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 ドミニクは穴が開きそうなほど目を近づけて記事を読んでみた。そこには「オリヴィアが写真機を飛び越して、映像を数分間に渡って記録し、そして再生できる、通称『ビデオカメラ』と呼ばれる映像装置を作った」と書いてある。「何だと!」とドミニクは思わず声を上げていた。


 オリヴィアはあの時、確か大切な機器が故障したため「もう写真機を作るのは難しい」と言っていた。

 今頃借金で首が回らなくなって、大変なことになっていると思ったのに、どうしてそんな発見が出来たのか。仮に出来たとして、資金はどうしたのか。

 読み進めるとそのことも記事に載っていた。


『オリヴィア女史がこの発明をしたのは、ある危機的状況が要因となった。ある日、彼女が高魔素液を研究室にこぼしてしまったことがあった。高魔素液は魔導具にとって有害。全ての器具が破損したと思われた。

 しかし、本当に壊れているか確認するため、テストしていた彼女は奇妙なことを発見する。

 オリヴィア女史が作っていた、当時新型の写真機を使ってみたところ、何と、動く映像が投影されたのだ。これは鏡精石と呼ばれる、写真機に欠かせない魔石が、高濃度の魔力を浴びたことにより、偶然にも出力が〜』


「ふざけるな!」

 ドミニクは叫んでいた。その声にベッドで寝ていたアビーも目を覚ましたようだ。

「どうしたの」

 目をこすりながら聞いてくる。


 ドミニクの心には怒りが渦巻いていた。全部読まなくても分かった。要はあの時ドミニクが高魔素液をこぼしたことで起こった事故で、偶然、映像装置を作る発見に繋がったというのだ。

 それはつまり、自分がいなければ出来なかったことだ。トリガーは俺だ。それなのに、あいつはまるで自分の手柄のように発表している。何て汚いやつなんだ!


 ドミニクは自分が彼女に罪をなすりつけていたことも忘れて、地団駄を踏んだ。こうしてはいられないと、すぐに服を着替え始める。

「ちょっとドミニク、どこに行くのよ」

「オリヴィアのところだ」

「どうして」

「あいつが俺の功績を横取りしているからだ。返してもらいに行く」


 勢いよく別荘の外に出たドミニクは、大股で歩き出す。待っていろよ、オリヴィア。必ず返してもらう。それは本来、俺が受け取るべき金なのだから。




 ・・・




 ドミニクは先ず、王立学園の一室にあった彼女の研究室に行ったのだが、そこはもぬけの殻になっていた。学生の頃に顔なじみだった教師に聞くと、あの一室では手狭になったので、オリヴィアは引っ越したのだという。教師はその引越場所までは知らなかった。


 ドミニクは次に写真機を販売する店を訪ねた。二年以上前にオリヴィアが完成させていた小型の写真機よりも、少し小型になったものが幾つも並んでいる。

 店の中だけまるで未来の中であるかのような、奇妙な感覚に陥る。

「この機械を作ったメーカーの名前は?」

 店主に尋ねた。

「『アーべライン商会』です」


 アーべラインはオリヴィアの苗字。これは間違いないだろう。ドミニクは次に書店を訪れた。そこで「企業辞典」と呼ばれる、この国のほとんどの会社が載った辞典を買い求めた。

 アーべライン商会はすぐに見つかった。住所も載っている。読んでみると、予想年商12億ポリーと書いてある。この二年以内に創業した新興企業にしては、凄まじい売上だ。


 ドミニクは勢いよく本を閉じた。

 身体が疼いている。こうしている間にも、オリヴィアは自分が受け取るべきだった金を着服し続けている。許せない。ドミニクは会社の方へ走り出していた。




 それは王都の大通りに面した建物の前だった。まるで神殿のように大きい五階建てのビルで、一流の企業の物と比べても、あまり遜色がない。


「だから、俺は最初にオリヴィアと組んで仕事をしてた営業マンで、それは彼女に話を通してもらえば分かるから!」

 中に入ったドミニクは、近くに居た受付嬢にオリヴィアに会いたいと伝えたが、彼女は困ったように眉をひそめた。

「どのような関係であっても、アポイントがない方は受け付けられません」

「おい待て、俺はオリヴィアの婚約者だぞ。それを無碍に扱って良いのか?」

「ですから……」

 受付嬢は困り果てているようだ。

「どちら様ですか?」


 騒ぎを聞きつけて現れたのは、黒いスーツを着こなした、背の高い男だった。明らかに、真っ当な商売をしているであろう商会とは場違いの人物に見えた。警備員だろうか。

 男に向かっても同じ説明を繰り返すと、黙って聞いていた男は

「分かりました。では8日後の午後五時、再びここに来て下さい」

 と言い、そのまま去って行った。


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