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ビーストギア Another  作者:
モズキャッチャー編 2

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第二篇「メモリーを試す紀人」

『ビーストギア Another』


第二篇「メモリーを試す紀人」


第1話「飛べるなら、飛ぶだろ」


「…………よし」


 紀人は周囲を見回した。


 人はいない。


 もう一度、確認する。


 いない。


「これなら大丈夫だろ」


 紀人は。


 オニヤンマのメモリーを手に取った。


「…………」


 じっと見る。


「オニヤンマ、か」


 トンボ。


 しかも。


 かなり速いやつ。


「飛べるんだよな」


 紀人の口元が。


 少しずつ緩んでいく。


 何も。


 遊ぼうというわけではない。


 これは確認だ。


 性能確認。


 実際に使ってみなければ。


 分からないことだってある。


「実戦でいきなり使って、上手く飛べませんでしたじゃ困るしな」


 うん。


 我ながら。


 非常にもっともらしい。


「じゃあ……」


 ビーストギアへ。


 オニヤンマのメモリーを装填する。


「行くか」


     ◇


 身体が浮く。


「おお……!」


 地面から。


 足が離れる。


「おおお……!」


 さらに上へ。


「すげえ……!」


 飛んでいる。


 本当に。


 自分の身体が。


 空中に浮いている。


「これ……」


 紀人は。


 ゆっくり前へ進んでみる。


「おお!」


 進む。


 止まろうと思えば。


「っと」


 止まる。


「止まれる!」


 その場で浮いたまま。


 紀人は目を輝かせた。


「すげえな、これ!」


 次は。


 少し右へ。


「おっ」


 左。


「おお!」


 後ろ。


「こっちも行ける!」


 上。


 下。


「なるほど……」


 紀人は。


 少し真面目な顔になる。


「結構、自由に動けるんだな」


 ここまでは。


 間違いなく。


 性能確認だった。


     ◇


「じゃあ」


 紀人が。


 前を見る。


「ちょっとだけ速くしてみるか」


 少しだけ。


 本当に。


 少しだけ。


 そのつもりだった。


「よっ!」


 加速する。


「おおっ!?」


 予想以上に。


 身体が前へ出た。


「速っ!」


 風が。


 顔へぶつかる。


「うおおおお!」


 速い。


 楽しい。


「すげえ!」


 そのまま飛ぶ。


「これ、どこまで出るんだ!?」


 さらに加速。


「うおおおおおお!」


 さっきまでの。


 慎重な性能確認は。


 もう。


 どこにもなかった。


     ◇


「よし!」


 紀人は。


 一度止まる。


「次、旋回!」


 身体を傾ける。


 曲がる。


「おお!」


 もう一度。


 今度は少し速く。


「うおっ!」


 ぐるり。


「すげえ!」


 反対。


「おおお!」


 急停止。


「っと!」


 止まる。


「…………」


 紀人は。


 空中で。


 満面の笑みを浮かべた。


「何これ」


 一拍。


「めちゃくちゃ楽しいじゃん!」


 完全に。


 遊んでいた。


     ◇


「だったら……」


 紀人が上を見る。


「どこまで一気に上がれる?」


 上昇。


「うおおおおお!」


 一気に。


 高度が上がる。


「高っ!」


 止まる。


 下を見る。


「…………」


 少し怖い。


 だが。


「じゃあ……」


 今度は。


 下。


「一気に降りたら――」


 考えるより先に。


「行くか!」


 降下。


「うおおおおおおおお!」


 地面が。


 一気に近づいてくる。


「速い速い速い!」


 さすがに怖い。


「待って待って待って!」


 急停止。


「うおっ!」


 どうにか止まる。


「…………」


 地面。


 近い。


「…………」


 紀人は。


 ごくりと唾を飲み込む。


「危な……」


 数秒。


「…………」


 そして。


 笑う。


「でも面白え!」


 反省。


 なし。


     ◇


「オニヤンマって」


 紀人は。


 再び空中へ上がる。


「もっと変な飛び方してなかったっけ?」


 前へ。


 急停止。


 横。


 反対へ。


 上。


 下。


「おお!」


 また止まる。


「これだ!」


 紀人のテンションが。


 さらに上がる。


「トンボっぽい!」


 右。


「おお!」


 左。


「うおっ!」


 後退。


「これもできる!」


 その場で停止。


「すげえ!」


 急加速。


「うおおお!」


 急停止。


「っと!」


 紀人は。


 完全に夢中になっていた。


「これ絶対楽しい!」


 誰に言うでもなく。


 一人で叫ぶ。


「もう一回!」


 その時だった。


「…………」


 少し離れたところに。


 一人の女性が立っていた。


「…………」


 東だった。


     ◇


「よし!」


 紀人は。


 満足げに地面へ降りる。


「だいぶ分かってきたな」


 うんうんと頷く。


「やっぱ実際に使わないと――」


「何が分かったの?」


「うわあっ!?」


 紀人が飛び上がる。


 振り返る。


「…………」


 東。


「…………」


「…………」


 目が合う。


「…………東さん」


「何?」


「…………」


 紀人は。


 ゆっくり周囲を見る。


「いつからいました?」


「そうね」


 東は少し考える。


「『これ絶対楽しい』あたりからかしら」


「…………」


 紀人の顔が。


 引きつった。


「結構最近ですね」


「その前からいたわよ」


「…………」


「今のは、あなたが私に気づいていなかった時間」


「…………」


 逃げ道が。


 消えた。


     ◇


「いや」


 紀人は。


 咳払いをする。


「違うんですよ」


「何が?」


「遊んでたわけじゃなくて」


「へえ」


「性能確認です」


「…………」


 東は。


 黙って紀人を見る。


「ほら」


 紀人は説明する。


「実戦で使う時に、いきなりじゃ危ないじゃないですか」


「そうね」


「だから、事前にどんな動きができるのか確認しておこうと」


「なるほど」


「はい」


「それは正しいわ」


「ですよね!」


 紀人の顔が。


 一気に明るくなる。


「やっぱり――」


「じゃあ質問」


「はい?」


「さっきの急降下」


「…………」


「あれは何を確認していたの?」


「…………」


 紀人が黙る。


「急降下時の……」


「うん」


「その……」


「うん」


「…………停止性能?」


「疑問形ね」


「停止性能です」


「じゃあ、その前の急旋回は?」


「旋回性能」


「何度もやってたわね」


「念入りな確認です」


「楽しそうだったわね」


「…………」


「『これ絶対楽しい』って言ってたわね」


「…………」


「性能確認?」


「…………」


 紀人は。


 しばらく考えた。


 そして。


「途中から」


「うん」


「ちょっとだけ」


「うん」


「楽しくなりました」


「ちょっと?」


「…………」


「紀人?」


「かなり楽しくなりました」


「最初からそう言いなさい」


「はい……」


     ◇


「いい?」


「はい」


 東の声が。


 少し変わる。


 紀人も。


 それを察して。


 姿勢を正した。


「性能を確認すること自体を怒ってるんじゃないの」


「はい」


「むしろ必要なことよ」


「はい」


「でも」


 東が。


 紀人を見る。


「分からないことの多いものを、一人で好き勝手に試すのは別」


「…………」


「もし、さっき止まれなかったら?」


「…………」


「もし途中で何か起きたら?」


「…………」


「あなた自身に何が起きるかだって、全部分かっているわけじゃないでしょう」


「……はい」


 今度の返事は。


 少し小さかった。


「使えるから安全、じゃないの」


「…………」


「楽しいから駄目、と言ってるわけでもない」


「え?」


 紀人が顔を上げる。


「そこに驚くの?」


「いや……」


「遊ぶな、なんて言ってないわ」


「…………」


「ただし」


 東の目が細くなる。


「安全を確保してから」


「はい」


「調子に乗らない」


「はい」


「一人で無茶をしない」


「はい」


「分かった?」


「はい」


「本当に?」


「分かりました」


 紀人は。


 素直に頭を下げた。


「すみませんでした」


「…………」


 東は。


 少しだけ表情を緩めた。


「分かればいいの」


     ◇


「…………」


「…………」


 これで。


 終わればよかった。


 紀人は。


 黙っていればよかった。


 だが。


「でも」


 東の眉が。


 ぴくりと動いた。


「でも?」


「いや」


 紀人が。


 オニヤンマのメモリーを見る。


「これ」


「うん」


「本当に楽しいですよ」


「…………」


「空中で止まれるし、急に方向変えられるし」


「…………」


「東さんも一回――」


「紀人」


「はい」


「まだ説教が足りなかったみたいね」


「違います!」


「何が?」


「反省はしてます!」


「へえ」


「反省した上での感想です!」


「そう」


「はい!」


「じゃあ」


 東が。


 にっこり笑った。


「反省したところを、もう一度最初から聞かせてもらおうかしら」


「え」


「何が危なかったのか」


「いや、分かってます!」


「なら説明できるわね」


「できますけど!」


「じゃあどうぞ」


「…………」


 紀人は。


 思った。


 余計なこと。


 言わなきゃよかった。


     ◇


 しばらく後。


「…………」


 紀人は。


 すっかり疲れた顔で立っていた。


 飛び疲れたのではない。


 説教疲れである。


「じゃあ」


 東が言う。


「次に何か試す時は?」


「一人で勝手にやらない」


「それから?」


「安全を確認する」


「それから?」


「調子に乗らない」


「よろしい」


「…………」


 紀人は。


 小さく息を吐いた。


「次に試す時は、ちゃんと私に言いなさい」


「…………」


 紀人が。


 東を見る。


「東さんも来るんですか?」


「当然でしょう」


「…………」


「何?」


「いや」


 紀人は。


 少し考える。


「だったら次は、どこまで速度を――」


「紀人?」


「安全第一で試します」


「よろしい」


「…………」


 紀人は。


 オニヤンマのメモリーを見る。


 そして。


 今日の教訓を。


 胸に刻んだ。


 オニヤンマで飛ぶのは。


 めちゃくちゃ楽しい。


 ただし。


 東に見つかると。


 飛んでいた時間より。


 説教の方が。


 長い。


「…………」


「何か言った?」


「何も言ってません!」


――つづく。


――――――――――


※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。


物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。


本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。


※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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