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第五十六話




「……では、多数決で、カフェということで」


 まさか、二十分も使うとは思いませんでしたね。話し合いの末に、それぞれがメイド服と執事服を着ることになりましたが、問題はここから。服をどう仕立てるかです。

 さすがに自身の家のものや他家のものを着るのはないですね。稀に男爵位の方などが上の爵位の家で働くことはあれど、このクラスにいるほとんどの方は伯爵位以上です。


「城のなら余ってるんじゃないかしら」

「場所で制服が変わりますよ」

「そこはどこかので統一すればいいじゃない」

「まずルーチェ、どの服がどの仕事か把握してます?」


 いろいろと問題は山積み。何よりも、服よりも先に問題がありまして。


「……お兄様(生徒会)の許可、下りますかね?」


 私たちがどれだけ話し合っても、生徒会の会議で案が通らなければ意味がありません。上位貴族の子どもがカフェの真似事をする、というのはかなり難しいです。基本的に誰かにしてもらい、それを享受していますから。


「簡単な焼き菓子なら大丈夫じゃないかしら?」

「昔私たちが作った黒焦げクッキー、忘れました?」


 簡単だからとみんなで作ったら見事に焦げたクッキー。わざわざ厨房貸してもらったのにまともに食べられるものはゼロでしたよ?


「……まぁ、なんとかなるわよ」

「ならないですよ?」


 学院祭では基本的に、自分たちが用意したものを出します。なので、使用人に作ってもらったのを売る、というのはやれません。連れて来ることがダメですしね。なので、やるなら料理ができないとなのですが……。


「焼き菓子とかは前日までに作っておけばいいですけど」

「他のものも出すとなるとそうはいかないわよねぇ」


 一旦、料理については置いておきましょう。貴族で料理ができる方がおかしいので。自分でお菓子作る人はいませんよ。婚約者に渡すのだって、お店で買ったものか、使用人に作らせて最後に自分でラッピングしたのを「作った」というくらいですから。


「ケーキもいいわね」

「一旦やめません?」


 今言いましたよね。料理のお話終わりにしましょうってなりましたよね。お菓子のことしか頭にないんですか?


 無事に決まりましたし、企画書は他の方たちがやってくれるそうです。なので、私たちは前もってお兄様に相談という名のお願いをしに生徒会室まで行ったのですが、


「ダメだ」


 まぁ、そうなりますよね。普通に危険ですし、責任問題もありますから。料理できる人が少ないですし、労働力の差もあります。仕方ありませんから、何か別のものでも考えましょう。


「危険はないです!」

「ルーチェのそれは信用できないだろ」

「ちゃんと料理経験ある人たちでやりますから」

「怪我をしたときどうする」


 なんとしてでもカフェをやりたいルーチェとエルピス伯爵令嬢。危険だからとダメの一点張りなお兄様。話は一切進みません。互いに譲歩もしないため、平行線です。

 ……しばらく時間がかかりそうですし、


「……紅茶いるか?」

「お願いします」


 私とアイト卿は観客側のようですね。それも、ただ互いの意見を言い合うだけの様子を見せられる観客です。今日中に終わりますかね、この話し合い。






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