↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『目指すは最強! ~魔法オタクの異世界無双~』  作者: 穂乃果
第3幕 王都は魔法の宝箱!?
25/76

第25話「従魔登録って、友達にも必要なんですか!?」

「……ここ」


 ネスラさんが足を止めたのは、王立魔法研究院から少し歩いたところにある、三階建ての建物だった。


 入口には、剣と杖、それから小さな魔物の絵が描かれた看板が掲げられている。


『王都冒険者ギルド・従魔登録窓口』


「おおおっ! ここで登録できるんですね!」


「……うん」


 私は肩に乗ったエルと、頭の上でぷるぷるしているレイを見上げた。


「二人とも、到着ですよ!」


「ぷいっ!」

「ぷるん……」


 エルは元気いっぱいに跳ね、レイは眠そうに一度だけ揺れた。


 ……ふふっ。

 相変わらず、性格が正反対だなあ。


「じゃ、さっさと済ませようぜ!」


 アルディスさんが扉を開ける。

 中に入ると、広い受付には冒険者らしい人たちが何人も並んでいた。鎧姿の人、獣耳の人、巨大な鳥を肩に乗せた人までいる。


「わあ! あの鳥、魔力が羽根の先まで流れてます!」


「おい、セリス。登録だぞ、登録」


「分かってますよ!♡」


 ……でも、あの鳥も気になる。

 後で聞いてみようかな?

     ◇


「従魔登録ですね。では、契約の確認をお願いします」


 受付のお姉さんが、にこやかに書類を差し出した。


「はい!」


 私は元気よく頷いてから、書類を覗き込む。


 ……ん?


『従魔契約の種類』

『契約者による命令権』

『契約魔法の確認』


「……あのう」


「はい?」


「契約してないんですけど」


「…………はい?」


 お姉さんの笑顔が止まった。


「この子たち、お友達なので!♡」


「……お友達、ですか?」


「はい! エルとレイです!」


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


 二匹が揃って返事をする。

 お姉さんは、私と二匹を交互に見た。


「ええと……従魔登録は、通常、契約魔法によって主人と魔物の関係を確認するのですが……」


「主人じゃありませんよ?」


「……え?」


「一緒に旅をしてる、お友達です!」


「…………」


 お姉さんが困った顔になった。


 ……あれ?

 何かおかしなこと言ったかな?


「おいおい、困らせてやるなよ」


 アルディスさんが笑いながら横から口を挟んだ。


「こいつ、こういう奴なんだ」


「……アルディス様!?」


 受付のお姉さんが、ぱっと背筋を伸ばす。


「お、お帰りになっていたのですね!」


「おう! で、こいつらは俺が城門で身元保証してる。王都に入るための登録を済ませたいんだ」


「なるほど……」


 お姉さんは書類を確認し、少し考え込んだ。


「契約魔法がない場合でも、同行魔物として登録する方法はあります。ただし、管理責任者の確認が必要になります」


「それなら俺が引き受けるぜ!」


「……ありがとうございます。では、こちらの書類に」


「はいよ!」


 アルディスさんが、さらさらと署名する。


 ……おお。

 さすが六英雄。

 こういうとき、頼りになるなあ。


「セリスさんにも、確認していただきたいことがあります」


「はい!」


「登録した魔物が王都内で問題を起こした場合、同行者としての責任が生じます。よろしいですか?」


「もちろんです!」


 私はエルとレイを見た。


「二人とも、街の人に迷惑をかけないようにしましょうね!」


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


「……あら」


 お姉さんが目を丸くした。


「本当に、お返事するんですね」


「はい! とってもいい子たちなんですよ!」


     ◇


「では、魔力特性の測定を行いますね」


 案内されたのは、受付の奥にある小さな測定室だった。

 中央には、淡く光る水晶球が置かれている。


「まずは一匹ずつ、こちらに乗せてください」


「エル、お願いします!」


「ぷいっ!」


 エルがぴょんっと跳ねて、水晶球の上に乗った。

 すると。

 ぽわんっ!

 水晶球から、淡い青色の光が外側へ広がった。


「……あら?」


 お姉さんが測定器を覗き込む。


「魔力が、外側に拡散していますね」


「はい! エルは外向きなんです!」


「外向き?」


「魔力を広げるのが得意なんですよ!♡」


「……なるほど」


 隣で見ていたネスラさんが、小さく呟いた。


「……魔力の放出が、均一じゃない」


「そうなんです! でも、その偏りが面白くて!」


「……意図的に方向を変えてる?」


「たぶん、本人は遊んでるだけです!」


「…………」


 ネスラさんがエルを見つめる。

 エルは得意げに、ぷるんっと跳ねた。


「じゃあ、次はレイですね!」


「ぷるん……」


 レイをそっと水晶球に乗せる。

 すると今度は。

 きゅうううっ。

 水晶球の周囲にあった淡い光が、中心へ吸い込まれるように集まった。


「……えっ?」


 お姉さんが測定器を二度見した。


「今度は……魔力が内側に?」


「はい! レイは内向きです!」


「同じ種類のスライムですよね?」


「元は一匹だったんですけど、今は二人なんですよ!」


「…………はい?」


 ……あ。

 また説明が足りなかったかな?


「……セリス」


 ネスラさんが静かに口を開いた。


「……今、何て?」


「え?」


「……元は一匹?」


「はい!」


「…………」


 ネスラさんが額に手を当てた。


「……その話、昨日は聞いてない」


「そうでしたっけ?」


「……聞いてない」


「じゃあ、今度詳しくお話ししますね!」


「……絶対」


 ……ふふっ。

 また研究の約束が増えちゃった!


「……セリス」


 アルディスさんが、何とも言えない顔で私を見る。


「お前、またネスラの仕事増やしてねえか?」


「ええっ!? そんなつもりは!」


「……僕が聞いたから、いい」


 ネスラさんがぽつりと答えた。


 アルディスさんは一瞬きょとんとして、それから豪快に笑った。


「はははっ! お前ら、ほんと気が合うな!」

  

   ◇


 登録が終わると、エルとレイにはそれぞれ小さな登録証が発行された。

 魔物の種類、特徴、同行者の名前。

 そして、王都内での同行許可。


「これで正式に登録完了です」


「ありがとうございます!!」


 私は二枚の登録証を受け取った。


「エル! レイ! これで王都を一緒に歩けますよ!」


「ぷいぷいっ!」

「ぷるん!」


 二匹が嬉しそうに跳ねる。

 私は思わず二人を抱きしめた。


「これからも、よろしくお願いしますね!♡」


「ぷいっ!」

「ぷるるん!」


 すると、受付のお姉さんが微笑んだ。


「ふふ。従魔登録なのに、お友達の証明書みたいですね」


「はい! そうなんです!♡」


 ……うん。

 この方が、ずっと嬉しい。


     ◇


「さて、次は宿だな!」


 ギルドを出たところで、アルディスさんが言った。


「宿!」


「おう。王都に着いてから研究院に直行しちまったからな。まずは落ち着く場所を決めねえと」


「なるほど!」


 ……そういえば、そうだった。

 王都に着いて、ネスラさんと出会って、魔法の研究をして。

 楽しすぎて、宿のことをすっかり忘れていた。


「どんな宿がいい?」


「えっとですね!」


 私は指を折りながら考える。


「まず、王立魔法研究院に近いところ!」


「おう」


「それから、大図書館にも行きやすくて!」


「……おう」


「魔道具工房街にも近くて!」


「……おう?」


「それから!」


「まだあるのか?」


「お風呂!! お風呂は絶対です!!」


「……風呂?」


「はい! 足を伸ばして、ゆっくり浸かれるお風呂がいいです!」


「……お前、宿選びに厳しいな」


「当然です! 一日の研究を終えたら、お風呂でゆっくり考えるのが最高なんですよ!」


 ……そう。

 お風呂は大事だ。


 身体を温め、疲れを取り、頭を空っぽにする。

 すると不思議なことに、研究室では思いつかなかった発想が、ふっと浮かんでくる。


 あれが、たまらない。


「……それなら、知ってる宿がある」


 ネスラさんが小さく頷いた。


「本当ですか!?」


「……研究院の近く。浴室付きの部屋がある。少し高いけど」


「そこにします!!♡」


「決断早えな!?」


 アルディスさんが目を丸くした。


「お風呂ですよ!?」


「いや、分かるけどよ!」


「……ただし」


 ネスラさんが私を見る。


「……夜中に実験はしないで」


「えええっ!?」


「……昨日、見たから」


「ううっ……」


 ……この人、鋭い。


     ◇


 案内された宿は、研究院から歩いて十分ほどのところにあった。


 白い壁に、青い屋根。

 入口には小さな花壇があり、窓辺には魔法灯が吊るされている。


『青い月の宿』


「わあ……素敵ですね!」


「……静かだから、気に入ると思う」


 宿の中は、落ち着いた雰囲気だった。

 木の床は丁寧に磨かれ、受付の奥からは美味しそうな料理の匂いが漂ってくる。


「いらっしゃいませ!」


 宿の女将さんが、明るい声で迎えてくれた。

 部屋は二階。

 小さな机と椅子、柔らかそうなベッド。

 そして。


「……お風呂!!」


 私は浴室の扉を開け、思わず声を上げた。

 白い石造りの浴槽。

 壁には、青い魔石が埋め込まれている。

 その魔石から伸びる細い魔力回路が、浴槽の底へと続いていた。


「……わあ」


 私は思わず、しゃがみ込んだ。


「これ……魔道具ですよね?」


 女将さんが頷いた。


「ええ。お湯を温める魔道具ですよ。王都では、少し高い宿なら珍しくありません」


「へええ……!」


 私は魔力の流れを観察した。


 魔石から供給された魔力が、一定の術式を通って熱へと変換されている。


 ……綺麗。

 無駄の少ない、安定した流れ。

 魔力の供給量も、ほとんど揺らいでいない。


「すごい……これ、ずっと同じ温度を保てるんですか?」


「ええ。魔石が切れない限りはね」


「……なるほど!」


 私は浴槽の縁に手を置き、もう一度術式を見つめた。


 ……面白い。

 こんな身近なところにも、魔法の技術が使われているんだ。


 この世界の人たちは、魔法を戦うためだけに使っているわけじゃない。


 暮らしの中で、ちゃんと育ててきたんだ。


「……ふふっ」


 なんだか、嬉しくなってしまった。


     ◇


 部屋に荷物を置き、アルディスさんたちと別れた私は、さっそくお風呂に入ることにした。


「ふわあああ……♡」


 温かいお湯に肩まで浸かる。


 ……ああ。

 幸せ。

 やっぱり、お風呂は最高だ。


 エルとレイは浴槽の縁に並んで、ぷるぷると揺れている。


「二人とも、気持ちいいですか?」


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


 ……ふふっ。

 かわいいなあ。


 私は天井を見上げた。

 王都に来てから、まだほとんど時間が経っていない。

 なのに、もうこんなに面白いことがあった。


 ネスラさんの氷魔法。

 王立魔法研究院の測定装置。

 この世界の術式と、私の魔法理論の違い。

 そして、エルとレイの魔力特性。


 ……ああ。

 まだまだ調べたいことが山ほどある。


「……ふふふ」


 お湯の中で、思わず笑みがこぼれた。


 ……やっぱり。

 この世界、面白すぎる!


     ◇


 お風呂から上がり、髪を乾かしていると。

 コンコン。

 扉がノックされた。


「セリス、いるか?」


 アルディスさんの声だ。


「はい! どうぞ!」


 扉が開き、アルディスさんが顔を覗かせた。


「おう。王宮から使いが来てるぞ」


「……王宮?」


「陛下からの正式な招待だ」


 ……あ。

 そうだった!

 私、王様に呼ばれてたんだ!


「明日、王宮で謁見だとよ」


「……明日ですか!?」


「おう。俺も一緒だ」


 私は、差し出された封書を受け取った。

 白い封筒。

 そこには、金色の紋章が刻まれている。


 ……国王陛下。

 この国の、最高責任者。

 当然、失礼があってはいけない。


 私は封書を机に置き、自分の服を見下ろした。


「……アルディスさん」


「ん?」


「この服で、国王陛下にお会いしても大丈夫でしょうか?」


「……お?」


「やっぱり、もう少しきちんとした服の方がいいですよね?」


 アルディスさんが目を丸くした。


「お前、そういうの気にするんだな」


「気にしますよ!? 国王陛下ですよ!?」


「いや、研究室に突っ込む勢いで王宮にも行くのかと……」


「行きませんよ!!」


 ……もう!

 私を何だと思ってるんですか!


「まあ、陛下は堅苦しいのが嫌いだからな。清潔で、きちんとした服なら大丈夫だろ」


「……そうですか」


 私は、もう一度自分の服を見た。

 旅の途中で着ていた服。

 汚れは落としてあるし、破れもない。


 でも。

 ……うーん。

 やっぱり、少し気になる。


「明日の朝、服を見に行く時間はありますか?」


「おう。謁見は午後だからな」


「よかった!」


「……お前、ちゃんと女の子なんだな」


「失礼ですね!?」


 アルディスさんが、楽しそうに笑った。


「ははは! 悪い悪い!」


「もうっ!」


 ……本当に。

 この人は!


     ◇


 アルディスさんが部屋を出たあと、私は鏡の前に立った。


 銀色の髪。

 青紫の瞳。

 そして、旅装のままの服。


「……うーん」


 やっぱり、もう少し大人っぽい服がいいかな。

 せっかく国王陛下にお会いするんだし。

 ……それに。


 私は胸元と腰の後ろに目を向けた。


「エル、レイ」


「ぷいっ!」

「ぷるん!」


「明日は、大事なお仕事があります!」


 二匹がぴょこんと跳ねた。


「エルは上! レイは後ろ! いつもより、ちょっとだけ自然にお願いします!」


「ぷいぷいっ!」


「ぷるん!」


 ……よし。


 協力体制は万全だ。


「まず、エル。もう少しだけ下に……あ、そこです!」


「ぷいっ!」


「レイは……うん! その位置なら歩いても大丈夫そう!」


「ぷるん!」


 私は鏡の前で、くるりと回った。


 ……おお。

 いい感じ。

 胸元は自然に整い、腰のラインも綺麗に見える。

 ……ふふふ。


「ちょっと、大人っぽく見えるかな?」


「ぷいっ!」


「ぷるん!」


「ありがとうございます! 二人とも、頼りになりますね!」


 ……よし。


 明日の準備は、これで半分くらい完了だ。

 あとは服。

 そして、国王陛下へのご挨拶。


 私は机に向かい、研究ノートの新しいページを開いた。


『明日の予定』

一、謁見用の服を選ぶ。

 二、国王陛下へのご挨拶。

 三、王宮の魔法を観察する。

 四、時間があれば大図書館へ。


 ……うん。

 完璧。


 ……あ。

 そうだ。


 私は、三番目の予定の横に、小さく書き足した。


『※勝手に触らないこと』


 ……よし。

 これで本当に完璧!♡


 窓の外では、王都の魔法灯が一つ、また一つと灯り始めていた。


 明日は王様に会う。

 その先には、まだ知らない魔法が待っているかもしれない。


「……ふふっ」


 楽しみだなあ。


 王都に来てから、毎日が宝箱を開けるみたいだ。

 私は研究ノートを閉じ、エルとレイを抱き寄せた。


「それじゃ、明日に備えて、今日は早く寝ましょうね!」


「ぷいっ!」


「ぷるん!」


 ……明日は、どんな一日になるんだろう?


 胸の奥が、わくわくして仕方なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。