第三十四話
案の定と言うべきなのか、ルシアはかなりはしゃいでいるわね。お祭りなんて、あの時以来だもの。ルシアが覚えていないのを考慮しなかったのは私のミスね。気を付けないと。
基本ルシアが足を止めて私たちも見るけれど、全然進まないわね。私たちもゆっくり見られるからいいけれど、この子に買い物させるととんでもないもの買ってきそうね。現に骨董屋であり得ない値段の魔道具買ってるし……。
「……これ、貴族ってバレバレだろ」
「こんな値段のものを買えるのなんてかなりのボンボンだものね」
「まぁ、身分はまだ分からないですし……?」
……これだけ買ってる時点で、かなり上の身分だとは分かりそうだけれど。オルコス卿なんてルシアの荷物持ちにされてるわよ。まぁ、剣持ってる護衛二人がいる時点でだけれども。
日も傾いてきて、ルシアは大変満足そう。私たちも買いたいものは買えたし、後は帰るだけね。ルシアが浮かれているのか少しだけ前を歩いているけれど、さすがにこの距離ではぐれることはなさそうね。……そう思ったのに。
「……ルシア?」
「え、は……」
突然、目の前にいたルシアが消えた。空気が抜けたような感覚があり、ルシアがいたはずの場所へと風が集まっていく。魔力反応もない。さっきまで確かに目の前にいたのに。心臓が早鐘を打つ。どうして。なんで。
「ルシア、ルシア!!」
「おい、落ち着け」
走り出そうとすると、アイトに腕を掴まれて阻まれる。落ち着けって、落ち着けるワケないじゃない。またいなくなったのよ。また、あの時みたいに。昔とまったく同じ。あの時もそうだった。私が、ルシアをちゃんと見ていなかったから。また……!!
手足が震える。あの時ルシアが無事だったのは、どうにかする方法を知っていたから。あの子が興味を持ちそうなものを渡して、できるだけ周りから目を逸らした。そうすることでしか、あの子の心を守る方法が分からなかった。もし今回のことで、あの時のことを思い出したら? ようやく昔みたいに、少しずつ人と関わるようになってきたのに。
「どうしよう。あの子また……」
「オルコス卿、魔道具に反応は」
「ないです。一度戻り捜索しましょう。ここにいても何もできません」
……そうよね。今ここで何をしても変わらない。急いで話をして、ルシアを捜さないと。ルシアにもらった魔道具で城まではすぐに戻れる。問題はルシアがかけてくれた変装の魔法だけれど、解けるのかしら。これ……。
「ルシアの研究室に魔法無効化の魔道具があるはずだけど」
「……あそこから魔道具探すのは無理があるな」
……お母様に頼みましょうか。準備で忙しいでしょうけれど、ルシアの魔法を解けるのはお母様くらいだもの。
魔道具で城に戻れば、何故かは分からないけれどお母様がいた。理由を聞けば、嫌な予感がしたから以前ルシアに教えてもらった魔道具の転移先に来ていたらしい。ここに私たちが転移しなければ何事もなかったとなるし、転移すれば何か遭ったのだとすぐに分かる。さすがと言うか、ルシアも何かあったときの対策はしていたのね。
「それで、ルシアは?」
「……いなくなりました。突然消えたので、どこかに飛ばされたのだと思います」
情けない。もっとしっかりとルシアを見ていればこんなことにはならなかった。ちゃんと手を握っていれば……。昔と同じことを繰り返して、バカみたい。
「そう、ルシアが……。あなたたちが無事でよかったわ。ルシアに関しては私から陛下に伝えます。オルコス卿とアイト卿はこの子たちをお願いします」
「分かりました」
……どうしよう。また独りにさせてしまった。あの時も、私は戻ってきて、ルシアは帰ってこなくて。もう独りにしないって決めたのに。何やってるのよ。私は……。




