表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第5話 三人の絆  ~ ヒカル、八歳の記憶~

一緒に笑い、一緒に泣いた友との絆。


それはきっと、未来への道しるべになるのかもしれません。


三人の絆が結ばれた日の物語です。

山間やまあいに朝日が差し込み、澄んだ空気が広がっていた。


この村の子どもたちは、小さな頃から山を駆け回り、

風のような身軽さを身につけていく。


(らん)(べん)は、

谷から谷、枝から枝へ軽々と飛び移り、

山の中を駆け抜けていた。


ヒカルだけが、必死にその背中を追いかけている。


突然、嵐が方向を変えた。


「嵐!」

「危ないから行っちゃ駄目!」


ヒカルの叫びとともに、弁が後を追った。


嵐が笑いながら振り返る。

「大丈夫だって!」


その瞬間――。


踏み出した足元が崩れ落ちた。


「っ――!」


体勢を崩し、

嵐の身体が大きく傾いた。


「嵐!」

弁が迷うことなく飛び込んだ。


崖から落ちかけた嵐の腕を、強くつかむ。


「うわっ……弁!」


嵐の声が震える。


だが弁もまた、片手一本で細いツルへしがみついている状態だった。


ギシ……ギシ……。


ツルが嫌な音を立てる。


(このままじゃ……もたない……!)


ヒカルは駆け出した。


「弁……!

そのまま掴んでて!」


崖際へ飛び込み、弁の腰へしがみつく。


さらに近くの枝を両腕で抱え込み、必死に体を支えた。


こうして三人は、


ヒカル → 弁 → 嵐


の順に宙へぶら下がる形になった。


「ぐっ……!」


ヒカルの腕が震える。


弁の体重。


そして嵐の重み。


全部が、小さな体へ容赦なくのしかかっていた。


嵐の額から汗がこぼれ落ちる。


弁も歯を食いしばりながら声を絞り出した。


「う、おおおおっ……!」


渾身の力で、嵐の体を崖の上へ押し戻す。


「弁! あと少しだ!」


ヒカルが叫んだ。


嵐は必死に地面へしがみつき、そのまま崖の上へ転がり込む。


続いて弁も、荒い息を吐きながらよじ登った。


嵐は半べそをかき、

弁は満身創痍だった。


「よかった……

ほんとに……」


「ふぅ~」

ヒカルは大きく息を吐いた。


三人が顔を見合わせ、微笑み合った――その瞬間。


ミシッ。


嫌な音が響いた。


ヒカルの掴んでいた細い枝が、静かにひび割れていく。


「……え?」


次の瞬間――。


バキンッ!


枝が折れた。


「ヒカル!!」


二人の叫びが山へ響く。


ヒカルの体は、そのまま谷底へ吸い込まれていった。


風の音だけが耳を満たす。


空も、木々も、光も。


すべてが遠ざかっていく。


狭まっていく意識の中で、

ヒカルはぼんやりと思った。


(ああ……また迷惑をかける……)


そのまま、闇へ沈んでいく。


―――――


返事はなかった。


夕暮れが迫り、

山の空気が冷えはじめても、ヒカルの姿は見つからない。


誰もが言葉を失いかけていた、そのときだった。


「あっ……!」


嵐が何かを見つけ、駆け出す。


地面へ落ちていたのは、ヒカルの靴だった。


その近くには、乾きかけた血の跡。


嵐は息をのんで崖の下を見下ろす。


そこには――。


崖の斜面から突き出した一本の枝が、

折れそうになりながらも、かろうじてヒカルの体を支えていた。


「弁!

いた……ヒカルが……!」


嵐の叫びが震えていた。


―――――


三日後。


ヒカルはようやく目を覚ました。


ぼやける視界の中、

最初に見えたのは弁と嵐の顔だった。


二人は半泣きになりながら、何度も繰り返す。


「ごめんよ……」


「ごめん……ヒカル……」


ヒカルは弱々しく微笑んだ。


「僕は……大丈夫……

気にしないで……」


「心配かけちゃったね」


嵐と弁は震えたままだった。


命は助かった。


だが――

ヒカルの足は骨折していた。




挿絵(By みてみん)

三人の少年に芽生えた「守りたい」という想い。


その気持ちは、やがて誰かを支え、救う力になっていくのでしょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ