第四十四話
いろいろと問題は起きましたが、まずは建国祭です。他国の方も来ますし、久しぶりにお会いできる方々もいますから。
「……で、なんでエルピス伯爵令嬢のエスコートがアイトなの?」
「パートナーを選んでないのが悪い」
「その、ごめんなさい……」
エルピス伯爵令嬢は悪くないですよ。元々はご両親と来る予定だったんですし。……私のせいで一緒に入場することになり本当に申し訳ないです。
「嫌なら変わるか?」
「私がご令嬢たちから刺されるのでやめてください」
仲がいいとは言え、さすがに皇太子であるお兄様とは気が引けますよね。それに、ルーチェが婚約者であるヴェルメリオ様ではなく護衛であるアイト卿のパートナーになると相手に口実を与えてしまいますから。
私たちが入場し、お父様とお母様が入場。これでパーティー開始です。
いろいろな貴族の方々が挨拶に来ますが、私としては興味もないのでシャンデリアでも見ていますかね。あ、ちゃんと聞いているフリはしますよ? けど退屈な話を聞いているよりも会場の装飾を見ていたくてですね。
このパーティー会場は【花の間】と呼ばれています。理由は簡単。シャンデリアが百合の花を模したものだからです。キラキラと光る照明と、目立ちすぎず、それでいて地味ではない真珠。いつ見ても綺麗です。
「ルシア、そろそろ終わるよ 」
シグニは私が話を聞かないのを分かっているので、終わりそうなときにこうして声をかけてくれます。持つべきものはやはり自分のことをお世話してくれる人ですね。
シグニの言った通り、それから数分ほどで貴族の方々の挨拶も終わり、ダンスの時間です。まぁ、大半の方が親しい人とのお喋りに使うのですけど。
「今年はおじ様たち、いませんね」
「客室でお酒飲んでるんでしょ」
「飲むのはいいが、あの酒の臭さはどうにかしてほしいな」
私が話を振っておいてなんですが、今はやめましょうか。部屋に戻れば会うのに話す必要はありませんから。
学院のパーティーもそうでしたが、少しは隠す気はないんですかね。男性に慕われるのはいいですが、そのうち女性に刺されますよ。
こちらを堂々と睨んで来るペルクシム男爵令嬢。男性に囲まれているのはなんて言うんでしょうか。男性が女性に囲まれると両手に花と言いますよね。……あれ、ちょっと違うような? まぁ、そんなことはいいですよ。睨んで来てるのは、覚悟しておいてくださいね。あなたが今敵対してるのがこの国一の魔法使いだといつかたっぷりと分からせてあげますから。……まぁ、今自信失くしてる最中ですけどもね。今後の行動で取り戻しますよ。
まぁ、さすがにこんなところで暴れるはずもありません。こちらを睨んではくるものの、大人しいですね。ヴェルメリオ様を使って何かしてくると思っていましたが。
「……えぇ?」
「ルシア?」
……なんでこう、パーティーのときに呼ばれるのでしょうか。魔法で連絡を入れてきた方がいますが、私これでも皇女ですからね? 今自国の祭のパーティーですからね?
【時詠み】様なら待ってもらうのですが、相手が相手ですからね。仕方ありません。
「お母様」
「呼ばれちゃったかしら。行っていいわよ」
さすがと言うべきですかね。あっさりと許可がもらえました。早く行かないと機嫌が悪くなるので急ぎましょうか。シグニたちに頭を下げてから私一人で向かいます。
向かう先は専用で用意している客室。近くに行けば灯りが点いていて、中からは笑い声が聞こえてきます。その後に感じるのは強烈なお酒の匂い。……わかってはいましたが、またですか。
「……パーティーの最中に呼ぶの、やめてください」
ノックをしようにもドアは開いています。中にはテーブルにお酒の空き瓶が置いてあり、二十を優に超えています。ソファではケラケラと笑いながら私に手を振ってくる方と、行儀悪くお酒を飲む方。ここだけを見れば、ただのお客様ですが、あり得ないことです。
かなり抑えていますが、個々に膨大な魔力を宿しています。そしてその異質性は、制限をかけているにも拘わらず揺らぎがないこと。魔力制御は相変わらず凄まじいですね。
「やっほ~。ごめんね」
「んぁ……?」
……あの、既にでき上がってませんか?




