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ビーストギア Another  作者: 戮
ミラーカメレオン編

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第四話 警察って大変ですね



第四話 警察って大変ですね


数日後。


朝の公園。


池を囲む遊歩道を、紀人はいつものように走っていた。


一周、二周と軽く汗をかいたところで、池の近くにあるベンチへ向かう。


「おはようございます」


「おはよう、紀人くん」


今日も東が待っていた。


紀人はベンチの前で足を止めると、遊歩道や池の周辺、隣接する子供たちの遊び場へ目を向けた。


まだ時間が早いこともあり、人は少ない。


「今日はいるかな」


「アガト?」


「はい」


紀人は茂みを見る。


「アガトー」


東が少し笑った。


「もう普通に呼ぶのね」


「名前分かりましたからね」


「そうね」


少し待つ。


がさっ。


「あ」


茂みから顔が出た。


「アガト」


「アガト!」


「おはよう」


アガトは紀人を見ると、以前よりも迷わず茂みから出てきた。


紀人の近くまで来てから、東を見る。


「……」


東も動かない。


「おはよう、アガト」


前回なら、もう少し距離を取っていた。


今日はその場にいる。


逃げない。


東が小さく笑った。


「前よりは警戒されなくなったみたい」


「覚えたんじゃないですか?」


「そうだといいけど」


「嬉しそうですね」


「観察結果を言っただけよ」


「はいはい」


「何、その返事」


紀人が笑った。


◇


しばらく、紀人とアガトは遊歩道を走った。


紀人が少し速度を上げれば、アガトも追う。


今度はアガトが先へ出て、紀人が追いかける。


「待てって!」


東はベンチから二人を見ていた。


もう、この不思議な光景にも少し慣れてきた。


言葉はほとんど通じていない。


それでも紀人が止まればアガトも止まり、紀人が走れば追いかける。アガトが方向を変えれば、紀人も笑いながら追っていく。


「……本当に、どうやって通じてるのかしら」


東が小さく呟いた。


その時、アガトの耳が動いた。


紀人も遊歩道の向こうを見る。


「人来るぞ」


アガトはすぐに茂みへ姿を隠した。


紀人も何事もなかったように一人で走り、東は普通にベンチへ座ったまま。


散歩中の人が近づいてくる。


「おはようございます」


東が挨拶すると、相手も挨拶を返してそのまま歩いていった。


姿が見えなくなる。


紀人が周囲を確認した。


「もういいぞ」


がさっ。


アガトが戻ってくる。


東はその様子を見ながら頷いた。


「人を警戒するところは変わってないわね」


「俺には慣れましたけどね」


「だからこそ、余計に気をつけないと」


「何がです?」


「あなたに慣れたからって、人間全体に慣れたと思わないこと」


「ああ……そうですね」


「この子自身も、人に見つからないようにしてるみたいだし。今はそれでいいと思うわ」


紀人も頷いた。


◇


走り終わった紀人がベンチへ戻ってきた。


「腹減った」


バッグから自分用に持ってきたお菓子を取り出す。


袋を開ける音に、アガトの耳が動いた。


鼻をすんすんと動かし、紀人の手元を見る。


「……欲しい?」


紀人が一つ取り出す。


「食べる?」


差し出そうとした瞬間。


「紀人くん、それは駄目」


「え? 何でです?」


「その子が何を食べられるのか、まだ分からないでしょう?」


「でも、この前も普通に――」


「食べたから大丈夫、とは限らないの」


東が言う。


「人間用のお菓子には、塩分や糖分、調味料なんかも入ってるでしょう? 人間には何ともなくても、動物によっては身体に良くないものだってあるのよ」


紀人は手に持ったお菓子とアガトを交互に見る。


アガトは、明らかにお菓子へ興味を示している。


「興味はありそうですけど」


「興味があることと、食べて大丈夫なことは別よ。それは紀人くんが食べなさい」


「はい」


紀人は素直に自分の口へ入れた。


アガトがじっと見る。


「……そんな顔すんなよ。俺が悪いみたいじゃん」


東が少し笑った。


◇


「でも、じゃあアガトには何もあげられないですね」


「一応、持ってきたわ」


「え?」


東がバッグを開け、小さな袋を取り出した。


紀人は袋を見てから、東を見る。


「……何です、それ」


「できるだけ余計なものが入っていないもの。無添加のものを選んできたの」


「アガト用?」


「もし食べ物に興味を示した時のためよ」


紀人は無言で東を見る。


「何?」


「いや……最初から、めちゃくちゃあげる気だったんじゃないですか」


「違うわよ」


「わざわざ選んできてるじゃないですか」


「何でも食べさせるより安全でしょう?」


「それはそうですけど」


「それに、無添加だからって、この子に絶対問題がないとは限らないわ」


「そうなんですか?」


「当たり前でしょう。何を食べられるのか分かってないんだから、最初はほんの少しだけ。何か変わった様子があったら、すぐやめる」


紀人は少し感心した。


「やっぱり、飼ってた人は違いますね」


「モルモットとこの子は別よ」


「でも経験はある」


「まあ……それはね」


紀人が笑う。


「じゃあ、安全管理お願いします」


「そういうこと」


「安全管理」


「何?」


「いえ」


東は少しだけ紀人を睨んだ。


◇


東は小さく分けた食べ物を、手のひらへ乗せた。


アガトが見る。


鼻をすんすんと動かすが、すぐには近づかない。


東も動かなかった。


「無理に来なくていいわ」


意味は通じていないだろう。


それでも、東は待つ。


アガトは紀人を見てから、東を見る。


そして食べ物へ視線を戻した。


一歩。


止まる。


もう一歩。


東の表情が、少しだけ変わる。


紀人は黙ってそれを見ていた。


アガトは東の手へ鼻を近づけ、匂いを確認する。


そして、ゆっくりと食べ物を取った。


「……!」


一瞬。


東の顔が完全に緩んだ。


アガトは少し離れると、両手で持って小さく食べ始める。


もぐもぐと口を動かし、鼻も小さく動いている。


東はじっと見ていた。


「東さん」


「何?」


「顔」


「何よ」


「めちゃくちゃ嬉しそうですよ」


「そんなことないわよ」


「いや、今すごかったですよ。完全に飼い主の顔でした」


「紀人くん?」


「はい」


「黙って」


「はい」


東はまたアガトを見る。


少し間を置いて、小さく呟いた。


「……でも、ちゃんと食べてるわね」


紀人にも聞こえていた。


ただ、今度は何も言わなかった。


◇


食べ終わったアガトが鼻を動かし、東を見る。


そして、また近づいてきた。


前回より、ずっと近い。


「もう触れますよ」


紀人が小声で言う。


東の手がゆっくりと上がる。


アガトは逃げない。


あと少し。


そのところで、東の手が止まった。


しばらくして、ゆっくり下ろす。


「触らないんですか?」


「……まだ駄目」


「何で?」


東はアガトを見たまま答える。


「この子がかわいいと思うことと、この子が何なのかをちゃんと確認することは別なの」


紀人は黙って聞く。


「私は警察官よ。それにCASHとしても、怪人を警戒しなきゃいけない」


「はい」


「今まで見てきた限りでは、危険な行動はしてない」


「むしろ助けてますね」


「そうね」


東もそこは否定しなかった。


「でも、私が先に『この子は絶対大丈夫』って決めてしまったら、ちゃんと見られなくなるかもしれないでしょう?」


紀人は少し考えてから頷いた。


「だから、触らない?」


「今はね」


「……真面目ですね」


「仕事だから」


「でも、かわいいとは思ってる」


「それは……」


東が少し言葉に詰まる。


その時、アガトが首を傾げた。


東の表情がまた少し緩む。


「……思ってるわよ」


「やっぱり」


「悪い?」


「全然」


紀人は笑った。


◇


「じゃ、もう一周行くか」


紀人が立ち上がる。


「アガト」


「アガト!」


「行くぞ」


紀人が走り出し、アガトもその後を追う。


東はベンチに座ったまま二人を見送った。


「……気楽でいいわね」


少しだけ羨ましそうに呟く。


遠くから紀人の声。


「東さんも走ります?」


「そういう意味じゃないわよ!」


「じゃあ何です?」


「いいから走ってなさい!」


「はーい!」


アガトも紀人を追っていく。


東は小さくため息をついた。


それでも、笑っていた。


◇


しばらくして二人が戻ってきた。


そろそろ、公園を利用する人も増え始める時間だ。


「今日はここまでですね」


「そうね」


東も立ち上がる。


その時、アガトが何かを持っていることに紀人が気づいた。


「ん?」


どんぐり。


今日は二つ。


一つを紀人へ差し出す。


「アガト!」


「ありがとな」


紀人が受け取る。


そして、もう一つ。


アガトは東を見る。


東も自分を指差した。


「……私?」


「アガト!」


差し出されたどんぐり。


東はゆっくり手を出す。


ころん。


手のひらに小さなどんぐりが乗った。


東はそれを見てから、アガトへ目を向ける。


「ありがとう、アガト」


「アガト!」


東が笑った。


紀人も、その顔を見る。


「気に入られましたね」


「……そうかしら」


「絶対そうですよ」


「そうだと……」


東は言いかけて止まった。


「……観察はしやすくなるわね」


「今、言い直しました?」


「言い直してないわよ」


「そうですか」


「そうよ」


紀人は笑った。


◇


遠くから人の声が聞こえた。


アガトの耳が動く。


「人来るぞ」


紀人が言うと、アガトはすぐ茂みへ視線を向けた。


「またな、アガト」


「アガト!」


東も声をかける。


「またね」


アガトが東を見る。


少しだけ間を置いて。


「アガト!」


そのまま茂みへ入り、姿を消した。


◇


二人は公園を出る。


東は手の中のどんぐりを見ると、バッグを開けてそっと中へ入れた。


紀人がその様子を見ている。


「……何?」


「いや。大事にしまうんだなって」


「その辺に捨てるわけにいかないでしょう?」


「そうですね」


「何?」


「何でもないです」


「また笑ってるでしょう?」


「笑ってませんって」


少し歩く。


紀人が横にいる東を見る。


「東さん」


「何?」


「もう普通に可愛がればいいんじゃないですか?」


「駄目よ。まだ要観察対象なんだから」


即答だった。


「でも、どんぐり大事にしまいましたよね」


「それとこれとは別」


「触りたそうだったし」


「それも別」


「食べ物までわざわざ選んできたし」


「安全管理」


「はいはい」


「だから、その返事やめなさい」


紀人が笑う。


そして、少しだけ考えた。


「……警察って仕事も大変なんですね」


東が紀人を見る。


「え?」


「だって、普通だったら、かわいいと思ったら可愛がればいいじゃないですか」


「……」


「でも東さんは警察だから、それもできない」


東は少し黙った。


バッグの中には、さっきもらった小さなどんぐりが入っている。


一度だけ、公園を振り返った。


アガトの姿はもう見えない。


「……本当にね」


東は少しだけ笑った。


二人はそのまま、公園をあとにした。

本作品を含む、凛監修×生成AI合作作品は、同じ世界観の中でつながるシリーズ作品です。

それぞれ単独でもお楽しみいただけますが、同じ出来事が別作品では異なる視点から描かれたり、一方で起きた出来事が、もう一方の物語へつながったりすることがあります。

一つの作品だけでも楽しめる。

けれど、複数の作品を読むことで、初めて見えてくるものもある。

ぜひ、それぞれの物語をあわせてお楽しみください。

【人間×生成AIによる合作作品】

企画・原案・設定・ストーリー構成:時根脱才

文章制作・構成補助:ChatGPT(OpenAI)

本作品の世界観、キャラクター、各エピソードの原案・展開は作者が制作し、それをもとにAIと相談・推敲を重ねながら、小説として文章化しています。

本作品は「小説家になろう」「カクヨム」の両サイトに掲載しています。

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