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「オリヴィアちゃん、オリヴィアちゃん」


 オリヴィアが帰路を急いでいた時、一人の中年男に話しかけられた。この付近で仕事をしているゴドーという人物だ。彼には毎日のように声を掛けられている。

「何でしょうか」

「うーん、今日も疲れた顔してんな」


 ゴドーはオリヴィアの顔を覗き込んでくる。酒臭くて顔を仰け反らせてしまう。

「そろそろウチの娼館で働く気になったかな? オリヴィアちゃんは可愛いし、スタイルも良いから、あっという間にナンバー1になれるよ」

「え、あの……」

「いや本当だよ! 宇宙一の人材だよ君は! 俺が保証する」


 ゴドーは目をギラギラさせながら、オリヴィアの全身を舐めまわすように見る。彼は「メス猫の集会場」という娼館で働くスカウトで、オリヴィアが何の仕事をしているのか知らないのだ。


「ごめんなさい、私、そういう気にはなれなくて……」


 オリヴィアはゴドーをかわして、足早に通り過ぎた。


「いつでも待ってるからねー!」


 明るい声を聞きながら、彼女は家路を急ぐ。

 しかし再び足を止めた。目の前に黒づくめの人物が立っていたからだ。背が高く、髪を後ろに流し、サングラスをしている。正真正銘の不審者だった。

「オリヴィアちゃん久しぶりー」

 その男も明るい声で話しかけてくる。

「昨日も会ったじゃなりませんか……ウォーレンさん」

「あれ、そうだっけ」


 ウォーレンはおどけたように髪の後ろを掻いた。


「で、本題なんだけどさ」

 ウォーレンはサングラスを外した。街灯の光だけでも分かる、ルビーのように赤い大きな瞳が印象的だ。

「俺の仕事、手伝ってくれる気になった? めちゃくちゃ楽に大金が手に入る仕事」

 彼はこのように、あからさまに詐欺的な誘いを毎日かけてくる男だった。


「え、えっと、ごめんなさい」

「何でだよ〜。俺と組んだらがっぽり儲かるって! そしたら毎日キャビアも食べ放題だよ」

「毎日は食べたくないです……」


 言いながらウォーレンの横を通り過ぎた。彼女は安い集合住宅の一室に住んでいるためか、周りにこういう変な人たちが沢山いる。

 ちなみに彼らはまだ無害な方だ。

 最近はあまり見なくなったが、もっと怖い人や危険な人とも、何度もエンカウントしたことがある。



 疲れていた彼女の思考は取り留めのないものになっていく。

 このままだと成果が挙げられない。するとまたドミニクにがっかりした顔をされてしまう。頑張らないと。

 あ、でも明日は仕送りのために銀行に行かないと。もう今月あんまりお金残って無いから……昨日買ったパンをかじって飢えをしのごう。


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