↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビーストギア Another  作者:
モズキャッチャー編 1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/13

第3話「虫取り」

『ビーストギア Another』


第一篇「十年前の夏」


第3話「虫取り」


「紀人」


「何?」


「そんなに走ると転ぶぞ」


「大丈夫!」


「その台詞、信用できないんだよなあ」


 夏。


 朝から鳴き続ける蝉の声の中。


 紀人は虫取り網を片手に、林の中を走り回っていた。


 その少し後ろを。


 パンさんとジンが歩いている。


「待てって、紀人!」


「いた!」


「何が?」


「でっかいの!」


「だから何がいたんだよ!」


「分かんない!」


「分かんねえのかよ!」


 パンさんが追いつくより先に。


 紀人が網を振り上げる。


「そこ!」


 勢いよく振り下ろす。


 ガサッ!


「…………」


 紀人が網の中を覗く。


「…………」


 パンさんも覗く。


「…………」


 葉っぱ。


「逃げた!」


「だろうな」


「今いたんだよ!」


「はいはい」


「本当だって!」


 そこへ。


 遅れてジンがやってきた。


「何がいたの?」


「分かんない!」


「特徴は?」


「でかかった!」


「うん」


「黒かった!」


「うん」


「飛んだ!」


「…………」


 ジンが考える。


「情報が少ないな」


「分かる?」


「分からない」


「ジン兄さんでも!?」


「僕を何だと思ってるの?」


「何でも知ってる人」


「それは買いかぶりすぎだなあ」


 ジンが笑う。


「じゃあ」


 紀人は網を肩に担いだ。


「捕まえてから聞く!」


「それが一番早いね」


「よし!」


「だから走るなって!」


 紀人は。


 パンさんの注意も聞かず。


 また走り出した。


     ◇


「いた!」


 しばらくして。


 今度こそ。


 紀人は木の幹にいる虫を見つけた。


「カブトムシ!」


「おお」


 パンさんも覗き込む。


「これは分かりやすいな」


「でっけえ!」


 紀人は目を輝かせる。


「ジン兄さん!」


「うん」


「カブトムシ!」


「そうだね」


「これオス!」


「そうだね」


「角あるから!」


「正解」


「知ってる!」


 得意げな紀人。


「どうやって持つんだっけ?」


「身体の横を――」


「分かる!」


「じゃあ何で聞いたの?」


「確認!」


「なるほど」


 紀人が慎重に手を伸ばす。


 捕まえる。


「取った!」


「よかったな」


「パンさん見て!」


「見てるよ」


「ジン兄さん!」


「見てる見てる」


「強そう!」


「実際、オス同士だとその角を使って――」


「知ってる!」


「じゃあ説明しなくていい?」


「…………」


 紀人は少し考えた。


「聞く」


「聞くんだ」


「うん!」


「じゃあ」


 ジンがカブトムシを見る。


「この角は主に同種のオス同士で競争する時に使われるんだけど、単純に相手を傷つける武器というより――」


「うん」


「相手の身体の下へ角を差し込んで、梃子の原理で――」


「うん」


「もちろん形状にも意味があって――」


「うん」


「…………」


「…………」


 ジンが紀人を見る。


「もう分からなくなった?」


「まだ分かる!」


「本当?」


「…………」


「紀人?」


「半分くらい!」


「早いな」


 パンさんが笑った。


「まだ始まったばっかりだぞ」


「だってジン兄さん、急に難しくなるんだもん!」


「簡単に説明してるつもりなんだけどな」


「これで!?」


「かなり」


「嘘だ!」


「本当」


 紀人は捕まえたカブトムシを見る。


「…………」


「まあ」


「うん?」


「強いってことだろ?」


「ものすごく簡単にまとめたね」


「じゃあ合ってる?」


「大体」


「じゃあいい!」


「いいんだ……」


 ジンが苦笑する。


     ◇


「ジン兄さん!」


「今度は何?」


「これ!」


 紀人が葉の近くを指差す。


「トンボ!」


「そうだね」


「でっかい!」


「うん」


「速い!」


「そうだね」


「捕まえる!」


「頑張って」


 紀人は網を構える。


 トンボが飛ぶ。


「あ!」


 網を振る。


 外れる。


「待て!」


 追う。


 また飛ぶ。


「速っ!」


 さらに追う。


「紀人、前見ろ!」


「見てる!」


「見てないだろ!」


 木。


「うわっ!」


 寸前で止まる。


「危なっ……」


「だから言っただろ!」


「大丈夫だった!」


「結果論だ!」


 その間に。


 トンボは遠くへ飛んでいった。


「あー!」


 紀人が肩を落とす。


「逃げた……」


「トンボは飛行能力が非常に高いからね」


「…………」


 パンさんが。


 ジンを見る。


「始まったぞ」


「何が?」


「お前の長い説明」


「まだ一言だけだけど」


「この後長くなるだろ」


「そんなことないよ」


 ジンは飛んでいったトンボを見る。


「トンボは前翅と後翅をある程度独立して動かすことができるから――」


「ほら始まった」


「――急旋回やホバリング、それに種類によってはかなり高速で飛行することもできる」


「…………」


 紀人が。


 空を見る。


「…………」


「紀人?」


「ジン兄さん」


「何?」


「もっと簡単に」


「速く飛べる」


「それなら分かる!」


「最初からそれでいいだろ!」


 パンさんが突っ込んだ。


「でも」


 紀人が。


 飛んでいったトンボの方を見る。


「いいなあ」


「何が?」


「飛べるの」


「…………」


「俺も飛べたら、あれ捕まえられるのに」


「それはどうかな」


「絶対捕まえる!」


「人間が飛べたとしても、トンボの機動性についていくのは――」


「ジン」


「何?」


「また始まるぞ」


「…………」


 ジンが口を閉じた。


「飛べたらいいね」


「うん!」


 紀人は笑った。


     ◇


「今度こそ捕まえた!」


 それから。


 紀人は。


 何度目かの挑戦で。


 別の虫を捕まえた。


「見て!」


 網の中。


「何これ?」


「…………」


 パンさんも見る。


「俺に聞くな」


「ジン兄さん!」


「はいはい」


 ジンが覗き込む。


「ああ」


「知ってる?」


「うん」


「何!?」


 ジンが虫の名前を答える。


「…………」


「…………」


 紀人が首を傾げた。


「もう一回」


 ジンが繰り返す。


「…………」


「長い」


「名前に文句言われても」


「もっと簡単な名前ないの?」


「僕が決めたわけじゃないからね」


「じゃあ」


 紀人が虫を見る。


「こいつ何するの?」


「何するって?」


「強い?」


「そこが基準なの?」


「うん!」


「じゃあ」


 ジンがしゃがむ。


「この虫の場合は――」


 説明が始まった。


「…………」


 紀人は聞く。


「――それで外敵に対しては」


「うん」


「生存戦略として」


「うん」


「生息環境との関係もあって」


「…………」


「さらに近縁種と比較すると――」


「…………」


「紀人?」


「…………」


「紀人」


「…………」


 紀人は。


 いつの間にか。


 近くを飛んでいる蝶を見ていた。


「聞いてる?」


「聞いてる!」


「じゃあ今、何の話してた?」


「…………」


 紀人が真剣に考える。


「虫」


「範囲が広い」


 パンさんが吹き出した。


「はははは!」


「だって難しいんだよ!」


「聞いたのお前だろ!」


「こんな長いと思わなかった!」


「まだ途中なんだけど」


「まだ!?」


 紀人が驚愕する。


「ジン兄さん!」


「何?」


「虫一匹でどれだけ喋るの!?」


「質問されたから」


「名前だけ聞いたの!」


「途中で『何するの』って聞いたよね」


「聞いたけど!」


「だから説明を」


「長い!」


「…………」


 ジンが。


 少しだけ傷ついたような顔をする。


「…………」


 紀人が困る。


「でも」


「うん?」


「嫌じゃないよ」


「…………」


「分かんないだけ」


「それはそれで問題じゃない?」


「だって」


 紀人が笑う。


「ジン兄さん、何でも知ってるみたいで面白いし」


「…………」


「俺が分かるように話してくれればもっといい!」


「注文が入った」


「頑張れ、天才」


 パンさんがジンの肩を叩く。


「子供にも分かる説明を覚えろ」


「専門的な内容を正確さを保ったまま簡略化するのって、意外と難しいんだよ」


「もう難しい」


「まだ説明してないよ!?」


「ははは!」


 三人の笑い声が。


 夏の林に響いた。


     ◇


 昼。


 三人は木陰で休んでいた。


 紀人の虫かごには。


 今日捕まえた虫たち。


「いっぱい取れたな」


「うん!」


「満足?」


「まだ!」


「まだやるのかよ」


「次はもっとでかいの!」


「何を狙ってるんだ」


「分かんない!」


「またそれか」


 パンさんが飲み物を渡す。


「ほら」


「ありがとう!」


 紀人は一気に飲む。


「…………」


 それから。


 虫かごを見る。


「なあ」


「ん?」


 ジンが返事をする。


「虫ってさ」


「うん」


「なんでこんなに違うの?」


「…………」


 パンさんが。


 ゆっくりと紀人を見る。


「紀人」


「何?」


「それ」


「聞く相手間違えたぞ」


「え?」


 ジンの目が。


 少し輝いていた。


「それは面白い質問だね」


「…………」


 パンさんが立ち上がる。


「俺、ちょっと向こう行ってくる」


「何で!?」


「長くなる」


「え?」


「まず昆虫の進化について考えるなら――」


「待って」


「環境への適応と形態の多様化、それから――」


「待ってジン兄さん」


「そもそも昆虫という分類群そのものが――」


「待って!」


 紀人が両手を上げる。


「やっぱいい!」


「え?」


「今の質問なし!」


「いいところだったのに」


「まだ始まったばっかりじゃん!」


「だからだよ」


「絶対長いやつ!」


「面白いのに」


「俺が大人になってから聞く!」


「じゃあ覚えておくよ」


「十年後くらい!」


「…………」


 ジンが笑った。


「十年後か」


「うん!」


「その頃なら」


「?」


「今より、もう少し難しい話も分かるようになってるかもね」


「…………」


 紀人は少し考える。


「じゃあ」


「うん?」


「十年後に教えて!」


「ああ」


 ジンは。


 いつものように笑った。


「覚えてたらね」


「忘れないでよ!」


「紀人が覚えてたら僕も覚えてるよ」


「絶対だからな!」


「はいはい」


「約束!」


「分かった分かった」


「絶対!」


「しつこいなあ」


 パンさんが戻ってくる。


「終わった?」


「終わった!」


「説明は?」


「十年後!」


「何の話だよ」


「秘密!」


「急に仲間外れかよ!」


 紀人が笑う。


 ジンも笑う。


 十年という時間が。


 子供だった紀人にとって。


 どれほど長いものなのか。


 この時は。


 まだ。


 誰も知らなかった。


――つづく


――――――――――


※本作は、作者が物語のストーリー、世界観、キャラクター、設定、展開を考案し、AIとの対話を通じて文章の整理・推敲・執筆補助を行いながら制作しています。


物語の方向性、設定、展開、および最終的な内容の判断は作者自身が行っています。


本作では「人間とAIが協力して、一つの物語を作る」という創作の形にも取り組んでいます。


※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。