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第四十二話




 異性に人気って……。そんな人いたかしら。我が国で浮名を轟かせている人はいないと思うのだけれど。


「……あのアバズレだろ」

「口が悪いわよ」


 それで分かってしまう私もダメなのだけれどね……。ペルクシム男爵令嬢。長期休暇に入ってからすっかり忘れていたけれど、いたわね。婚約者(バカ)がご心酔の子が。

 私としてはアレはもらってくれて構わないのだけれどね。いかんせん、他の子の婚約者も寝取……。この表現はよくないわね。ご心酔だからダメよね。確実に私たちと同じ転生者だから余計に質が悪いわ。


「で、そのアバズレさんがやったと?」

「オルコスが近づくとは思えないがな」


 あっちは必死でしょうね。こっちに攻略対象が二人もいるんだもの。本当はクリム(バカ)を攻略してからのお兄様を狙っていたのかしらね。残念ながら親しくないから諦めたのかしら。

 ゲームではあった我が家のいざこざがない。ゲームで(ルーチェ)は、独りぼっちだったもの。家族に嫌われるようなことをしたのかは分からないけれどね。開始以前から嫌われていたもの。……というよりも、距離を置かれていた気がするわ。


「どうやら、情報を集めているときに何度も声をかけられていたようです」

「そのときにそいつの持ってる薬を盛られたってことか? んな不用心な」

「ものによっては、匂いだけで操れる薬もあるんですよ」


 ……ペルクシム男爵令嬢が香水みたいに薬を纏っていたってこと? バレるかもしれないのに、よくやるわね。それに、もし本当なら前に接触したときに分かるはずでしょう?

 お兄様も同じことを思ったのか、訝しげな顔をしている。気づかないはずがない。ルシアならなおさらだ。魔術師であり、薬のことにも精通している。


「違法薬物の面白いところはそこなんですよ。基本的に、盛られた側からしか匂いがしないんです」

「……無臭ってことですか?」

「えぇ。なので普段使っている香水に薬を混ぜて知らぬ間に服用させることもできます。違法薬物で完全に操られる人からは独特な甘い匂いが漂ってくる。被害者は分かっても犯人が分からないのです」


 ……魔塔が手を焼くワケだ。被害者は犯人のためにと行動する。解き方もありはするけれど時間がかかるはず。時間をかければかけるほど、犯人は逃げる時間を得る。

 思わず顔を顰めてしまう。魔法による証拠はある。けれど、こういうのは証言もなければいけない。魔法による証拠だけでは偽装と言われてしまうことがあるから。


「令嬢のことは分かった。だが、問題はいつ捕まえるか。それとオルコスをどうするかだ」


 ピタリと、全員が固まる。……お兄様、オルコス卿の名前は出さなくてもよかったんじゃないですかね。普通にやめてください。いろいろとダメージが……。

 意外と天然さんらしい。知らなかったな。いや、天然だとしても、今のはないと思いますけどね。ルシアとか固まって動かないですからね?


「……オスクロ。今のはないと思うぞ」

「すまない……?」


 分かってないですね。緊張感保ってくださいよ。今かなり大切な話をしてるんですから! キョトンとしないでください。可愛いですけども! 何こんなときに自分の魅力全開にしてるんですか!

 エルピス伯爵令嬢も顔隠すな! 赤くなってるのバレてるぞ。ルシアはいい加減戻ってきなさい!






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