含まれる微量の金属成分が、妙な反応を示していた。


「……これ、何ですか?」


 ミレーヌさんが覗き込む。


「ああ、それは採掘場で出る屑石ですね」


「……屑石?」


「ええ。魔石としては使えませんし、加工にも向かないので、ほとんど値がつきません」


「……え?」


 私は鉱石を見つめた。

 魔力をほとんど持っていない。

 硬さも中途半端。

 金属として取り出すには、含有量が少なすぎる。

 ……なるほど。

 この世界では、使い道がないと思われてるんだ。


 ……でも。

 この表面構造。

 この金属成分。

 ……あれ?


「……ミレーヌさん」


「はい?」


「これ、試してもいいですか?」


「もちろんですが……」


 私は、そっと鉱石を反応容器に固定した。

 ……よし。

 まずは、少量で。


     ◇


 結果が出た瞬間、私は思わず息を呑んだ。


「……え?」


 測定器の数値が、明らかに違う。

 通常の抽出を百とすると。

 百八十四。


「……百八十四?」


 ミレーヌさんが、目を見開いた。


「そんな……!」


 私は測定器を覗き込んだ。

 ……すごい。

 抽出された目的成分が、明らかに増えている。

 しかも、不要な成分の増加は小さい。

 魔力の流れも、安定している。


「……もう一度、試しましょう!」


「ええ!」


 私たちは、条件を揃えて再実験した。

 結果は、ほとんど変わらなかった。

 さらに、触媒を取り出して、別の薬草でも試してみる。


 ……うん。

 こちらでは、そこまで大きな変化はない。

 でも、特定の薬草では、確かに反応が促進される。


「……選択性があるんですね」


 ミレーヌさんが呟いた。


「はい!」


 私は鉱石を見つめた。


 ……ふふっ。

 面白い。

 この石、魔力をほとんど持ってないのに。

 魔法薬の反応を助けてる。

 しかも、触媒そのものは、ほとんど変化していない。


「……これ、繰り返し使えそうですね!」


「……確かに」


 ミレーヌさんが、驚いたように頷いた。


「もし再利用できるなら、薬草の使用量を抑えられるかもしれません」


「はい! それに、調合のばらつきも減らせるかも!」


 ……ああ。

 すごいなあ。

 ただの石ころだと思われていたものが、こんなに面白い性質を持っているなんて!


 そのときだった。


《未知の物質特性を発見しました。》

《既存の薬学体系に新たな反応経路を確立しました。》

《異なる知識体系の統合を確認しました。》

《大量の経験値を獲得しました。》

《LEVEL UP!》

《Lv130 → Lv131》

《LEVEL UP!》

《Lv131 → Lv132》


「…………」


 ……え?

 私は、思わず瞬きをした。


 ……二つ?


 レベルが、二つも上がった?


「……セリス?」


 ネスラさんが、こちらを見た。


「……どうしたの?」


「あっ、いえ! なんでもありません!」


 私は慌てて首を振った。


 ……ふふっ。

 すごい。

 新しいことを知るだけで、こんなに嬉しいのに。

 世界まで、私の発見を認めてくれるなんて。


 ……でも。

 私は、手の中の鉱石を見つめた。

 ……うん。

 レベルアップも嬉しいけど。

 今は、こっちの方が気になる!


「ミレーヌさん!」


「は、はい?」


「この石、ほかにも種類がありますよね!?」


「ええ、まあ……」


「全部調べたいです!!」


「ぜ、全部!?」


「はいっ! だって……」


 私は、試験管と鉱石を見比べた。


「まだ知らない反応が、いっぱいあるかもしれないじゃないですか!」


     ◇


「……ところで」


 私は、ふと気になったことを尋ねた。


「この鉱石って、いくらくらいするんですか?」


「……いくら?」


 ミレーヌさんが首を傾げる。


「ええと、採掘場ではほとんど廃棄されていますから……」


「……え?」


「まとまった量でも、あまり値段はつかないと思いますよ」


 ……ほう。

 私は、少し考えた。


「……串焼き、何本分ですか?」


「…………」


 ミレーヌさんが固まった。


「……串焼き?」


「はい! 一本銅貨三枚です!」


「……いえ、この石なら、少量でしたら串焼き一本分にもならないと思いますが……」


「…………」


 私は、手の中の鉱石を見つめた。

 そして。


「やっすううううい!!♡」


「ひゃっ!?」


「これ、いっぱい買ってもいいですか!? あっ、串焼き代はちゃんと残しますから!」


「……セリス」


 ネスラさんが、静かに口を開いた。


「……金貨二十枚、持ってるよね」


「はい!」


「……串焼き、六万本以上買えるよね」


「六万六千六百六十六本です!」


「……うん」


 ネスラさんは、しばらく私を見つめた。


「……そのうち何本分、研究に使うつもり?」


「えっと……」


 私は真剣に考えた。

 ……うーん。

 鉱石を買って、精製して、反応容器を作って。

 それから、別の薬草でも実験して。

 ……ふふっ。

 やりたいこと、いっぱいあるなあ。


「串焼き五万本分くらいなら、研究に使ってもいいかなって!♡」


「……残り一万六千本も食べるの?」


「食べませんよ!?」


「……そう」


「お風呂代も必要ですから!!」


「……そっか」


 ネスラさんが、また深くため息をついた。

 ……もう。

 何でそんなに呆れてるんですか!


     ◇


 夕方。


 薬学研究室では、ミレーヌさんたちが実験結果を整理していた。

 今回の発見は、まだ実験室で確認できた段階にすぎない。

 薬として実際に使うには、毒性や保存性、長期間の安定性も調べる必要がある。

 触媒を繰り返し使ったとき、性能が落ちないかも確かめなければならない。


 ……うん。

 まだまだ、やることがいっぱいだ。


「……セリスさん」


 ミレーヌさんが、静かに声をかけてきた。


「はい?」


「私たちは、ずっと薬草の性質を調べてきました」


「……はい」


「どの薬草を、どの温度で、どれくらい煮出せばいいのか。どうすれば、少しでも良い薬を作れるのか」


 ミレーヌさんは、作業台の上に置かれた鉱石を見つめた。


「でも……薬草の外にあるものが、こんなふうに反応を助けるなんて、考えたこともありませんでした」


「……そうなんですね」


「ええ」


 ミレーヌさんは、少しだけ笑った。


「まだまだ、知らないことがあるんですね」


「はい!」


 私は大きく頷いた。


「私も、知らないことだらけです!」


「……セリスさんでも?」


「もちろんです!」


 私は、窓の外を見た。

 王都の街並み。

 その向こうには、まだ行ったことのない土地が広がっている。

 きっと、知らない薬草もある。

 知らない鉱石もある。

 知らない魔法も、たくさんある。


「……だから、楽しいんです!♡」


 ミレーヌさんが、嬉しそうに微笑んだ。


「……そうですね」


     ◇


「……セリス」


 研究室を出たところで、ネスラさんが声をかけてきた。


「はい?」


「……明日も、研究する?」


「もちろんです!!」


「……そう」


 ネスラさんは、小さく頷いた。


「……じゃあ、今日は報告書をまとめよう」


「…………」


 ……え?


「……報告書?」


「……うん」


「……今日の分?」


「……うん」


「…………」


 私は、ゆっくりと天井を見上げた。


 ……ああ。

 そうだった。

 研究って、報告書までついてくるんだった。


「ネスラさあああん!!」


「……逃がさないから」


「うわあああん!!」


 王立魔法研究院の廊下に、私の声が響いた。


 ……でも。

 私は、こっそり笑っていた。

 だって、明日も研究できるんだもん。


 ……ふふっ。

 この世界って、本当に面白いなあ!


     ◇


 一方、その頃。


 王宮の執務室では、レオニス国王が、一通の報告書を読み終えていた。


 表題は、

『多項式構造を用いた複合付与術式に関する基礎研究』


 国王は、静かに息を吐いた。


「……なるほど」


 魔道具の設計体系に、新たな可能性を示す研究。

 しかも、既存の術式を活用し、複数の機能を連動させるという。

 ……実用化できれば、王国の産業に大きな影響を与えるだろう。


「……ネスラも、随分と面白い研究を始めたものだ」


 国王は、少し楽しそうに笑った。

 すると。


「陛下。王立魔法研究院より、追加の報告が届いております」


「……追加?」


「はい。薬学研究室からです」


 国王は、差し出された書類を受け取った。

 そして、表題を見た。


『低魔力鉱物を用いた魔法薬抽出反応の触媒的促進に関する予備報告』


「…………」


 国王は、しばらく黙っていた。


「……ネスラは、今度は何を始めたのだ?」


「……詳しくは、こちらに」


 国王は、報告書を開いた。

 数分後。


「…………」


 ゆっくりと、書類を机に置く。

 そして。


「……ネスラよ」


 誰もいない方向に向かって、静かに呟いた。


「そなたたちは、一日一件ずつ革命を起こさねば気が済まぬのか?」


 その声には、呆れと。

 それを上回る、期待が込められていた。

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