EP#11:仕事
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私はどこにいても、安全な場所から指示を出す事しかできない。
私達指揮官がどれだけ無茶な指示を出そうが、保守的な指示を出そうが、実際現場で命を懸けてエンシェントと戦うのはパイロット達。
私の半分ほどしか生きていない、若い彼らにそんな重いものを背負わせてしまっている事、それに疑問を抱いていながら何も行動を起こせない事。
本当に申し訳なく感じているし、私自身情けない。
私はなんでこんな仕事をしているんだろう。
「シェナリーさん、大丈夫ですか?」
心配そうな律の声で、シェナリーははっとした。
通話状態が切れた画面のままスマートフォンをきつく握り締め、そのまま某然としていた。
「赤旗くん……」
「お仕事大変そうですもんね。
疲れてるんでしょ?俺はちょっと歩き回ってから部屋に戻るんで、気にしないで先に戻って休んでください」
シェナリーはそういう律の言葉を遮るようにクロークの中へ走りながら叫んだ。
「そこで待ってて、話しておきたい事があるの!」
「えっ……?」
律が返事をする間も無く、彼女の姿はクロークの奥へと消えていった。
仕方なくエレベーターホールの壁にもたれ掛かって立っていると、大きめの鞄を持ったシェナリーが戻ってきた。
「お待たせ。3階、押してくれる?」
「え、あ…はい」
律は言われるがままエレベーター脇のボタンを押す。
程なくしてエレベーターは到着した。開くドアの向こうには誰もいない。
そのまま二人でエレベーターに乗って、3階へ向かった。
1階から3階まで、一気に昇る。
エレベーター内は終始無言だ。あのよく喋るシェナリーでさえ、何か物思いに耽るように、ずっと俯いている。
律にはなぜかそれが不安に感じて仕方がなかった。
シェナリーの言う“話しておきたい事”という内容も、とても良いものとは思えない。
エレベーターが止まった。3階だ。
「こっちよ」
シェナリーが先を歩く。
律もそれを追いながら、声を掛けた。
「気が利かなくてごめんなさい、荷物持ちますよ」
「ああ、いいの。私の私物だしね。ありがと」
シェナリーが律に笑いかける。初めて会ったときと同じ、明るい笑顔だ。律はそんな彼女の表情に安堵する。
その後は他愛ない事を話しながら廊下を歩いた。さっきまでの沈黙が、まるで嘘のようだ。
しばらくして、シェナリーが足を止めた。ポケットから鍵を取り出してドアを開ける。
「?シェナリーさん、ここって」
「私の部屋よ。入って」
部屋の内装は律の部屋と同じだ。1佐指揮官とはいえ、特別な待遇があるわけではないようだ。
しかし、部屋中に微かに甘い香りが漂っている。
「ちょっとシャワー浴びてきていいかしら。適当に座っといて。すぐ戻るわ」
シェナリーは持ってきた鞄からドライヤーと着替えを取り出してシャワールームのドアノブを捻りながら言った。
「え」
律の返事を待たず、シェナリーはシャワールームのドアを閉めた。




