第16話 ヒカル ~“内なる進化”の兆し~
焼け跡の中心へ立った瞬間――。
ヒカルの胸が、大きく脈打った。
――ドクン。
波の音と重なる。
息が止まる。
海が、どこか遠くで呼んでいる気がした。
「……っ!」
膝が崩れる。
その肩へ、凪人がそっと手を置いた。
「ヒカル」
低い声だった。
「お前の中にも、“海の呼吸”がある」
その言葉が落ちた瞬間。
胸の奥で、何かが応えた。
――ドクン。
誰かの気配。
遠い場所で揺れる感情。
言葉にはならない、微かな“想い”。
ヒカルは息をのむ。
「……これ……誰なんだ……?」
胸の奥がざわつく。
怖い。
なのに、耳を澄ませたくなる。
自分の中へ、自分ではない何かが触れてくるようだった。
凪人が静かに言う。
「恐れるな」
その声だけが、不思議とはっきり聞こえた。
「感じたのなら、それは“繋がった”ということだ」
ヒカルの心が大きく揺れる。
「……僕なのに……?」
かすれた声が漏れた。
「こんな僕なのに……本当に、そんなものがあるのか……?」
胸の鼓動と、自分の弱さが噛み合わない。
助けられてばかりの自分が。
守られてばかりの自分が。
誰かの力になれるはずがない――。
そう思い続けてきた。
なのに。
胸の奥の“何か”だけが、静かに応え続けている。
まるで。
ヒカル自身も知らないヒカルを、呼び起こそうとするみたいに。
ヒカルは胸へ手を当てたまま動けなかった。
震えが止まらない。
足にも力が入らない。
それでも――。
胸の奥の鼓動だけが、静かに背中を押してくる。
「ヒカル……無理すんな」
弁の声が、すぐ隣で響いた。
そっと手が伸びる。
反対側では、嵐が黙って腕を差し出していた。
二人の温もりに触れた瞬間。
ヒカルの身体が、ようやく重心を取り戻す。
立ち上がるというより――。
支えてもらって、起こされた。
僕は弱い。
怖い。
何度も、自分なんてと思ってきた。
それでも。
二人は迷わず手を伸ばしてくれる。
その温かさが、ヒカルの震えを静かに包んでいた。
助けられてばかりの自分なのに。
それでも、隣にいてくれる。
その事実だけで、胸の奥が少し熱くなる。
二人に支えられながら。
ヒカルは、ゆっくり一歩を踏み出した。
「……行かなきゃ」
かすれた声だった。
けれどそれは――。
確かにヒカル自身の意志だった。
※掲載しているイラストはAIを用いて制作しています。
キャラクターや情景のイメージは作者が考案し、描画はAIによるものです。




