第四十三話
全員戻ってきたところで話を戻しましょうか。私としては冬のときに片づけるつもりだったのだけれど、そうもいかなくなった。身内が傷つけられているのだから、行動を早めましょう。
「相手が動くように誘導するのはどうです?」
「煽って出てくるか?」
「ヴェルメリオ様なら挑発すれば出てくると思いますよ」
ヴェルメリオ? …………あ、婚約者のことか。興味がなくて最近聞いていなかったから忘れていたわ。そういえばあのバカ、侯爵家だったわね。
確かに、あいつには効果あるでしょうね。学院でずいぶんとやらかしているようだし。まさか節度を守れと注意する令息にブチ切れて病院送りにするとはねぇ……。侯爵様、大層お怒りのようだったけれど大丈夫なのかしら。バカのことはどうでもいいけれど、侯爵様と夫人には可愛がってもらっていたのよね。火種が飛ばないようにお母様たちにお願いしようかしら。
「煽ると言っても、何をするつもりなんだい?」
「え、魔法で攻撃するとか」
「第二王女殿下の攻撃で生き残れる人いないと思いますけど」
こういうときにおバカになるのはなんなのかしら。シュバルツ皇家ってもしかして天然一族? それともこの二人だけなのかしら。
「……みんなこうですか?」
「代々こうらしいよ」
「昔からだな」
ちょっとそこ三人。何をコソコソ話してるのよ。アイトに関してはエルピス伯爵令嬢に変なこと吹き込んでないでしょうね。あんたが私の愚痴を騎士団で言ってるの知ってるんだからね。
「とりあえず、魔法はなしね。もうちょっと穏便にどうにかしよう」
「そうなると後手に回ることになるな」
建国祭はおそらく動かないでしょうね。あいつらが騒いでも黙らされる。あいつらがやりそうなこと……。ゲーム通りにするのなら、学院での断罪か。
「あるのは二つですかね」
「学院祭と学期末のパーティーか」
学院祭もないだろう。好感度を上げるイベントだし、バカがべったりで工作をする暇もないはず。となれば、パーティーの方……。あっちは私が一人のときに行動を起こしたいはず。お兄様たちがいると止められる可能性が高い。
あっちの目的を阻止するためにはさせないことが重要。私たちがまとまって動いてどうにかできる。けれど、あの不穏分子をずっと置いておくワケにはいかない。被害も出ている。できる限り早く……。
「ありますよ。学院祭であちらを行動させる方法が」
「学院祭でか?」
「学院祭の最後にあるパーティーです。あそこで一人だけ先に入り、あちらの油断を誘う。好機と見て相手も行動するはずです」
それはそうだけれど、相手を捕まえるための証拠がないじゃない。権力で無理やり捕らえることもできるけれど、あっちの思うツボよ。無理やり捕らえた。話は本当で、隠蔽するためだ。あの女の取り巻きがそう噂を流す。
人を使うのが上手い人間っていうのは、自分は何もせず、あくまで話しただけという体を崩さない。勝手に彼らが行動したことだと切り捨てる。
お兄様たちもそう思っているのだろう。さすがに無謀だと止めている。リスクも高い。学期末のパーティーまで待つべきよ。
「あらお忘れですか? 私は魔術師ですよ。史上最年少の」
ルシアは持っていたカップを置いてにこりと微笑む。笑っているけれど笑っていない。どうやら、今回の件でずいぶんと頭に来ているらしい。ルシアの魔力に慣れていない人なら失神する程度には圧がある。
「証拠がないなら作ればいい。やられたら百倍にして返せ。それが魔塔のやり方です」
そう笑顔で言うルシアは、清々しいほど綺麗だった。




