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第六十二話




「なんで教室でやるかな」

「……調理室、行くの面倒で」


 ルーチェはお兄様に、私はシグニにお説教されています。他の方たちはアイト卿から少し注意されただけ。理不尽です。アイト卿は作ったものの試食もしたのに。自分だけしれっと利益だけ得てます。


「……皇族の威厳とは」

「ないだろ」


 うぅ……。みなさんの前では酷いです。いくら少しだけ校則違反をしたからと言って、目の前で叱るほどでは……。あぁ、ごめんなさい! 反省しているのでその笑顔はやめてください。目が笑ってなくて怖いです。


「ざまぁ」

「お菓子食べたくせに」

「ルシアのお菓子、私も食べたいな」

「あ、後で持っていきますから……」


 シグニは許してくれそうです。お兄様は許してくれなさそうですけど……。シグニは正直に言いますと、その……。言われたことをしてあげれば機嫌が直ります。なので、扱いやすいといいますか、怒られても対処法が分かるといいますか。とにかく、許してもらうことはできます。ただ、お兄様の場合はそうもいかなくてですね。


「……皇太子殿下、時間もありますし、ひとまず許してあげるってのは」

「…………次やったら反省文だ」

「甘くね?」

「言わないの」


 なんとかお説教が終わり、お兄様は退室。教室は、ようやく息ができるとばかりに全員が息を吐きます。料理はまた今度ということで、ポスターなどを作りましょうか。……作りたいのですが。


「……シグニ?」

「何?」

「……その、離してもらうことって」

「お仕置です」


 シグニが後ろから抱きついてきて、離れないのですが。周りからは同情のような、羨望のような、いろいろな視線を向けられます。ちがっ、違いますからね!? 私がやれと強要したワケではありませんから!


「……せ、セフィド公子」

「なんですか」

「よろしければ、普段第二皇女殿下にどのようにしているか教えていただいても!?」


 きょとん、と首を傾げて私を見てくるシグニ。……可愛いです。なんというか、犬にするようにわしゃわしゃ撫で回したいです。シグニが嫌がるのでやりませんけど。

 男子生徒はシグニを囲んで何かを聞き始めます。そんなにお話がしたかったんですね。教室に連れてくればよかったでしょうか。


「第二皇女殿下、公子とは普段からああなのですか?」

「う、後ろから、抱きしめるとか、その……。参考までに、教えていただいても?」


 ……何故か私の方には女子生徒が集まってきました。参考になりますかね? まず、どこに参考にする要素があったんですか?

 大勢に囲まれるというのは迫力がありまして、正直逃げ出したいです。けど、ここで逃げたら絶対後悔します。せっかく話しかけてくれましたし、何かの役に立てるみたいですし。


「……えっと、普段シグニとしているのは」


 普通、のはずです。週末には城に来てもらってお茶会をして、研究のことを話して。たまに夕食も一緒に食べて。……昔からそうでしたが、みなさんは違うんですかね?


「お昼寝もしますし」

「……はい?」

「看病をしてくれるのもいつもシグニですし」

「……セフィド公子が、ですか?」

「そうですよ?」


 シグニの話をしているんですから、当たり前では? ……って、なんで少し離れるんですか! 聞きたいと言われたから教えたのに。普通ですよね? ルーチェだっていつも一緒にいましたし、やってましたし。


「……しっかり教育されてますね」

「優しい顔して、中身は一番黒いからな」

「ここまで来ると病気よね」


 ……誰の話をしてるんですか?






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