第四十五話
ササッと魔法で酒瓶を片付け、対面するように座ります。さすがに隣には座りたくありません。お酒の匂いが酷いので。
……一応弁明しておくと、こんな感じですが、とっても偉い方たちなんですよ。
ケラケラと笑っているのが【時守】様。お酒を飲んで酔っているのが【幻音】様です。お二人は古くからの友人で、魔塔とも深い縁があるそうです。私もよくお世話になっています。私たちが「おじ様」と言っているのもこの方たちですね。
「いやぁ、ちょっと面白いことを聞いてね」
「どれのことですかね」
「まぁ、話したいんだけど……。アベラス〜、ほら起きて。お酒飲みに来たんじゃないんだから」
あぁ、さすがに起こしますか。ペシペシと軽く【幻音】様を叩いていますが、起きる気配はありません。起きるときはすぐに起きてくれるんですけどね。
話を進めたいからなのか、叩くのが面倒になったのか、【時守】様が魔法で水をかけました。酔ったときは水をかければいいと聞いたことがありますが、本当にやる人がいるんですね。
「……つめてぇ」
「はいはい。酔っ払うのは後でね。ほら、顔洗って。それと水を飲め」
【幻音】様が離席している間に匂いは消しておきましょう。さすがにこの後来るルーチェたちが大変なので。【時守】様はため息をついて顔を手で覆っています。
……【幻音】様は、昔はこんな感じではなかったと聞きます。真面目とはいかずとも、こうしてだらしなくしていることも、人前で弱っている姿を見せることもなかったそうです。どうして今のようになったのかは聞けていません。誰にだって、聞かれたくないこと、知られたくないことはありますから。
「……お前だけか?」
「まだパーティーの最中ですよ」
戻ってきましたけど、酔いは覚めたようですね。よかったです。お話を進められますね。
「どこまで話した」
「アベラスが酔ってたからまだ何も」
お話を聞くと、やはりと言うべきか魔塔から連絡が行っていたようです。気になることもあり、いつものように建国祭に来たものの、パーティーが終わるまで待てなかったと。
人の迷惑とかを考えないで行動する方々なので何も言いませんよ。えぇ。ただ、頭の中でちょっと魔法をぶつけることを想像するだけです。
「それと、あれだ。薬物の」
「それに関しては既に犯人は分かっています。今は証拠集めをしていますよ」
「人身売買の方もか?」
……人身売買? お待ちください。嘘でしょう?
彼女が敵と判断すれば容赦なく排除するのは知っています。実際に被害に遭いましたから。けれど、まさか関係のない人たちを売り払っているのですか?
人身売買は違法薬物と同じく魔塔が禁止しているもの。最近では数も減ってきています。それなのに、まさか自国で行っている人がいるなんて……。
「……被害者数は」
「百人前後。人を売って違法薬物を入手してるんだろうね」
「魔力が多いガキはよく売れるからな」
……魔力を他より多く所有している子どもは珍しいです。多くの子どもが、自身の魔力に耐えきれずに死んでしまうから。無論、全員が全員そうではありません。器が大きく、強固であれば大丈夫です。
亡くなってしまうのは、魔力制御が上手くできない子や身体の弱い子、魔力を使うことを強制される子です。
そしてそういう子は、高値で売られます。子どもは洗脳しやすい。薬と魔法で傀儡にする。道具として使われ、管理される。
他人事ではありません。ルーチェたちが助けてくれなければ、私もそうなっていましたから。




