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ビーストギア Another  作者: 戮
アリア編2

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第二話 なんで避けなかった

第二話 なんで避けなかった


「……わざと?」


 自分の声が、ひどく遠く聞こえた。


 キッドはサクラのもとへ駆け寄る。


「おい!」


 膝をつく。


「サクラ! おい、聞こえるか!」


 返事はない。


 胸の奥が嫌な音を立てる。


 さっきまで。


 あれだけ速く動いていた。


 あれだけ楽しそうに笑っていた。


 なのに今は。


 地面に倒れたまま、動かない。


「おい……」


 肩へ触れようとして、手が止まる。


 自分の拳を見る。


 まだ感触が残っている。


 カンガルーの力を乗せた一撃。


 止めようとした。


 確かに止めようとした。


 でも。


 間に合わなかった。


「……くそ」


 キッドは歯を食いしばる。


「何でだよ……」


 その時。


 サクラの身体が、わずかに動いた。


「……っ」


「サクラ!」


 キッドが顔を寄せる。


「おい! 分かるか!」


「……うるさい」


 かすかな声だった。


「……そんな大声、出さなくても……聞こえてる」


「お前……!」


 安堵より先に、怒りが込み上げた。


「何やってんだよ!」


 サクラは答えない。


「何で避けなかった!」


「…………」


「今の、避けられなかったんじゃないだろ!」


 声が震える。


「お前、わざと受けに来たよな!」


 サクラが、ゆっくり目を開けた。


「……気づいたんだ」


「遅かったけどな!」


 思わず怒鳴る。


「気づいた時には、もう止められなかった!」


 返事はない。


「ふざけんなよ……」


 拳を握りかけて。


 やめた。


 今は、その手さえ怖かった。


「真剣勝負だからって……だからって、わざと食らう奴があるか!」


「……私には、あるのよ」


「は?」


「理由」


 サクラは苦しそうに息を吐いた。


「……ちゃんと、ある」


     ◇


「喋るな」


 キッドはすぐに言った。


「今は喋らなくていい。誰か呼ぶ。謎のヒーローでも、あの警察の奴らでも――」


「紀人」


「何だよ!」


「聞いて」


「後で聞く!」


「後じゃ……遅いかもしれないから」


 キッドの動きが止まった。


「……何言ってんだよ」


 サクラは目を閉じる。


「私ね」


 ゆっくりと、途切れ途切れに続けた。


「気づいたら……この身体だった」


「…………」


「何されたのかも、分からない」


「サクラ」


「最後に覚えてるのは……道場の帰り」


 かすかに笑う。


「ブドウクレープ食べて……それから先、何も覚えてない」


 キッドの表情が変わる。


「何だよ、それ……」


「私が聞きたい」


 サクラの声は弱い。


 それでも、言葉を止めなかった。


「目が覚めたら……怪人だった」


「…………」


「家にも帰れない」


「そんなの――」


「帰れると思う?」


 サクラが目を開く。


「この姿で」


 キッドは答えられなかった。


「ちょっと触っただけで、木が壊れた」


「…………」


「石も、簡単に割れた」


 サクラの視線が自分の手へ落ちる。


「人に触ったら……どうなると思う?」


「やめろ」


「私がもし」


「やめろって」


「このまま、もっと怪人になったら」


「サクラ!」


「頭までおかしくなったら」


 キッドが言葉を失う。


「家族も分からなくなって」


「…………」


「誰かを襲うようになったら」


 サクラが、ほんの少しだけ笑った。


「それが、一番怖かった」


     ◇


 キッドは何も言えなかった。


 目の前にいるサクラと。


 今まで戦ってきた怪人たち。


 頭の中で、勝手につながりそうになる。


 それを振り払う。


「だから……果たし状?」


「うん」


「俺を呼んで」


「うん」


「本気で戦わせて」


「そう」


 嫌な答えしか返ってこない。


「それで……最後にわざと食らったのか?」


 サクラは少し黙った。


「もし……」


 息を整える。


「このまま戻れないなら」


「…………」


「自分じゃなくなる前に」


 サクラの目が、まっすぐキッドを見る。


「止めてほしかった」


 キッドの喉が詰まる。


「……俺に?」


「うん」


「何で」


「最後に戦うなら……あんたがよかったから」


「…………」


 キッドは目を逸らした。


 怒鳴りたい。


 でも。


 何を怒鳴ればいい。


 勝手に決めるな。


 ふざけるな。


 そんなこと頼むな。


 全部言いたい。


 それなのに。


 サクラの声が先に続いた。


「私を女だからって……馬鹿にしなかったでしょ」


「……は?」


「昔から」


 サクラは少し笑う。


「むしろ、全然手加減しないし」


「空手だろ」


「そういうとこ」


 その返しに。


 サクラの口元が、ほんの少しだけ上がった。


「腹立つのよね」


「だったら何で俺なんだよ」


「だからよ」


「分かんねえよ!」


「私も、よく分かんない」


 サクラは目を閉じた。


「でも……あんたがよかった」


     ◇


「……だったら」


 キッドの声が低くなる。


「だったら先に言えよ」


 サクラが目を開く。


「何?」


「最初から言えよ!」


 今度こそ怒鳴った。


「怪人になった! 元に戻れないかもしれない! 怖い! 助けてくれって!」


「…………」


「何で勝負なんだよ!」


 サクラは黙っている。


「何で俺に殴らせんだよ!」


「言ったら」


「何だよ!」


「本気でやらなかったでしょ」


 キッドの口が止まった。


「…………」


「私が最後に、あんたとちゃんと戦いたいって言っても」


 サクラは静かに続ける。


「その理由まで知ってたら……絶対、本気で来なかった」


「当たり前だろ!」


「だから言わなかった」


「勝手すぎんだろ!」


「うん」


「認めんな!」


「ごめん」


 その一言が。


 余計に腹が立った。


「謝るなよ……」


 キッドは俯く。


「謝るくらいなら……こんなことすんなよ」


「…………」


「俺に選ばせろよ」


 サクラが少しだけ目を見開いた。


「お前が勝手に決めて」


「…………」


「俺にやらせて」


 声が掠れる。


「それで終わりって……ふざけんなよ」


 サクラはしばらく何も言わなかった。


 やがて。


「……そうだね」


 弱い声で答える。


「それは……ごめん」


「だから謝んなって……」


     ◇


 キッドは立ち上がろうとした。


「とにかく、助けを呼ぶ」


「キッド」


「黙ってろ」


「ねえ」


「今度は聞かない」


「でも」


「聞かない!」


 強く言い切る。


「お前が勝手に決めたんなら」


 サクラを見る。


「今度は俺が勝手に決める」


「…………」


「まだ終わらせない」


 キッドは周囲を見渡した。


「誰か!」


 謎のヒーロー。


 警察の連中。


 誰でもいい。


「誰か来い!」


 返事はない。


「くそ……!」


 キッドはもう一度サクラを見る。


「大丈夫だから」


「……何が?」


「分かんねえけど!」


「それ、大丈夫って言わないでしょ」


「うるせえ!」


 こんな時なのに。


 サクラが少しだけ笑った。


「……やっぱ、あんた面白いね」


「笑ってる場合か!」


「うん」


 そして。


 その笑みが、ゆっくり消える。


「でも……」


「何だよ」


「ちゃんと……戦えてよかった」


 キッドの顔から血の気が引いた。


「おい」


 サクラの目が閉じる。


「おい、サクラ」


 返事がない。


「サクラ!」


 肩へ手を伸ばしかけて。


 また止まる。


 怖い。


 自分の力で。


 もう一度傷つけるのが。


「……おい」


 それでも。


 今度は、そっと触れた。


「起きろよ」


 返事はない。


「まだ話終わってねえだろ」


 キッドはサクラのそばに膝をついたまま。


 何度も。


 何度も。


 名前を呼び続けた。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

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