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第六十一話




「花はこれでいいですか?」

「テーブル、こっちに置いて」

「もう少し位置を右に」


 学院祭も日に日に近づいてきますが、飾りつけはかなり順調です。授業をする教室と出し物をする教室が違うというのはいいですね。ゆっくりとしっかり飾りつけなどが行えます。


「……あ、その花は飾らないでください」

「え、でもせっかくあるのに」


 女子生徒の持っている花——百合の花を回収して、魔法で収納します。持ってきた花に紛れていたみたいですね。


「飾らないんですか?」

「百合の花は飾ってはいけないんです」


 周りは首を傾げています。当然です。ですが、魔塔の人間として、許可するワケにはいきません。百合の花ともう一つ、薔薇の花を飾りつけることは禁止とされています。魔法的な意味合いではなく、魔塔の昔ながらの規則です。なので、理解はされないと思います。説明するにしても長くなりますし、言っていいことだったか覚えてません。研究には関係ありませんでしたし。


「余った花はどうしますか?」

「それは使えるので置いておいてください」


 飾りつけはほとんど終わりました。残りは花の色や大きさのバランスを調整するのと、全体に保護魔法をかけて本番まで状態を保つことくらいですかね。……問題は、提供するもの。魔法で作るとは言え、変なものにならないとは限りません。昔、魔法で料理をして厨房を爆発させたこともありますからね。一応前科があるので、気をつけねば……。


「味はチョコレートとイチゴでいいかしら」

「こんな風に盛りつけてもいいかもしれません」


 みなさん、何を作ろうかで盛り上がっています。料理はルーチェとエルピス伯爵令嬢、私の魔法。飲み物などは注ぐだけですし、接客など表で動くことは他の方々にお任せしています。……まぁ、人手が足りなければ表に出ますけどね。あまり出たくはありません。


「飲み物にソフトクリームとかつけたいですね」

「混ざりませんか?」

「そこがまたいいんです」


 ……あの、エルピス伯爵令嬢は何故しれっと飲み物の方に? 今作っていますよね。三人で一通り作ろうという話でしたよね?


「ルシア、バター入れすぎ。集中しなさい」

「……慣れてないと難しいんですよ」


 私も盛りつけの方に参加したかったです。失敗がありませんし。いや、ありますけど、損害などはこちらより圧倒的に低いですから。


「第二皇女殿下、使わなそうな魔法も覚えているんですね」

「使い方によっては便利ですから」


 基礎魔法。軽いものを自在に動かしたり、指先から火を出したりと、簡単な初歩中の初歩。あまり覚えている方はいませんが、覚えればとても使い勝手がいいんです。消費魔力も少ないですし、一度に複数使っても問題ありません。


「……というか、教室で作ってもいいんですか?」

「バレなきゃいいのよ」

「バレなければセーフです」


 外からは全員で準備しているように見える魔法をかけてあるので大丈夫です。バレたとしても、多少は許してもらえるはずです。……お兄様とシグニ以外には。


「……だそうですけど」

「匂い、漏れてるぞ」

「……ひぇ」

「……ミスった」


 なんでこういうことを言ったタイミングで、お兄様とシグニが揃ってここにいるんですか……。絶対アイト卿ですよね。後ろで笑ってるの見えてますからね!


「あんた、またチクったでしょ!」

「調理室行けよ! バレて叱られるのお前らじゃなくて俺なんだよ!」


 ……あの、ここ教室なんです。一応、体裁は保ってください。二人とも、素が出てますよ。






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