第2話「頭は見た目が大事?」
『ビーストギア Another』
第二篇「メモリーを試す紀人」
第2話「頭は見た目が大事?」
「…………よし」
紀人は。
鏡の前に立っていた。
前回。
オニヤンマで飛び回り。
途中から完全に遊び始め。
それを東に発見され。
こってり絞られた。
「…………」
思い出す。
『一人で勝手にやらない』
『安全を確認する』
『調子に乗らない』
「分かってるって……」
誰もいないのに。
思わず返事をしてしまう。
だが。
紀人だって。
何も反省していないわけではない。
だから今回は。
飛ばない。
走らない。
殴らない。
無茶もしない。
「頭だけなら大丈夫だろ」
今回試すのは。
頭部。
ビーストギアは。
使用するメモリーによって。
その姿も。
使える能力も変化する。
ならば。
頭部に使った場合は。
どうなるのか。
「性能確認は必要だしな」
これは遊びではない。
性能確認。
前回も。
最初はそうだった気がするが。
「…………」
紀人は。
そのことについては考えないことにした。
◇
「まずは……」
紀人が手に取ったのは。
ノミ。
「…………」
じっと見る。
「ノミか」
小さい。
跳ねる。
それ以外に。
紀人がパッと思いつくものは。
「…………」
あまりない。
「まあ、試せば分かるか」
装填。
頭部が変化する。
「おっ」
紀人は。
さっそく鏡を見る。
「…………」
止まった。
「…………」
正面。
「…………」
右。
「…………」
左。
「…………」
もう一度。
正面。
「…………いや」
長い沈黙の末。
紀人は。
首を横に振った。
「これはないな」
能力がどうこうではない。
「見た目が……」
もう一度。
鏡を見る。
「…………悪い」
かなり。
悪い。
「いやいや」
紀人は。
自分に言い聞かせる。
「見た目で判断しちゃ駄目だろ」
これは性能確認。
格好いいか。
格好悪いか。
そんなことを調べているわけではない。
「実戦で使えるかどうかだからな」
鏡を見る。
「…………」
見れば見るほど。
気になる。
「でもなあ……」
少し顔を動かす。
「これで人前に出るのか?」
想像する。
怪人が現れる。
紀人が駆けつける。
変身。
そして。
この顔。
「…………」
一拍。
「怪人が二人いるって思われない?」
非常に失礼な感想だった。
「いや、ノミが悪いわけじゃないけどさ」
誰に対する言い訳なのか。
紀人自身にも分からない。
「これは……」
もう一度見る。
「…………保留」
性能ではなく。
完全に。
見た目で保留にした。
◇
「次」
メモリーを替える。
手に取ったのは。
コブラ。
「これは分かりやすいな」
蛇。
毒。
牙。
「頭との相性は良さそう」
装填。
変化。
「おお」
紀人は。
鏡を見る。
「…………」
正面。
横。
「うん」
さっきより。
明らかに反応がいい。
「これは普通に強そうだな」
少なくとも。
ノミよりは。
紀人的評価が高い。
「で……」
問題は。
能力。
「頭だから……」
少し考える。
「やっぱ毒か」
コブラの毒。
それを。
頭部から。
どう使うのか。
「…………」
紀人は。
軽く頭を前へ出してみる。
「頭突き?」
そう。
ヘッドバッド。
頭部を直接ぶつけることで。
毒を相手へ送り込める。
「…………」
紀人が頷く。
「普通に強いな」
近距離なら。
十分に使える。
「頭突きして毒か」
想像する。
「うん」
悪くない。
少なくとも。
「ノミよりは全然あり」
やはり。
比較対象がおかしくなっていた。
◇
「…………あ」
そこで。
紀人は。
ふと。
昔のことを思い出した。
まだ。
子供だった頃。
虫や動物のことを聞くたび。
頼んでもいないところまで。
延々と説明してくれた人。
「そういえば……」
ジン兄さん。
蛇についても。
何か言っていた。
『コブラっていうのは――』
いつもの。
長い説明。
当時の紀人には。
半分どころか。
ほとんど理解できなかった。
それでも。
妙に覚えている話がある。
「確か……」
紀人が。
鏡に映る自分を見る。
「コブラによっては」
一拍。
「口から毒を飛ばす奴もいるんだっけ」
そう。
そんな話を。
ジンから聞いた記憶がある。
「…………」
紀人は。
自分の口元を見る。
「ってことは」
この状態なら。
もしかして。
「俺もできる?」
試す価値は。
ある。
性能確認なのだから。
「…………」
しかし。
紀人は動かなかった。
「口から……」
想像する。
怪人との戦闘。
敵を前に。
紀人が構える。
そして。
口から。
毒。
「…………」
さらに。
具体的に想像する。
「…………ぷっ、って?」
沈黙。
「…………」
紀人は。
真顔になった。
「格好悪いな」
能力としては。
おそらく有用。
離れた相手へ毒を飛ばせるなら。
使い道はある。
「いや」
紀人も。
それくらいは分かっている。
「格好いいとか悪いとか言ってる場合じゃないだろ」
実戦なのだから。
勝つために使えるものは。
使うべきだ。
「…………」
鏡を見る。
「…………」
口から毒を飛ばす自分を。
もう一度想像する。
「…………嫌だな」
高校生男子にとって。
格好良さは。
思った以上に。
重要だった。
「まあ……」
紀人は咳払いする。
「必要になったら試そう」
今は。
必要ではない。
決して。
格好悪いから逃げたわけではない。
「必要になったらな」
誰も聞いていないのに。
二回言った。
◇
「次は……」
別のメモリー。
装填。
鏡を見る。
「…………」
正面。
「うーん」
横。
「…………まあまあ」
戻す。
「次」
別のメモリー。
「…………」
鏡。
「怖っ」
思わず。
自分で一歩下がる。
「これ夜に見たら絶対駄目なやつだろ」
戻す。
「次」
また別のメモリー。
「…………」
「強そうではある」
少し考える。
「でも悪役っぽいな」
戻す。
「次」
いつの間にか。
性能確認から。
完全に。
頭部フォームの品評会になっていた。
◇
「…………」
紀人は。
鏡の前で腕を組む。
「難しいな」
何が。
難しいのか。
本人にも。
よく分かっていない。
「能力だけならコブラなんだけどな」
毒。
十分強い。
使い方も分かりやすい。
だが。
「口から毒……」
また想像する。
「…………」
首を振る。
「やっぱ嫌だ」
そして。
まだ試していないメモリーへ。
目を向ける。
「…………」
一本。
手に取る。
「ヒクイドリ」
紀人は。
首を傾げた。
「…………頭?」
ヒクイドリ。
鳥。
だが。
飛べない。
強力なのは。
むしろ脚。
「これ頭に入れる意味あるか?」
普通に考えれば。
脚へ使った方が。
分かりやすい。
「…………」
だが。
今やっているのは。
頭部の確認。
「まあ」
紀人は。
メモリーを見る。
「試すだけならいいか」
装填。
頭部が変化する。
「…………」
紀人には。
まだ。
自分の姿が見えていない。
「さて」
鏡を見る。
「…………」
止まった。
「…………」
正面。
「…………」
右。
「…………」
左。
「…………」
もう一度。
正面。
「…………」
紀人の目が。
少しずつ。
輝いていく。
「…………これ」
一拍。
「めちゃくちゃ格好いいじゃん!」
◇
「何これ!」
紀人のテンションが。
一気に跳ね上がった。
「ヒクイドリだよな!?」
鏡を見る。
「格好いい!」
横。
「こっちもいい!」
反対。
「おお!」
少し顎を引く。
「…………」
構える。
「…………いいな」
もう一度。
角度を変える。
「これ普通に当たりだろ!」
能力?
そんなものは。
今。
どうでもよかった。
「頭これでよくない?」
完全に。
見た目だけで決めようとしていた。
「…………」
紀人は。
鏡の前で。
少し構えてみる。
「…………」
悪くない。
もう少し。
身体を横へ。
「…………」
いい。
さらに。
戦闘時を想定して。
構える。
「…………」
かなりいい。
「これだろ」
紀人が。
満足げに頷く。
「うん」
もう一度。
「これだな」
「何が?」
「うわあっ!?」
◇
紀人が。
勢いよく振り返る。
「…………」
東。
「…………」
「…………」
前回と。
ほとんど。
同じだった。
「東さん……」
「何?」
「…………いつから?」
「そうね」
東が考える。
「『こっちもいい』くらいから」
「…………」
「その後、随分いろんな角度から確認してたわね」
「…………」
「何をしてたの?」
「性能確認です」
即答。
「鏡の前で?」
「はい」
「何度も角度を変えて?」
「頭部形状の視認による確認です」
「…………」
「…………」
東が。
紀人を見る。
「さっきポーズ取ってなかった?」
「…………」
「紀人?」
「実戦を想定した確認です」
「へえ」
「はい」
「それで?」
東が。
鏡を見る。
「何が分かったの?」
「…………」
紀人も。
鏡を見る。
ヒクイドリ。
やっぱり。
格好いい。
「…………」
「紀人?」
「格好いいです」
「…………」
「めちゃくちゃ」
「性能は?」
「…………」
紀人が止まった。
「…………」
考える。
「…………」
さらに考える。
「…………まだ調べてません」
「でしょうね」
◇
「でも!」
紀人は。
なぜか。
ここだけは譲れなかった。
「格好良さも大事じゃないですか?」
「何に?」
「いや」
紀人が。
少し考える。
「…………ヒーローとして?」
「誰がヒーローなの?」
「俺?」
「何で疑問形なのよ」
「いや、でも」
紀人は。
ノミの時の姿を思い出す。
「東さんだって、怪人と戦ってる奴がめちゃくちゃ格好悪かったら嫌じゃないですか?」
「別に」
「本当に?」
「ちゃんと仕事してくれれば」
「…………」
紀人は。
少し。
納得できない顔をする。
「何よ」
「いや……」
「言いたいことがあるなら言いなさい」
「東さん」
「何?」
「今これ見て」
紀人が。
自分の頭を指す。
「ちょっと格好いいと思いませんでした?」
「思ってない」
即答。
「いや絶対ちょっと思ったでしょ」
「思ってない」
「一瞬見ましたよね?」
「見たわよ」
「ほら!」
「そこにあったから見ただけ」
「本当に?」
「紀人」
「はい」
「戻しなさい」
「はい」
◇
メモリーを戻す。
頭部も。
元へ戻る。
「…………」
紀人は。
少し名残惜しそうに。
ヒクイドリのメモリーを見る。
「でもなあ……」
「何?」
「いや」
メモリーを見る。
「ノミは見た目がちょっと……」
「生き物に失礼よ」
「コブラは強いんですけど」
「うん」
「口から毒を飛ばすのが……」
「…………」
東が。
少し黙った。
「何です?」
「別に」
「今、想像しました?」
「してない」
「絶対した」
「してない」
「ちょっと格好悪いと思ったでしょ?」
「紀人」
「はい」
「次」
東が。
メモリーを見る。
「性能を確認するんでしょう?」
「…………」
「見た目じゃなくて」
「はい……」
紀人は。
渋々頷く。
「でも」
「何?」
「ヒクイドリは格好いいですよね」
「…………」
「…………」
「紀人」
「はい」
「調子に乗らない」
「はい」
前回。
東に言われたこと。
一人で無茶をしない。
安全を確認する。
調子に乗らない。
今回は。
飛んでいない。
無茶もしていない。
危険なこともしていない。
ただ。
新しい問題が。
一つだけ。
判明した。
メモリーは。
能力だけではなく。
見た目も変わる。
そして。
紀人にとって。
それは。
思っていた以上に。
重要らしい。
「…………」
紀人は。
もう一度。
ヒクイドリのメモリーを見る。
「次もこれ使おうかな」
「聞こえてるわよ」
「性能確認です!」
「まだ何も言ってないでしょう」
「…………」
どうやら。
次からは。
言い訳の仕方も。
考えた方がよさそうだった。
――つづく。
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※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。
物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。
本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




