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Ancient&Gravity  作者: ナサ
15/24

EP#15:SCS

▼▼▼▼


「私よ、たった今SCSに着いたわ。

メイレン、そっちの様子は?……ええ、ええ。そうなの、本当に?」


再びスマートフォンで誰かと通話し始めたシェナリーを横目に、律はショックを受けていた。

律は日本でも身長はそれほど高くないが決して低いわけでもないので、“ちっちゃい”なんて言われたのは初めてだ。

「そんな事ないだろ、お前が高いだけだよ」


言葉を絞り出す律に構う様子もなく、クウェイルは続ける。

「だってリツ、僕のバディより小さいよ。日本人ってみんなこれくらいなの?」

「赤旗くんクウェイルくん!ほら!行くわよ!」

シェナリーが出口から呼んだ。相変わらずタイミングが悪いというか、いや今回はある意味神懸かり的なタイミングとも言える。

確かに、日本でクウェイルほどの身長がある人は滅多に見かけないし実際会ったことがない。

律の身長から見て、クウェイルは恐らく190㎝と少しあるだろう。

いかにも、住む世界の違う人間といった感じだ。


そのまま、入ってきた所と同じ場所から外に出る。今度は橋ではなく真っ直ぐ繋がった廊下のようになっていて、そのあと緩やかなスロープを降りる。かくして律はSCSの地に足を踏み入れる事になった。

HSLの搭乗口はまるで空港のようになっていて、クロークに預けた荷物の検査が厳重に行われていた。それこそ、空港のようなスタイルではあるが空港のそれよりも遥かに厳しく細かい検査だ。


「赤旗くんこっち。ボディチェックを受けてからじゃないとSCS内部へは入れないわよ」


シェナリーが手招きする。

なるほどここはSCSの関所らしい。

金属探知機や軽いX線検査、問診と検温などを受けてから、最後にもう一度何かの探知機であろう大きなゲートをくぐる。


放たれた風景が眩しくて、思わず目を瞑る。ゆっくり瞼を開けると、その奥には宇宙が広がっていた。


「これ……!」


「ようこそ、SCSへ」


シェナリーが微笑みながら言う。

ここがSCS。

地面は砂でも土でもない。アスファルトでもコンクリートでも鉄でもステンレスでもない。

何で出来ているのか分からない。

地面は辺り一面真っ白で、意外とと明るい。上を見上げれば宇宙がある。


律がしばらく上を見上げていると、シェナリーが自慢げに言った。

「すごいでしょ。これ、特殊なガラスと特殊なフィルム型太陽光発電パネルで出来た天井なの。

透明だから見えないけど、SCSは最新式の超薄型太陽光発電パネルで覆われてて、そこで得た太陽光エネルギーを電気に変換して、ここで使うエネルギーの全てを賄ってるのよ。ここは宇宙空間だから雲もないし、24時間365日、常に太陽光エネルギーが届くの。地球上よりもずっと強いエネルギーがね。

見て、あそこ。」

シェナリーが指差す先に視線をやる。すると、大通りらしき道筋に沿って植えられた街路樹のようなものが目に入った。


「木……?」

「そ。

太陽光が届くから植物も育つの。まあここの環境に適応できるように多少品種改良はしてあるんだけど、ちゃんとした植物よ。

SCSに季節はないけど花も咲くのよ。

SCS内の大気、とりわけ酸素は機械で化学反応を起こして発生させている他にも、こうやって木や花を植えて、その植物の光合成によって作り出しているの。」


「今は出撃命令が出てないみたいだけど、アレースが動いてる時はここから直接見る事が出来るんだよ。それじゃリツ、シェナリーさん。僕はこの荷物、届けに行かなきゃならないからこれで。」


シェナリーの説明に付け加えるようにそう言って、クウェイルは左側に見える白く横に長い建物に向かって歩いていった。クウェイルの荷物の届け先といえば、恐らくあれがIRSのラボ。ブルーファイア博士のいる研究室だ。


「私達がこれから向かう管制本部がIRSの心臓だとすれば、あそこはIRSの脳みそ。どちらも欠けちゃならない重要な機関よ。」


クウェイルの広い背中を見送りながら、シェナリーが言った。


「そうだ。あの馬鹿のせいでパイロットが負傷してるの。

医療班によると全然大した事ない怪我みたいなんだけど、気になるからお見舞い行かなきゃ……」


パイロット……。律は少し下を向いて、すぐにシェナリーの目を見てから言った。


「あの、俺も行っていいですか?」

「え、……ああ、一緒に行きましょう。彼、きっと喜ぶわ」

「喜ぶ……?」






突然、鼓膜を刺すような警告音が辺りに鳴り響いた。

地平線と平行にSCSの天井にあたるガラスに太く赤い線が映し出され、その線の内側で黒い“Emergency occurred!”の文字がまるで駅の電光掲示板のように流れていく。

赤いランプが点灯し、目がちかちかする。明らかに只事ではない。


「シェナリーさ………」

律が彼女に声を掛けようと振り返った時、既に彼女はスマートフォンでどこかに指示を出していた。


「今出せる機体は?

……了解、ならあの子一人で十分だわ。

総員に告ぐ!只今より、作戦Cを展開!各自戦闘配置!

ARES004、オールエンジン稼動!ナーヴコネクト、95%!」


シェナリーは深く息を吸い、スマートフォンを握り締めてその向こう側に告げた。





「アレース004號、出撃!!」

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