第五十五話
学院は穏やか、とは言えません。ただ、敵意や悪意は減りましたね。私たちに気をやるほど暇ではなくなったからでしょう。
二学期の半ばに行われる学院祭。その準備が始まります。私たちのクラスも、何をやるか話し合っていますが、決まりませんね。
「まぁ、無縁ですもんね」
「メイド喫茶とかはしてみたいけど、やれるかしら」
普段奉仕される側ですから。奉仕する側の気持ちを知るというのを考えれば、いい機会かもしれません。
今出ているのは魔法研究の発表や楽団演奏、貴族らしい茶会形式の催しなど。並ぶ案はどれも自分たちの優秀さを魅せるものばかりです。目は惹かれると思いますけど、楽しいかと聞かれれば話は別。せっかくの学院祭で普通のことをするのはもったいないです。
「……男子に女装させたいなぁ」
エルピス伯爵令嬢がポツリと呟いたその一言に、何人かの令嬢が目を光らせました。怖い。反応速度が有り得ないくらい速いです。男性の女装って、そんなに魅力的ですか?
「伯爵令嬢、その話詳しく!」
「先ほど話していたメイド喫茶というのについても!」
あら、ほとんどのご令嬢は食いついていますね。相当飢えていたご様子で。
ルーチェたちの知るゲームでは、確か魔法披露をしたんでしたか。ただ奉仕するだけではつまらないですし、魔法も組み合わせましょう。そちらの方が効率的ですし。
「……え、俺たちがメイド服着るのか?」
「いやいや、さすがに冗談だろ」
……まぁ、そうなりますよね。さすがに抵抗がありますよね。貴族としての矜持というものがありますから。
メイド喫茶をやることになりましたが、問題はここから。女子生徒がメイド服を着るのか、男子生徒がメイド服を着るのか。
「普段見れないからこそいいんです!」
「そちらが着てもそうでしょう!」
「スカートなんて履いた姿、見られたら恥です!」
賑やかですね。私以外の方で盛り上がっていらっしゃる。どちらが勝っても面白そうですが、このままでは話が進みませんね。それに、
「女性がメイド、男性が執事をすればいいのでは?」
簡単です。どちらも奉仕している姿が見たいのなら、どちらもそうすればいいんです。それならば男女着れますし、不平等ではありません。
「確かにそうだが……」
「奉仕ってのがふんわりとしすぎてて……」
……それに関しては、婚約者にするようなことをすればいいのでは? シグニはよくそうしてくれますし。皆さん婚約者がいますから、できないことはないでしょう?
「……ルシア。一応言うと、シグニは尽くしすぎよ。普通の婚約者はあんなことしないから」
「……え?」
「セフィド公子のようなことをする方がたくさんいたら嫌ですよ」
……あれ、普通じゃないんですか? 確かに他の方がしているのを見たことはありませんけど。……え、いろいろとおかしいです?
「普通の婚約者はお泊まりとかしませんよ?」
「え?」
「わざわざ看病しに来るのなんてシグニくらいよ」
……えぇ?




