第三話 カンガルーの尻尾 後編
第三話 カンガルーの尻尾 後編
「これで殴ったら、どのくらい強いんだろう」
紀人とシラメ博士の視線が、カンガルーの太い尻尾へ向いていた。
東は二人の顔を交互に見る。
「……一応聞くけど、ちゃんと検証するのよね?」
「もちろん」
「そのつもりです」
返事だけなら問題はない。
なぜか東には嫌な予感がした。
◇
まずは測定機器を使う。
紀人は身体をひねり、それに合わせて尻尾を振った。
ぶんっ。
重い音がする。
「今ので軽く?」
「かなり軽くです」
紀人自身も少し驚いていた。
位置を調整し、測定部へ尻尾を叩きつける。
ばしっ!
表示された数値を見て、シラメ博士が頷いた。
「かなり出てる。尻尾そのものが太くて重いうえに、相当な速度で振れてるね」
「支えるだけじゃなく、普通に武器になりますね」
「十分使えると思う。ただ、紀人くんには尻尾を使った戦闘経験がない。実戦投入するなら練習は必要だね」
「味方を巻き込まないようにも気をつけて」
東が付け加える。
「はい」
ここまでは、まともな検証だった。
◇
「じゃあ次は、実際に硬いものへ当ててみよう」
シラメ博士が薄い鉄板を固定した。
紀人が尻尾を振る。
ゴンッ!
重い金属音。
鉄板の中央が大きくへこんだ。
「……結構いきましたね」
「じゃあ、次はもう少し厚くしよう」
東が博士を見る。
「もう次なの?」
「比較は必要だからね」
厚い鉄板を用意する。
紀人が先ほどより強く尻尾を振った。
ゴンッ!
今度はへこむだけではない。
鉄板そのものが、わずかに曲がった。
「曲がった」
紀人が言う。
シラメ博士の目が輝く。
「まだいけそうだね」
「俺もそんな気がします」
「待って」
東が二人を止めた。
「今、何を調べてるの?」
「尻尾の打撃力」
「最初はそうだったわよね」
「今もそうだよ」
東は曲がった鉄板を指差す。
「途中から『どこまで鉄板を曲げられるか』になってない?」
「限界値を知るのも大事な検証だよ」
「博士、楽しんでない?」
「研究を?」
「破壊を」
「そんなことないよ」
紀人が鉄板を見る。
「でも、もう一段くらい――」
「紀人くんは黙ってて」
「はい」
シラメ博士がさらに厚い鉄板へ目を向けた。
「じゃあ次は――」
「やらなくていい!」
「まだ何も言ってないよ」
「顔で分かるわよ!」
東に止められ、尻尾の破壊力検証はそこで終了となった。
◇
結果を整理する。
胴体へカンガルーメモリーを装着した場合、最大の特徴は強靭な尻尾だった。
尻尾そのものを打撃武器として使える。
さらに第三の支点として身体を支え、強力な蹴りの反動を受け止めることもできる。
特に、胴体へカンガルー、脚へヒクイドリを組み合わせた場合、ヒクイドリの脚力そのものが増すわけではないが、身体が安定することでより強く踏み込める。
結果として、強烈な蹴りを安定して放てる。
「胴体に使えば、ほかのメモリーを補助する役割にもなるのね」
東が言った。
「そういうことだね」
シラメ博士が頷く。
紀人はカンガルーメモリーを見る。
「本当に使い道多いですね、これ」
腕。
脚。
胴体。
どこへ装着しても、役割が違う。
「じゃあ残るのは……」
三人の視線が紀人の頭へ向いた。
紀人も自分の頭を指差す。
「……ここ?」
「頭だね」
「最後ね」
◇
紀人は胴体の変化を解除し、カンガルーメモリーを頭部へ装着した。
頭部が変化する。
長い耳。
カンガルーを思わせる顔つき。
変化が終わった。
紀人は鏡を見る。
正面。
横。
もう一度、正面。
シラメ博士もモニターを見ている。
しばらく沈黙。
東が聞いた。
「どう?」
紀人がぽつりと言う。
「……これはないわ」
シラメ博士も頷いた。
「うん。これはない」
「何が?」
「かっこ悪い」
紀人が即答した。
「これはヒーローとして、ちょっとね」
シラメ博士も真剣な顔だ。
東は二人を見つめる。
「……問題はそこ?」
「え?」
「能力を調べるための検証でしょう?」
「でも、ヒーローとして見た目は大事ですよ」
「大事だね」
「博士まで乗らない!」
東は紀人の長い耳を指差した。
「まず能力!」
「……はい」
「分かったよ」
◇
頭部で最も大きく変化したのは、やはり耳だった。
紀人は目を閉じ、周囲の音へ意識を集中させる。
「……向こうで何か動いてます」
「私には聞こえないけど」
東が言う。
シラメ博士が確認する。
紀人の指した方向では、小型の機器が動いていた。
「当たり。普通ならここから聞き取れるような音じゃない」
さらに紀人から見えない位置で小さな音を出す。
紀人はその方向も正確に当てた。
「すごいですね、これ」
「頭部は攻撃より情報収集向きみたいだね」
「索敵にも使えるわ」
東が言う。
「見えない相手の位置を探したり、遠くの異変に気づいたりできる」
紀人も頷いた。
「便利なのは分かりました」
そして鏡を見る。
「でもなあ……」
「何?」
「これで人前に出るのは、ちょっと」
シラメ博士も頷く。
「僕も同意見かな」
「だから見た目から離れなさい!」
◇
すべての検証を終え、紀人は元の姿へ戻った。
シラメ博士が記録をまとめる。
腕は、パンチ力を中心とした近距離戦闘。
脚は、跳躍と蹴りを高い水準で両立する万能型。
胴体は、強靭な尻尾による直接攻撃と、第三の支点としての身体の安定。
頭部は、強化された聴覚による索敵。
「こうして見ると、かなり優秀なメモリーね」
東が言った。
「ですね」
紀人も頷く。
シラメ博士がカンガルーメモリーを見る。
「装着する場所で、ここまで役割が変わるのは面白いね」
紀人もメモリーを受け取る。
「これからは、パンチだけに使うのはもったいないですね」
「戦況に合わせて使い分けるべきね」
「はい」
少し考えてから、紀人が付け加えた。
「頭以外で」
シラメ博士が頷く。
「僕もそれがいいと思う」
東の眉が動いた。
「だから、そこなの?」
二人は黙った。
検証の結果。
カンガルーメモリーは、予想以上に使い道が多い。
ただし。
頭部への装着だけは。
紀人とシラメ博士から、最後まで不評だった。
本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。
それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。
一つの作品だけでも楽しめる。
けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。
ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。
【人間×生成AIによる合作作品】
企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才
文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)
本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。
本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。




