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ビーストギア Another  作者: 戮
アリア編3

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サクラ(仮)

第二話 サクラ(仮)


 再生された映像の中に、数日前の自分がいた。


「…………」


 紀人は何となく居心地が悪くなり、ベッドの上で座り直した。


 自分の戦いを見ること自体は、もう珍しくない。


 配信が終わればアーカイブを見返す。


 コメント欄を開いて、好き勝手なことを書いている連中に一人で突っ込む。


 いつものことだ。


 それでも。


 今回は、やっぱり違う。


 画面の中。


 キッドの正面には、蝶のような翼を持つ怪人が立っている。


 サクラだ。


「…………」


 一瞬、再生を止めようかと思った。


 だが。


「見るって決めたんだろ」


 自分に言い聞かせ、そのまま再生を続ける。


 映像の中で。


 二人が構えた。


     ◇


『何これ?』


『新しい怪人?』


『女っぽくない?』


『羽すげえ』


『蝶? 蜂?』


『キッドと一対一?』


 コメントが次々と流れていく。


「好き勝手言ってんな……」


 紀人が呟く。


 こうしてコメントへ突っ込んでいると、少しだけいつもの調子が戻ってくる。


 画面の中では、キッドとサクラが互いに間合いを測っていた。


『あれ?』


『なんか変じゃね?』


『何が?』


『こいつら構え似てない?』


「……お?」


 紀人も改めて画面を見る。


 言われてみれば、確かに似ている。


 同じ道場で。


 同じ師匠に習ってきた。


 当然といえば当然だった。


『絶対なんかあるだろ』


『キッドの知り合い説』


『怪人と知り合いってなんだよw』


『元同門じゃね?』


「…………」


 紀人の眉が動いた。


「お前ら、妙なところ鋭いな」


 適当に書いているだけなのか。


 本当に二人の動きを見て気づいたのか。


 分からない。


 でも。


 当たっている。


「ネット怖え……」


 思わず呟いた。


     ◇


 サクラが踏み込む。


 拳。


 キッドがかわす。


 すぐに反撃。


 サクラが受ける。


 蹴り。


 防御。


 距離を取る。


 また踏み込む。


『うまっ』


『この怪人普通に格闘技やってる?』


『キッドと戦い方似てるな』


『空手?』


「……正解」


 紀人が答える。


『怪人の方も空手経験者?』


「経験者どころか……」


 そこで言葉が止まった。


 画面の中のサクラを見る。


 知っている動きだった。


 何度も見てきた。


 道場で。


 試合で。


 組手で。


 昔からずっと。


「…………」


 紀人は少しだけ動画を戻した。


 もう一度、再生。


 サクラが攻撃をかわす。


 踏み込む。


 拳を出す。


 その一瞬。


 顔が映る。


「……笑ってんじゃん」


 紀人は初めて気づいた。


 戦っている最中は、そんなところまで見ていなかった。


 いや。


 見ていたのかもしれない。


 でも、覚えていなかった。


 サクラは笑っている。


 楽しそうに。


「お前……」


 紀人は画面を見つめた。


「こんな顔してたのか」


     ◇


『なんかこの怪人楽しそうじゃね?』


「…………」


 コメント欄にも、同じことに気づいた人間がいた。


『分かる』


『キッドも楽しそう』


「俺も?」


 紀人は今度は自分を見る。


 画面の中。


 攻撃をかわし。


 拳を返し。


 サクラと距離を取るキッド。


『笑ってね?』


『笑ってるな』


『何で怪人との戦闘で楽しそうなんだよw』


「いや……」


 否定しようとして。


 やめた。


 確かに。


 楽しんでいた。


 久しぶりだった。


 サクラと、あんなふうに本気で戦ったのは。


 高校に入ってから差が開いた。


 昔のような、どちらが勝つか分からない勝負は少なくなった。


 それでも、あの日は。


 怪人になったサクラと。


 昔みたいに。


 真正面から拳を交えた。


「…………」


 紀人は少しだけ目を伏せた。


 サクラは、自分に止めてもらうために来た。


 それはもう知っている。


 でも。


 それだけではなかった。


「……楽しかったんだな」


 サクラも。


 自分も。


 あの勝負を。


 それだけは。


 嘘じゃなかった。


     ◇


 コメントは流れ続ける。


『こいつ名前ないの?』


『怪人の?』


『呼びづらい』


『蝶女』


『蜂女じゃね?』


『蟻っぽい部分もない?』


『全部入ってるだろ』


「好きに分析すんな」


『じゃあ名前つけようぜ』


「やめろ」


 紀人が即座に反応する。


 嫌な予感しかしない。


『キッドの知り合いっぽいし』


『サクラとかどうよ』


「…………は?」


 紀人が固まった。


『なんでサクラw』


『なんとなく』


『見た目和風っぽいから?』


『じゃあサクラ(仮)』


『サクラ(仮)で』


『サクラ(仮)』


『サクラ(仮)強くね?』


「ちょっと待て」


 紀人は思わず画面へ顔を近づけた。


「何でサクラなんだよ!」


 偶然。


 ただの偶然だ。


 コメントを書いた人間が、本名を知っているはずがない。


 分かっている。


 分かっているが。


「怖えよ!」


 思わず声が大きくなる。


「しかも仮って何だよ! 本名だよ!」


 誰も聞いていないのに。


 いつものように画面へ突っ込んでいた。


 気づけば。


 さっきまで張り詰めていたものが、ほんの少しだけ緩んでいた。


     ◇


『しかし何で戦ってんだ?』


『怪人だからだろ』


『いやキッド側がちょっと変』


『最初から知り合いみたいな空気あるよな』


『呼び出された?』


『怪人から?』


『果たし状とかw』


「…………」


 紀人が止まった。


『ありそう』


『一騎打ちしろ的な?』


『果たし状で呼び出されたキッド』


『昭和かよ』


「……なんで当ててんだよ」


 今度は、本気で少し怖かった。


「お前ら何なんだよ……」


 もちろん。


 大量のコメントの中の一つにすぎない。


 適当に書いた予想が、偶然当たっただけだ。


 それでも。


「果たし状まで当てる?」


 紀人は呆れながら画面を見る。


 そして。


 自分が少し笑っていることに気づいた。


     ◇


 動画は進んでいく。


 サクラとキッドの攻防。


 流れ続けるコメント。


 茶化すもの。


 真面目に分析するもの。


 意味の分からないもの。


 いつもの配信だった。


 でも。


 紀人にとっては。


 もう、いつもの怪人戦ではない。


『サクラ(仮)がんばれ』


「だから仮じゃねえって」


『キッド負けんな』


「負けねえよ」


『どっち応援すればいいんだこれ』


「俺だろ」


 反射的に返して。


 少し考える。


「……いや」


 画面の中のサクラを見る。


「まあ、好きな方でいいけど」


 二人が、またぶつかる。


 拳。


 蹴り。


 受ける。


 かわす。


 そして、また距離を取る。


 楽しそうに。


 本当に。


 昔の組手みたいに。


「…………」


 紀人は、さっきより少しだけ楽に画面を見られるようになっていた。


 見たくなかったはずなのに。


 少なくとも。


 ここまでは。


 見てよかった。


 そう思えた。


 その時だった。


 画面の端で。


 白い何かが動いた。


「……あ」


 紀人には分かった。


 次に何が起きるのか。


 一体。


 また一体。


 白い蟻の怪人たちが、二人の戦場へ入り込んでくる。


『え?』


『なんか来た』


『白蟻?』


『またこいつらかよ!』


『空気読めwww』


『今いいとこだっただろ!』


『一騎打ち邪魔すんな!』


「…………」


 紀人も。


 思わず同じことを言った。


「ほんとだよ」


 画面の中。


 キッドとサクラが、ほとんど同時に白蟻の方を見る。


 そして。


 さっきまで戦っていた二人が。


 同時に構えを変えた。


「……ここからか」


 紀人の表情から。


 さっきまで浮かんでいた僅かな笑みが消えた。


 それでも。


 今度は。


 画面から目を逸らさなかった。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

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