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Ancient&Gravity  作者: ナサ
14/24

EP#14:到着

▼▼▼▼


『あと20分でドッキングです。お荷物はクロークに預け、ドッキングの衝撃に備えてください。』



無機質な機械音声で目が覚めた。

ドッキング。


その言葉を聞いて律は飛び起き、荷物をまとめた。いよいよSCSに到着するようだ。

あまり散らかしてはなかったので部屋はすぐに片付いた。律は部屋の鍵を持ってドアをくぐる。

鍵を掛け、あの赤いスーツケースを持ってクロークへ急いだ。


エレベーターを待つ間も、エレベーターに乗っている間も、緊張と期待が混ざり合ったような不思議な感覚だ。


クロークは1階、コックピットは最上階。時間がなかったのでスーツケースは一番手前のスペースにセットした。衝撃があっても落ちないようにロックが掛かる仕組みだ。

ロックが掛かったのを確認した律は走ってエレベーターホールへ向かい、意外にも早く来たエレベーターで最上階を目指した。

動悸がする。

少し走ったから、ではないと思う。それにしては激しい。


最上階に到着し、エレベーターを降りると、そこには眠そうに目を擦るあの青年の姿があった。


「クウェイル!」


名前を呼ばれた彼は律の方を向き、力の無い笑顔でひらひらと手を振った。


「やあリツ。また会ったね。もうすぐドッキングだよ」

「そうみたいだな」

クウェイルは小さく欠伸をしてから

「そういえばシェナリーさんは?人事部だし、もう会ってるでしょ?」

と尋ねた。


「さあ……もう来てるんじゃないか?」

「あれ、知らないんだ?一緒に来たのかと思ったよ」

「え?」

「同じ部屋なのかと思った」

「なんでだよ。部屋は別々だし、部屋の階も違ったぞ」


同じ部屋なんてとんでもない。

律はそう思った。

まあそうだよね、とクウェイルは笑った。

そんな会話を切り裂くようにコックピットの橋からシェナリーが顔を覗かせた。

「よかった赤旗くんちゃんと来てた!宇宙服は着なくていいから早く!ドッキングよ!

あれ、クウェイルくん?なんで構成員用HSLにいるの?」

シェナリーはクウェイルを見て不思議そうに言った。

「あーー……資料の回収頼まれてIRSまで取りに行ってたんですよ。ほら、この間本部に送信したエンシェントのデータ、解析が終わったそうなんで」

「もう終わったの。さすがプロねぇ……で、誰に頼まれたの?」


「…………研究室です」


コックピットに入りながらクウェイルは答える。律はその時、少し彼の目が泳いでいる気がした。

シェナリーは合点のいった様子で

「ああ、お父さんね」

と言った。

クウェイルの表情が少し強張る。

「お父さん?」

シートベルトを締めながら、律は尋ねた。クウェイルの父親はIRSの研究者なのだろうか。


「あら、彼のファミリーネーム、知らない?

彼はクウェイル・F・ブルーファイアくん。ジャンプスーツを見れば大体察しはつくと思うけど、スカイと同じ、アレースパイロットよ」


「ブルーファイア……?


……え!?」


聞いた事のある名前。

そうだ。アレース計画の考案者の名前は確か。


「ブルーファイア博士の……!?」


「そう。彼はロボット工学の神とまで呼ばれたアレースの開発者、ジェラルド・A・ブルーファイア博士の御子息なのよ」

「やめてくださいよシェナリーさん」

クウェイルは溜息をついた。


「クウェイル……お前凄い奴だったんだな。びっくりしたよ」


確かに、ネットのニュースページで見たブルーファイア博士にどこか似ている気がする。クウェイルの透き通るような美しい青い瞳、ストレートで艶のある金色の髪。

さらに綺麗に筋が通っていて鼻が高いために、横顔まで美しい。所謂“王子様”的な雰囲気がある。

彼の端正な顔立ちはどうやら父親譲りらしい。


「凄い?どこが。

僕はただあの男の息子として生まれただけだ。

まあ、あんな気違いを親に持つ確率を考えたら、確かに凄いかもね」

クウェイルは嫌味っぽく吐き捨てた。博士と過去になにかあった事はもはや明白である。


「クウェイルくん……

さあ二人とも、ドッキングが始まるわ。ちゃんと座ってなさい」

「……!」

「リツ、平気だよ。出発の時みたいな衝撃もGもないから」

律の不安を察したのかクウェイルが言った。


どんどん減速していくのが分かる。いよいよだ。




身体の芯に響くような衝撃が一瞬、エンジンが止まっていく音が聞こえた。


「ドッキング成功ね」

合図のようにシェナリーが呟き、安全バーを上げる。

「え、もうですか?」

「そうだよ。SCSだ」


拍子抜けした。深く息を吐きながら安全バーとシートべルトを外して立ち上がった。


するとクウェイルが笑いながら

「さっきから思ってたけどリツ、君……ちっちゃいね!」

と少し小馬鹿にするように言った。


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