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Ancient&Gravity  作者: ナサ
10/24

EP#10:電話

挿絵(By みてみん)

▼▼▼▼


エレベーターの扉が開く。

すぐそこの角を曲がった所がクロークだ。

律はさっきクロークに向かった際に曲がった角とは反対側を覗きながら、廊下を見渡した。

突き当たりが見えないほど長い。

車に乗っている時に聞こえる程度のエンジン音が廊下にこだましていた。


「1階にはクロークしかないわよ」


聞き覚えのある声にはっとして振り返るとそこにはやはり、思った通りの人物が立っていた。


「シェナリーさん」

「赤旗くん、散歩?まだ到着まで4時間くらい掛かるし、ゆっくりお昼寝でもすればいいのに」


名前を呼ばれた彼女はそう言って笑う。


「なかなか寝付けなくて……」

「あら、枕が変わると眠れないタイプ?」

「そうなのかもしれないですね」


律も少し笑う。どうやらシェナリーのペースには他人をリラックスさせる力があるようだ。

聞くと、シェナリーはクロークに預けていたドライヤーと化粧品、そして着替えを取りにきていたらしい。そういえば今のシェナリーはジャンプスーツを着ていない。社員証を首から提げ、社員証のストラップ部分には3色ボールペンを横向きに留めている。

普段インナーとして着用している服なのか、今彼女は意外と生地のしっかりとしたノースリーブのトップスとショートパンツを着用している。

いずれも短い衣服の袖部分からすらりと伸びる白い肌が眩しい。


「ふふ、さっきから私の脚ばっかり見て……そんなに気になる?

男の子ね。私の部屋、来る?」

律の視線に気付き、シェナリーは冗談っぽく少し大袈裟に身体をくねらせる。


律は、シェナリーが姿勢を変えたことによって覘くやはり白い胸元や太腿に困惑する。


「あ……!いや、別に見てたわけじゃ……!!」

「 焦ってる?可愛い」

「からかわないでください……!」

目を伏せながら言う律に彼女は笑いながら軽く謝罪した。


本当によく笑う人だ。


律はそう思った。これだけ笑って生きられたら、幸せだと思う。

自分の人生を振り返ってみて、まあ不幸だったとは思わないが、もっともっと楽しく生きる事も出来たと思う。律にはちゃんと両親がいて、愛情も受けてきた。それだけで十分幸せな事なのに、心の奥底で本当に自分は幸せだったのかと自問し続けている自分がいるような気がする。

幸せだった、と思うけれど。


自分はこれ以上の何を求めているのだろう。

今までの幸せに何の疑問があるのだろうか。



突然鳴り響いた電話の音で、律ははっと我に返った。


シェナリーがポケットからスマートフォンを取り出し、相手を確認してから電話に出る。


「児島くん?仕事中でしょ、何なの?……え、ちょっと何やってるの!?

あなたそれでも1佐指揮官!?なんでそんな無茶な指令ばっかり出すのよ!」


シェナリーが電話に向かって大声を出す。電話の相手は1佐指揮官、つまりシェナリーの同僚らしい。


「分かったわ、取り敢えず心臓接続を完全遮断して一旦退避!今回は仕方ないからエンシェントの処理は例のアレを使って!今はとにかく機体の回収及びパイロットの応急処置を最優先!」


息を継ぐ暇も無いほどの早口でそう言い切ってすぐ、シェナリーは電話を切った。


「何かあったんですか?」

「ええ……ちょっとまずいわね。今私にはここから指示を出す事しか出来ないけど……」


そう言いかけて、シェナリーは口を噤んだ。



SCS到着予定時刻まで、あと3時間54分を切ったところだった。


10話目です!!‎\\\\ ٩( 'ω' )و ////

二桁です!!!

キリがいいので10話の為にイラスト描き下ろしました!


☆お陰様で総合PVが700を突破しました!☆

たくさんの人に読んでいただけて嬉しいです!これからもよろしくお願いします!

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