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Ancient&Gravity  作者: ナサ
19/24

EP#19:司令部にて

▼▼▼▼


司令部。シェナリーがタッチパネルに何かを入力する。


「赤旗くん、ここがIRS最高司令本部よ」


自動ドアが開き、中へ通される。

奥には大きなモニターがあり、広いオペレータールームになっている。

最高司令部と言うだけあって、なかなか重々しい雰囲気だ。

薄暗い室内にたくさんある小さなモニターから漏れる光が眩しい。


「スカイ」


吹き抜けの上の階に向かって、児島が声をかけた。


「何」


スカイがぶら下がるように頭だけを律たちのいる階へ覗かせる。

初めて会った時と同じ、無表情だ。


「お前、なんで指示聞かなかった。

Cだっつったろ」


「なんで?」


想定外の返答。スカイは上の階からくるりと身体をひねって飛び降り、綺麗に着地した。


「なんでって、言われた通りに動けよ。でなきゃ指示の意味がない。これは仕事なんだぞ」


「別に誰かが死んだとかそんな事じゃないんだからいいじゃないか。僕は最低限の仕事しかしないよ」


彼女は悪びれる様子もなく続ける。スカイは恐らく、そういう性格なのだ。

そんなやり取りを見ていたシェナリーが溜息をつく。

「スカイ、今回のエンシェントは初めて見たタイプだったでしょ。新型だったの。今回は死者が出なくても、データが無きゃいずれそういう事になるかも知れないでしょ?」

「説教?聞きたくない。またエンシェントが来たら僕が出るから」


スカイが踵を返し、司令室から出て行く。振り返る事はなかった。

彼女の背中が司令室の扉に隔てられて、見えなくなる。


「もう……あの子……」


もう一つ、大きな溜息をついてシェナリーが肩を落とす。


「あはは、児島さんとシェナリーさん、スカイのお父さんとお母さんみたい」


背後から明るい声が聴こえた。

その声は律が思っていた事をそのままストレートな言葉にする。

そして声の主は律たちの所へ駆け寄って来た。


「ニコちゃん……!」

シェナリーが再び赤面し、少しだけ顔を伏せる。


「ニコ……?」

律はその名前に聞き覚えがあった。ユーリアが口にしていた名前だ。つまり、彼女もアレースパイロット。

“ニコ”はその緑色の瞳に確かに律の姿を映した。

自らの身を包むものとは色違いのジャンプスーツを見て、

「あれ!!君今日来るって言ってた新しいパイロット?」

と尋ねた。


「まだ決めてはないけど、そうだよ。名前は赤旗 律。よろしく」


「リツかー、私はニコ・ヴェルデ!私もパイロットなんだー、よろしくね!」


ニコは笑顔でそう言って、半ば無理矢理律の手を掴んだ。どうやら握手のようだ。

長い黒髪を頭の後ろ高い位置で結ったポニーテール。健康的な褐色の肌。そして、綺麗な緑色の瞳。

そういえばユーリアが言っていたようにニコは怪我をしているようで、頭には包帯を巻き付けている。


普通の女の子……、そう思っていた律だが、近くで彼女を見て驚愕した。



「ニコ…………?」

「なあに、リツ」

「ニコって、身長……何㎝あるの?」


ニコは少し考えてから、

「うーん……この間の身体測定では185㎝って言ってたよ」

と答えた。


律とニコとは11㎝の身長差があるという事になる。

もちろん、律の方が小さい。

握手ができるほど近付くと、律がニコの顔を見るには少しばかり上を見上げなければならない。


「ニコ、もう怪我はいいのか?」

「もう平気!」


ニコが答えたその瞬間、再び警告音と赤いランプが点滅した。

前方の大きなモニターに、宇宙船でもアレースでもない異形の物体が映しだされている。


「児島くん……エンシェントよ」

「ああ、今日は多いな。これで三回目だ」




「……エンシェント」


ニコが小声で呟いたかと思うと、

「シェナリーさん児島さん!私、アレース乗る!」

と叫び残して司令部から走り去って行った。


律は何故か、とても複雑な気持ちになる。

もしも自分が本当にパイロットになれば、こうして出動しなければならない。もしかしたら死ぬかもしれないというのに、そうして“自分が戦う”と走らなければならない。

やはりそれだけの理由がどこにあるというのだろう。


ニコは、どうして走る事ができたのだろう。



「仕方ないわね。ああ言ってはいたけど、手負いのニコちゃんだけじゃ不安だし……今動かせる他のアレースはスカイの004號だけね。スカイに行かせるしかないわ」

「テオバルドはどうしたんだ?」

「テオバルドくんの005號はメンテが終わってないの。安全面を考慮するとやっぱり実戦には出せないわよ」


そう言ってシェナリーは黒いヘッドマイクを装着した。


「ニコとスカイがエンシェントと戦うんですか?」

「そうだ。君も同じ仕事をするんだからよく見ておけばいい」


児島は律の肩に軽く手を置いて、そしてシェナリーと同じくヘッドマイクを着ける。


「出動準備にはどれくらい時間がかかるか算出してくれ。

アレースが来るまではある弾2割くらい使うつもりで迎撃しろ」

児島がオペレーターに指示を出す。

「了解、ARES007號及び004號、あと90秒で出せます!」

画面を確認し、振り返りながらオペレーターが言う。

そして、一直線に近づいてくるエンシェントに幾つもの弾丸が撃ち込まれる。炎こそ出ないが、強い光で目標が見えないほどだ。


「………!!」

これがエンシェントとの戦いの最前線。眩しい光の中で律は唾を飲む。


「エネルギー装填完了!NCS、心臓接続装着共に異常なし!接続率100%です!」


オペレーターの言葉を聞いてシェナリーはヘッドマイクに向かって言った。


「了解。ニコちゃん、スカイ、準備はいいかしら?

ARES007號、004號、出撃!」





前回の更新から少し日が開いてしまい申し訳ありません;;

これからはできる限り毎日更新を目標としたいのでよろしくお願いします!

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