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ビーストギア Another  作者: 戮
ミラーカメレオン編

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ANOTHER 第3話 鼻と尻尾

ANOTHER 第3話 鼻と尻尾


「これで、ゾウの鼻を使わなくて済むかもしれません」


紀人は、カンガルーメモリーを手にしていた。


その表情は明るい。


シラメ博士も同じだった。


「いいところに気づいたよね。カンガルーの尻尾が使えるなら、わざわざ頭部をゾウにする必要はない」


「ですよね!」


二人が満足そうに頷き合う。


その様子を見ていた東だけが、少し冷めた目をしていた。


「前から思ってたんだけど、ゾウの鼻とカンガルーの尻尾って、そもそも同じことできるの?」


紀人とシラメ博士が止まった。


「……一本増えるのは同じです」


「うん」


「位置が全然違うじゃない。前と後ろよ?」


「それはまあ……」


シラメ博士が少し考えたあと、もっともらしく頷く。


「だから検証するんだよ」


「今、いいこと言ったみたいな顔したわね」


「科学だからね」


「さっきまで見た目ばっかり気にしてたじゃない」


紀人は聞かなかったことにして、変身用のベルトを取り出した。


「とにかく、やってみましょう」


腰へ巻く。


「配信開始」


キッドへ変身し、カンガルーメモリーを装着する。


背後に現れた尻尾を動かしながら、キッドは振り返った。


「これでいけたら、頭部ゾウ問題は解決です」


「問題にしてるの、二人だけだけどね」


東の言葉も、今の二人には届かなかった。


◇


最初の検証は単純だった。


用意された標的を前に、シラメ博士が指示を出す。


「まずは尻尾だけで攻撃してみて」


「はい」


キッドは身体を捻り、その勢いに乗せてカンガルーの尻尾を振るった。


激しい音とともに、標的が横へ弾き飛ばされる。


「おお!」


キッドの表情が明るくなった。


「使えるじゃないですか!」


「かなり強いね」


シラメ博士も測定結果を確認する。


今度は角度を変えて、もう一つ。


尻尾が直撃し、標的が勢いよく吹き飛んだ。


「ほら!」


キッドは得意げに東を見る。


「ちゃんと第三の手として――」


「それ、手?」


「……え?」


東は吹き飛ばされた標的を指した。


「今やったの、尻尾で殴っただけじゃない?」


キッドが黙る。


シラメ博士も少し考えたあと。


「……次に行こうか」


「そうですね」


「誤魔化したわね」


◇


続いて、身体を支える能力を調べる。


キッドが大きく体勢を崩したところで、尻尾を地面につけた。


両脚と尻尾。


三点で身体を支えることで、倒れかけていた姿勢が安定する。


さらに後ろから強い力を加えても、尻尾を支えにすることでかなり踏みとどまれた。


「これも使えます!」


キッドが再び東を見る。


「身体を支える力もかなり強い。これなら第三の――」


「脚じゃない?」


また止まった。


「……」


「手じゃなくて、三本目の脚みたいになってるけど」


キッドがシラメ博士を見る。


博士は静かに視線を逸らした。


「博士」


「何?」


「何か言ってくださいよ」


「東さんの言ってることが正しいから」


「裏切るの早くないですか?」


東が腕を組む。


「今のところ、殴るか立つかしかしてないわよ」


「まだです」


キッドは言い切った。


「ここからが本番です」


「そう」


東は少し笑う。


「じゃあ見せてもらおうかしら」


◇


机の上に、小さな箱が置かれた。


シラメ博士が指示を出す。


「これを取って」


「尻尾で?」


「もちろん」


キッドは箱を見つめ、尻尾を伸ばした。


近づける。


触れる。


押す。


箱が少し動いた。


「……」


反対側から押す。


元の場所へ戻った。


東が聞く。


「遊んでる?」


「取ろうとしてるんです!」


「全然取れてないけど」


「今からです」


尻尾を箱へ巻き付けようとする。


だが、曲がることはできても、物を掴めるほど器用には動かない。


「……あれ?」


シラメ博士が近づく。


「もう少し先端を曲げてみて」


「やってます」


「もっと」


「これ以上無理です」


「……無理か」


東が何気なく言う。


「手で取れば?」


「それやったら検証にならないでしょ!」


「そうだけど」


◇


次は棒。


尻尾で掴もうとする。


持てない。


押すことはできる。


弾き飛ばすこともできる。


だが、掴んで持ち上げることはできなかった。


次はロープ。


「巻き付ければ……」


「巻き付きません」


「押さえる?」


「逃げます」


少し大きな箱。


キッドが尻尾で押す。


箱が床を滑った。


「動きました!」


「運んでないわよ」


「……」


そして、ドアノブ。


キッドは尻尾の先を伸ばし、ノブへ当てる。


押す。


滑る。


反対側から押す。


当然、扉は開かない。


「……」


東が言う。


「紀人」


「何です?」


「普通に手で開けたら?」


「だから検証なんですって!」


検証を重ねるほど、紀人の声だけが大きくなっていった。


◇


しばらくして、シラメ博士が結果をまとめた。


紀人は隣で、少し暗い顔をしている。


東が二人の後ろから画面を覗いた。


「で?」


「カンガルーの尻尾は、第三肢としてはかなり優秀だね」


紀人が顔を上げる。


「ほら!」


「ただし、第三の手ではない」


すぐに顔が下がった。


「打撃には使える。身体を支えることもできるし、バランスを取る補助にもなる。でも、物は掴めない」


「……はい」


「持てない」


「はい」


「巻き付けない」


「もう分かりました」


東が聞く。


「じゃあ、ゾウの鼻なら?」


二人とも答えない。


「できるんでしょ?」


紀人が小さく答えた。


「……できます」


シラメ博士も続ける。


「かなり器用に」


「じゃあ、同じ条件で試しましょう」


紀人とシラメ博士が同時に嫌そうな顔をした。


◇


「本当にやるんですか?」


紀人が聞く。


「比較しないと駄目でしょ」


東は当然のように答える。


紀人がシラメ博士を見る。


「博士」


「仕事だからね」


「博士も嫌そうじゃないですか」


「気のせいだよ」


「絶対違う」


仕方なく、紀人はゾウメモリーを頭部へ装着した。


ゾウの特徴が頭部へ反映され、長い鼻が伸びる。


東の表情が明るくなった。


「やっぱりかわいいじゃない」


「検証始めます」


紀人は聞こえなかったことにした。


◇


同じ箱。


鼻を伸ばす。


掴む。


持ち上げる。


そのまま机の反対側へ置く。


「……」


次は棒。


掴む。


持ち上げる。


向きを変える。


問題ない。


「……」


次はロープ。


鼻を巻き付けて、引っ張る。


できる。


「……」


最後にドアノブ。


鼻を巻き付ける。


捻る。


扉が開いた。


紀人は何も言わなかった。


シラメ博士も黙っている。


東だけが満足そうだった。


「便利じゃない」


紀人が絞り出す。


「……便利ですね」


「……便利だね」


シラメ博士も認めざるを得なかった。


◇


さらに、人型のダミーを使って戦闘時の動きも試すことになった。


「これに巻き付いてみて」


「分かりました」


紀人が鼻を伸ばす。


ダミーの胴体へ巻き付け、そのまま引く。


体勢を崩したダミーを、さらに鼻で締めて動きを止める。


腕を使わず、相手を拘束できた。


紀人の声がますます沈む。


「……戦闘でも使えるな」


「使えるね」


「両手が塞がってても」


「使えるね」


「博士、何でちょっと嬉しそうなんですか」


「データとしては面白いから」


「裏切った……」


東が呆れたように言う。


「便利だって分かるほど落ち込むの、やめない?」


◇


すべての検証を終え、シラメ博士が結果を整理した。


カンガルーの尻尾は、打撃、身体支持、バランス補助には非常に優秀だった。


だが、物を掴むことはできない。持つことも、巻き付くことも、細かな操作もできない。


あくまで、身体を支えたり攻撃したりするための第三肢。


それに対して、ゾウの鼻は違った。


掴む。


持つ。


引く。


巻き付く。


細かな操作をする。


相手を拘束する。


手足とは別に動かせる補助肢として考えるなら、明らかにゾウの鼻の方が優れていた。


結果を見た紀人が呟く。


「……圧勝じゃないですか」


「補助肢として比べたらね」


シラメ博士が答える。


東は呆れたように二人を見る。


「最初から分かりそうなものだけど」


「ちゃんと検証することに意味があるんです」


「そうだよ」


博士も頷く。


「負け惜しみにしか聞こえないわよ」


二人とも反論しなかった。


◇


東は結果を眺めながら言った。


「でも、これではっきりしたじゃない」


紀人が嫌そうに聞く。


「何がです?」


「ゾウの鼻、便利」


「……はい」


「ちゃんと手の代わりにもなる」


「……はい」


「だったら、手足が使えなくなるくらいのピンチになった時は、頭にゾウを入れればいいじゃない」


紀人とシラメ博士が黙った。


東は構わず続ける。


「これなら使い道も決まったでしょ?」


まだ返事がない。


「何?」


紀人がゆっくりと顔を上げた。


「東さん」


「何?」


「手足が使えないんですよね?」


「そうよ」


「その状態で」


紀人はゾウメモリーを指した。


「どうやって、これを頭に入れるんですか?」


「……」


東が止まった。


シラメ博士も、ゾウメモリーと紀人を交互に見る。


「……確かに」


「博士まで今気づいたんですか?」


「うん」


三人の間に沈黙が落ちた。


東が恐る恐る言う。


「……先に入れておく?」


「それじゃ、ピンチになる前から頭ゾウじゃないですか」


「じゃあ……」


「手が使えなくなってからじゃ装着できないです」


シラメ博士が腕を組む。


「困ったね」


紀人は深くため息をついた。


「そこ、一番最初に気づきたかったですね……」


「でも、性能はちゃんと分かったよ」


「まあ……それはそうですけど」


東が笑いを堪えながら聞く。


「じゃあ、結論は?」


紀人はゾウメモリーを見る。


頭部へ入れれば強い。


便利。


鼻は手の代わりにもなる。


それはもう、十分すぎるほど分かった。


ただし。


「……万が一」


「うん」


「本当に万が一、使える状況だったら使います」


シラメ博士も頷く。


「それでいいと思う」


東が呆れた。


「結局そこなの?」


「だって、手足の代わりに殴るだけなら、カンガルーの尻尾でも大丈夫なんで」


「まだ言うの?」


「大事です」


「大事だね」


また紀人とシラメ博士の意見だけは、ぴったり一致した。


東は二人を見比べ、最後に頭部へゾウメモリーを入れた紀人を見る。


「かわいいのに」


「それはもういいです!」


こうしてゾウメモリーの検証は、性能面では十分な成果を上げながらも。


頭部ゾウを積極的に使いたくないという紀人とシラメ博士の意見だけは、最後まで変わらなかった。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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